元 国税局職員 さんきゅう倉田です。無人島に1つ持って行くとしたら、「電卓」です。
全ての労働者が103万円という金額を聞いたことがあり、多くの労働者が103万円という金額を意識して働いたことがあり、多くの経営者が103万円以内で働くために労働量を調整するアルバイトに苦悩してきたと思います。
パートやアルバイトは、どうして年収103万円以内で働くのでしょうか? どうして労働時間を減らすのでしょうか? どうしておなかが減るのでしょうか? 何となく、「扶養から外れるから」と考えて行動していませんか。
今回は「103万円以内で働く」ということを正しく理解して、みなさんと最も縁のある所得税の仕組みを知っていただければと思います。
「103万円」を超えるとどうなる?
数多の労働者が103万円以内で働いているということは、それによる効用が大きいことが分かります。以下に、簡単にまとめました。
■103万円以内で働く場合
・所得税がかからない
・扶養に入れる
・健康保険がかからない
また、100万円以内であれば、
・住民税もかからない
では、103万円を超えた場合にはどうなるでしょう。
■103万円を超えて働く場合
・103万円を超えた分×5%の所得税を納める
・扶養から外れて扶養してくれていた人の税金が増える
更に住民税がかかるのは100万円を超えた分ではなく、
・98万円を超えた分×10%の住民税が増える
この中で、年収103万円のラインを意識して働いてる方にとって、最も影響が大きいのが、「扶養してくれていた人の税金が増える」です。扶養してくれている人とは、主にあなたの親(もしくは配偶者など)になると思いますので、税金が増える理由は、扶養控除38万円がなくなることによります。
扶養者の税金はどのくらい増える?
どのくらい増えるかは、扶養してくれる人の年収で変わりますので、一概にはいえませんが、以下に概算でまとめました(配偶者特別控除を考慮せずに計算しております)。
年収の多い親ほど、あなたが扶養から外れることで納める税金が増えます。しかし、あなたの年収が103万円を超えても、手取りが減ることはありません。あなたが税金として支払うのは、"超えた部分"の15%程度です。手取りが減るのは、あくまであなたの親なのです。あゝ、何てかわいそうなご両親。103万円ボーイは自分のことだけを考えるなら、129万円まで働くと良いでしょう。
なぜかというと、129万円までは働けば働くほどあなたの手取りは増えますが、130万円を超えると厚生年金や健康保険料を納めることになり、手取りが減ってしまいます。あなたに覚悟があり、「よし! 今年は130万円を超えるぞ」と考えているなら、年収160万円を目指して働くと良いでしょう。
130万円とは月給10万8,000円、160万円とは月給13万3,000円です。上記のような、年収103万円や130万円、160万円は、12月分振り込みの給料までが対象です。よって、年収を増やしたり減らしたりするのは、基本的には11月分の労働までで行うことになります。
ちなみに、年収103万円という、金額の根拠は、
・所得税の基礎控除 38万円
・所得税の給与所得控除65万円
の合計です。どちらも会社員、パート・アルバイトなら、全員が受けられます。130万円の根拠は「そういう決まりだから」です。
また、昨年から一定の条件を満たした方は、130万円の壁が106万円の壁になります。条件は
・勤務時間が週20時間以上
・勤務期間が1年以上の見込み
・従業員501人以上の企業に勤務
の学生以外で、今まで親や配偶者にくっついて社会保険に入っていた方も、手取りが減る可能性があります。
103万円ボーイには、自分が仕事に使える時間や親の年収を把握した上で3つの壁を意識し、無駄のない労働をおすすめします。
執筆者プロフィール : さんきゅう倉田
芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら。