元 国税局職員さんきゅう倉田です。お盆休みにすることは「売上帳の入力」です。
前回から、芸人が被害に遭った詐欺の話を紹介しています。お金持ちに寄ってくる詐欺師もいれば、貧乏な人に寄ってくる詐欺師もいます。詐欺師もいろいろでし。貧しいその日暮らしの芸人に寄ってくる詐欺師ですから、詐欺師自身も当然貧乏です。美しい装いや整った身なりが必要なので、貧乏な詐欺師はお金持ちを騙すことはできません。
Bさんの場合
Bさんも芸人です。ある日、芸人の先輩から声を掛けられました。
「今度上場する株があるんだけど、30万円分買わない?上場したらすぐ10倍になるからさ。買わない?」
上場してすぐに10倍になるという話は、にわかには信じられません。10倍になることはないし、10倍になることが事前に分かることもないし、後輩にそんな話をくれるわけがない。賢ければ、すぐに見抜かれて気まずくなるだけなので、そんな話をすることもないですが、詐欺をする方もされる方も、かわいらしい一面があるので、成立してしまいます。
お金を渡してから半年後、Bさんは先輩に、上場した株について確認しました。
Bさん「株券とかないんですか?」
先輩「今はデータだからさ、ないんだよ」
Bさん「契約書とかないんだよ」
先輩「書類が見つかるとやばいからさ、ないんだよ」
Bさん「上場する会社の社長に会わせてくださいよ」
先輩「上場前は忙しいから無理だよ」
追求するも、のらりくらりと逃げられ、1年が経ってしまいます。お金はどうなっているのか、上場はどうなったのか、会社名はなんなのか、何も分かりません。Bさんが、よしもとに相談すると提案すると、先輩は、それはまずい、やっかいなことになるぞ、と必死に止めます。
詐欺だな、こいつやってるな、と既に確信していたBさんは、媚びず、退かず、省みず、サウザーのように硬い意志で、訴えることにしました。
すると、先輩は、分かった、俺が返すよ、月1万ずつ返すから、それで勘弁してくれ、俺も大変だからさ、と言うのです。Bさんはそれで納得してしまいました。先輩は30万円を私的に流用していたのでしょう。それでも、Bさんなら誤魔化せると考えていたのかもしれません。
しかし、毎月1万円ずつ返済することにしました。Bさんも1万円ずつでも返ってくるのなら、と考えて納得したようです。ただ、300万円になるはずのお金が、30万円しか返ってこない。
さらに、2年半の長きに渡って、少しずつ返済される。大損です。途中で、先輩が逃げるリスクもあります。Bさんはそんなことも考えず、誰にも相談せず、6万円返ってきたところで、先輩に逃げられてしまいました。
Cさんの場合
Cさんは、うどん屋さんでアルバイトをする芸人です。一緒にアルバイトをしていた元芸人の紹介で、おじさんと知り合います。おじさんは何の仕事をしているか分かりませんが、よくご飯に連れて行ってくれるようになりました。
ご飯の後には、小岩のキャバレーにも連れて行ってくれます。小岩のキャバレーは、芸人です、と名乗ると動画を撮るような安物のホステスの集まりでしたが、奢ってもらえるのでそこそこに愉しんでいました。
そんなある日、おじさんから、外国の車を輸入するから金を出さないか、と持ちかけられます。しかし、時給1,000円で働いている芸人ですから、貯金はありません。すると、おじさんは、「○○ムで借りたらいいよ、どうせ半年で3倍になるんだから」、と50万円の借金をさせます。
貧乏なのに、楽して儲かると思っているCさんは、借金をし、お金を渡して、半年待ちました。しかし、お金は返ってこない。ぼくにその話をしてきたので、警察に行って、家に行って、携帯には毎日電話をかけて、やれることは全部やったほうがいいよ、と助言しましたが、いいよ、なくなってもいい金だし、キャバクラ奢ってもらったし、得した、と騙されたことを認めないのです。そのまま2年の月日が経ちました。
何度も言っていますが、楽して儲かることはないし、あったとしてもそれを他人に教えることはありません。絶対儲かるのなら、自分で借金して自分一人でやります。「儲かるよ」というのは「君が儲かるよ」ではなく「俺が儲かるよ」という意味なのです。
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