元国税局職員さんきゅう倉田です。好きなアルバイトは『確定申告期間の税務署』です。

「同一労働同一賃金」という、同じ仕事をしていれば、正社員も派遣社員も契約社員もアルバイトも同じ給与を支払うというルールが浸透してきました。正社員と非正規社員の「不合理な格差」は、パートタイム労働法8条と労働契約法20条で禁止されています。

つい先日、最高裁が、正社員と非正規社員の格差について「同じ労働なのに、通勤手当、給食手当(食事代の補助)、無事故手当、作業手当(特殊な作業に従事)、皆勤手当を非正規社員だけもらえないのは不合理である」「転勤がある正社員にだけ、住宅手当を支給するのは不合理とは言えない」みたいな判断をしました。「不合理な格差」に対する、初めての非正規に有利な判断です。

このように、圧倒的に不利な雇われる側の非正規社員の待遇が改善されつつあるのです。厚生労働省のガイドライン案には、基本給、ボーナス、役職手当、食堂、休憩室、更衣室、病気休暇、慶弔休暇、教育訓練などの格差が解消されるように書かれています。

時給1,000円のアルバイト

ぼくも、大学生の頃と、国税局を辞めて芸人になってから5年くらいはアルバイトをしていました。様々な場所で働きましたが、そのうち9割は飲食店でした。もちろん働き始める前には、電話で連絡をして、面接を受けます。今までに7つのアルバイトをしましたが、面接は10回受けました。

飲食店の面接を受けるとき、半分くらいの面接官、おそらく店長や正社員ですが、彼らに共通して感じるのが「偉そう」ということです。13時の約束で、時間通りに臨場しても、10分ほど待たせて謝りもしない。高いお金を払って求人サイトに載せるくらい人手に困っているから、面接に来てくれたらうれしいはずなのに、おくびにも出さない。そして、初対面の人間に対する圧倒的なタメ口。

企業の採用面接で、そんな異常なことがあるでしょうか。否。アルバイトだけです。アルバイトは、正社員になめられているのです。ぼくは思います。

時給1,000円のアルバイトを敬ってほしい
店長や社長より もっとも偉いのはアルバイトだ
たった1,000円で働いてくれるなんて
お客様より神様だ
店長が怒り 社長が理不尽な扱いをしても
文句も言わずにたったの1,000円で働いてくれる

店長や社長に問おう
1,000円で働けますか?
1,000円で同じ仕事ができますか?
1,000円しかもらえない1時間で
あれだけの苦悩に耐えるアルバイトは
社内の誰よりも大切な人です
もっともっと褒めてあげてください

髪を黒くされ
ピアスを注意され
仕事の覚えが悪いと怒鳴られ
休みの日でも「今日出られる?」と電話をしても
1,000円で働いてくれる

「うちを選んでくれてありがとう」と感謝しよう
あなたなら時給1万でも断る仕事を
1,000円でやってくれるアルバイトは
あなたの家族より大切な人です
もっともっと優しくしてください

仕事ができなくても仕方ない
だって1,000円しか払っていないんだよ

仕事には、お金をもらう以外にやりがいもあると思います。それが職種や職場を決める上で、重要視されるのは一般的です。では、一介のアルバイトと店長ないし社長でどちらにやりがいがあるかと聞いたら、ほとんどの方が「店長ないし社長」と答えます。

やりがいもあって、給与も高い。それが、店長や社長の仕事なのです。だったら「アルバイトを今すぐ辞めて、正社員になればいいじゃん」と言う方がいるかもしれません。アルバイトをする学生に、そんなことを言うのは酷です。就職するまでの、一時的な金銭の補給のために労働しているにすぎないのです。

その学生アルバイトは、とてつもなく優秀で、将来的には、電通とかキーエンスとかフジテレビとかに内定をもらうかもしれません。あっという間にあなたを超えていくかもしれません。そんな優秀な人材を、1,000円で雇用できるのです。その機会に感謝しましょう。アルバイトの無知や純粋さにつけ込んで、悪質な労働環境を提供しないようにしましょう。超過勤務手当を支給しないような作業はなくしましょう。学生は、いつか気づきます。

さんきゅう倉田

新刊『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』

(総合法令出版/1,404円/税込)
さんきゅう倉田の初の著書が発売されました。ぼくの国税局時代の知識と経験、芸人になってからの自己研鑽をこの1冊に詰めました。会社員やパート・アルバイトの方のための最低限の税の情報を、たのしく得られます。購入は コチラ

さんきゅう倉田

新刊『笑う数学』

(KADOKAWA/1,404円/税込/1月27日発売予定)
数々の数学イベントで大活躍の、数学エキスパート集団「日本お笑い数学協会」(タカタ先生、横山明日希、さんきゅう倉田、平井基之、秋田崇宏、小林裕人、鰺坂もっちょ)のメンバーが書き下ろした、とっておきの数学の話100を収録。
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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら