元国税局職員 さんきゅう倉田です。さいきん払っていない税金は「入湯税」です。
確定申告をしなければいけない場合や確定申告をした方が得な場合は、国税庁のホームページやどこかの誰かがまとめてくれた税金関係のサイトやぼくの書籍で容易に知ることができます。しかし、そもそもなぜ確定申告が必要なのかについてまとめられているサイトはあまりなく、また、それを知ろうとする方も少ないように思います。
なぜ確定申告が必要なのか
日本は「申告納税制度」を採用しています。戦後に、GHQのマッカーサーさんが連れてきた、租税法学者(経済学者)カール・シャウプさんが整えた税制度です。「シャウプ勧告」という名で教科書に出てきます。基本的に、日本の税制度は外国から入ってきたもので、今でも、新たな制度を考えるときは、アメリカの制度を参考にしています。税制度が最も進んでいるのはアメリカなのです。
申告納税制度は、あなた自身が行う申告で税額が確定します。これが正しく行われるためには、あなたに納税意欲があって、ちゃんと記帳を行い、客観的なデータを使って所得を計算することが前提となっています。この「あなた自身が行う申告」が「確定申告」です。所得税だけでなく、贈与税、相続税、法人税、消費税などがあります。
記帳…帳簿をつけること
帳簿…家計簿のデラックス版
贈与…生きている人からお金や物をもらうこと
相続…亡くなった人からお金や物をもらうこと
では、申告納税制度の前はどんな制度だったかというと、1947年にアメリカの影響で採用されるまでは、行政処分によって税金が決まる賦課課税制度でした。国や地方公共団体が納めるべき金額を計算し納税者に通知する方式で、これは、加算税、固定資産税、不動産取得税、自動車税、住民税で、今でも採用されています。
例えば、自動車税は、申告をしたことはないけれど、納付書が送られてきていませんでしょうか。住民税も、申告をしていないのに、働き始めて2年目の給与から天引きされたり、区役所から納付書が届いたりしているはずです。これが「賦課課税制度」です。
ここで「いや、所得税も申告していないけど、給与から天引きされてるじゃん。賦課課税制度なの?」と思った方がいるかもしれません。所得税は、申告納税制度なので確定申告が必要です。でも、働く人の9割は給与所得者、つまり、会社員、パート・アルバイトです。その9割の人たちに確定申告という悪魔的に難しい作業をさせるのは酷である、ということで、給与所得者が確定申告をしなくてもいいように、勤務先の会社が「年末調整」をしてくれています。これが、確定申告の代わりになっているので、みなさんは申告していないけれど申告したことになっています。
だから、基本的には、所得のある人は子供でも老人でも外国人でも、確定申告が必要です。
基本的には確定申告が必要、でも、煩わしい作業から解放するために、源泉徴収や年末調整があって、確定申告をしなくてもいいようにしてくれている。かといって、年末調整をしてくれている会社が把握できないような、給与以外の所得があったり、医療費があったりすれば、所得税の確定申告が必要になりますし、贈与をうければ贈与税の確定申告が必要になりますし、相続をうければ相続税の確定申告が必要になるのです。
もし、あなたの上司が「なぜ確定申告をして税金を納める必要があるか分かるか?」と問うてきて、それは「国民の義務だからだよ」と小学生で習得する知識で返してきたら、今後は敬意を評しなくてもいいように思います。
国民の「義務」にする必要性があるほど大切というだけであって、税金とは「日本で生活するための会費」です。みんなが会費を払わなければ、道路も学校も医療も警察も消防もなくなってしまいます。国を維持するためには、みんなで少しずつ、元気玉みたいにお金を払う必要があるのです。
上司に、「なぜ確定申告をして税金を納める必要があるか分かるか?」と問われたら「日本で生活するための会費です」と言ってみてはいかがでしょうか。
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