元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな届出書は「消費税簡易課税制度選択届出書」です。

お金には相対的な価値と絶対的な価値があります。相対的な価値観はあなたの判断を鈍らせるので、どんなときも絶対的な価値観を用い、コストを最小限に抑えると良いとされています。

スーパーでの買い物を例に考えてみます。いま、あなたはAスーパーにいます。Aスーパーではだいこんが200円で売っています。しかし、野菜売り場で隣の奥さんに会い、Bスーパーではだいこんが100円で売っていることを聞きます。今夜の夕食はおでんです。あなたは、だいこんがどうしても欲しい。Bスーパーまでは徒歩12分。AとBどちらのスーパーでだいこんを買いますか。

200円のだいこんが100円になるというのは、ものすごく得な気がします。割引率50%は、あなたを高揚させるでしょう。でも、これは相対的価値です。200円の商品の横に100円の商品が並んでいるのならば迷わず100円を取ればよいのですが、Bスーパーは徒歩12分のところにあります。100円のために徒歩12分移動するのが正しいでしょうか。

まず、あなたの移動コストがどれくらいなのかを決めておく必要があります。例えば、あなたの時給が1000円なら、12分で稼ぐお金は200円です。あなたの12分には少なくとも200円の価値があります。12分を移動に費やして、だいこんが100円安くなるだけなら、働いたほうが利得は高い。

実際の現場では、だいこんだけでなく、肉や魚、日用品など複数の商品を総合勘案して、異なる店舗に移動するかどうかを決めることになりますが、今回の場合は、相対的な割引率ではなく、割引金額と移動コストを比較して移動しない選択が良いでしょう。

では、Bスーパーのだいこんが無料だったらどうでしょう。200円を払う必要がないし、何本か余計にもらえるかもしれません。しばらくは、だいこん料理が続いて家族が不満を口にしますが、家計は助かります。あなたは数百円から1000円くらいの利得を得ることができます。

では、車を買う場合はどうでしょう。あなたは今、200万円の車を買おうとしています。しかし、車屋Aで隣の奥さんに会い、ここから徒歩12分の車屋Bでは同じ車が199万円で売っていると聞きました。あなたはどちらで車を買いますか。

この場合、Bに行く人は、スーパーと比べて極端に少なくなります。車の値引きは1万円です。12分の移動で1万円得しますが、割引率が低いためにお得感がないので、インセンティブが小さいのです。

しかし、あなたがもし、12分かけてBスーパーに移動する人間なら、車屋Bにも移動しなければいけません。同じ12分をかけて得られる利得を考えると、車の場合のほうが大きいので、そうすることが合理的な選択となります。

逆に、スーパーの場合のみBに移動する選択をする方は、予想通りに不合理です。相対的な価値にしか目を向けていません。お金のことを考えるときは、常に、コストに対しどれくらいのリターンがあるかを意識しなければいけないのです。それは、家計でもビジネスでもギャンブルでも一緒です。

合理的な選択と行動ができないと、お金は必要以上に減り、収入は大きく増えません。賢くお金を増やす人は、感覚に支配されず、刹那で計算して最適な選択をします。

スーパーの特売はとってもたのしくわくわくするイベントなので、お金以上に素晴らしい体験ができるのなら遠出しても良いかもしれません。ただ、もし値引きだけを求めて、たくさん歩いたり、自家用車を走らせたりするのなら、それが真に合理的か、コストに見合っているか、あなたにとって得なのか、今一度考えてみてください。

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら