元 国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな減価償却資産は「ヘリコプター(5年)」です。

「減価償却」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。あるいは、「耐用年数」という言葉ではどうでしょう。どちらも会計と税務に関わる重要な用語です。

減価償却とは?

仕事のために買ったビル、マシーン、棚、車など、資産というのは時間がたったり、たくさん使用したりすることによってその価値が減っていきますね。このような価値が減っていく資産が「減価償却資産」です。

仕事で使うために減価償却資産を買っても、支払った金額すべてをすぐに経費にすることはできません。その資産ごとに定められた使用年数があって、何年かかけて数分の1ずつ経費にします。これが「減価償却」です。お金を払っているのにすぐに経費にはできないのです。経費にできないならどうなるかというと、資産として計上されます。現金とか預貯金と同じカテゴリーです。経費が多い方が払う税金は減るので、資産になるより経費になる方が、納税者は喜びます。

また、前述した使用期間に当たるものとして耐用年数が法律で定められています。鉄筋コンクリートの事務所ビル50年、車4年、トニートニー・チョッパー8年といった感じです。よって、新しく資産を買って減価償却をしようと思ったら、耐用年数を調べることになります。

特例として、使用可能期間が1年未満の資産は、減価償却資産にはならず、買った年にすぐ経費にできます。また、30万円未満の資産も、条件を満たせば、買った年にすぐ経費にできます。

耐用年数経過前の資産を売ったらどうなる?

減価償却資産を、何年かかけて経費にしていくわけですが、例えば耐用年数10年の資産を5年くらいで捨てたらどうなるでしょう。まだ5年分しか経費にしていないのに! となりますよね。そのときは、経費にしてない分の金額、残存価額と言いますが、その金額を一括で経費にすることができます。「除却」と言うんですが、経理以外の会社員はほとんど使わないので、流行語大賞のようにすぐに忘れたらいいと思います。では、耐用年数10年の資産を5年で売ったときはどうでしょう。残存価額より高く売れたら売却益として収入が、低く売れたら売却損として経費が発生します。

逆に、耐用年数を超えてもずっと使い続けられる資産もあります。モノを大切にするなんて、素敵。可能な限り大事にしたいですよね。減価償却によって、帳簿上の資産の価値はどんどん減っていき、耐用年数が経過すると理論上は価値が0円になります。でも、0円という価値のない資産は、帳簿に載せることができません。そのため、「備忘価額」という制度があります。文字のまんま、忘れないように備えるための金額です。0円では、帳簿に載せられないので、減価償却が終わった後は、売っても捨てても誰かにあげても動きがわかりません。モノの動きが不透明になってしまいます。そこで、減価償却が終わっても1円の価値があることにして、使い続ける限りは帳簿に残します。この1円が備忘価額なのです。

経営者や個人事業者でなければ、減価償却や耐用年数を利用することはほとんどありません。ただ、日常生活でもこの制度が応用できることがあって、それが住宅の賃貸のときです。マンションを借り、何年か住んで退去するとき、原状回復費用が敷金から差し引かれてしまいます。カーペットや壁紙が汚れていれば、張り替えの費用を請求されるかもしれません。そこで、耐用年数の考え方を理解しておけば、カーペットや壁の価値がどのくらい下がっているかを把握し、あなたが負担すべき金額を算出することができます。退去するときに、新品への買い替え費用をあなたが出す必要はないのですから。情報の非対称性を利用した管理会社の詐取に対し断固たる決意で戦って、正しい金額を負担しましょう。

減価償却と耐用年数についてこれだけ知っておけば、課長や係長とのパワーゲームに負けないだけの知識が得られたはずです。酒宴があれば減価償却の話を振ってみてはいかがでしょうか。

執筆者プロフィール : さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら