元国税局職員 さんきゅう倉田です。確定申告期間のことは「お祭り」と呼んでいます。
前回は確定申告や収入に深く関係のある「所得」について解説しましたので、今回は「控除」について。
広辞苑で「控除」を引くと「金額・数量を差し引くこと」とあります。確定申告では、基本的には「所得から差し引くことができるお金のこと」です。所得が少なければ少ないほど、あなたの納税額は少なくなります。控除がたくさんあれば、所得から差し引いて納税額を少なくすることができます。だから、控除は可能な限りすべて使った方がいいわけです。
しかし、この記事を読んでいるあなたは、どんな控除があるのか把握していますか。「会社がやってくれているから大丈夫」と思っていませんか。会社はあなたが申請したものしか把握していません。控除は、あなた自身が知り、あなたが申請しなければいけません。
控除には条件があって、その条件を知ることで、受けられるか受けられないかを判断できるようになります。いまは覚えられなくても、いつか控除を受けられそうな機会があれば、この記事を思い出していただければと思います。
どのような控除があるかを把握しよう
確定申告書を見ると、控除の名前が載っています。この順番で解説します。
(6)社会保険料控除
年金や健康保険を支払ったときに受けられます。あなたが支払ったのなら配偶者や子、親の分も合計して控除できることがあります。
(7)小規模企業共済等掛金控除
確定拠出年金、iDeCo、DC、401K(誰が積立金を拠出するか等によって呼び方が違いますが、仕組みはほぼ一緒です)と呼ばれる定年後のためのお金の準備制度に毎月お金を支払っている場合は、ここで控除できます。
(8)生命保険料控除
生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払っていればここで控除します。
(9)地震保険料控除
地震保険料を支払っていればここで控除します。
(10)寡婦、寡夫控除
配偶者と離婚しているか、死別している場合に受けられます。所得とか扶養家族の条件があるので、該当しそうな場合はお調べください。
(11)勤労学生控除・障害者控除
勤労学生控除は、あなたのお子さんが、扶養が外れるくらいアルバイトをしているけれど、そんなに給与は多くない場合受けられます。障害者控除は、あなたやあなたの家族が障害者のとき受けられます。
(12)~(13)配偶者(特別)控除
妻や夫がいるときに受けられます。所得によって、控除金額が変わります。
(14)扶養控除
16歳以上の扶養親族がいると受けられます。小さいお子さんは、扶養控除の対象になりません。恐らく、子ども手当がもらえるからだと考えられます。
(15)基礎控除
すべての国民が受けられる38万円の控除です。
(17)雑損控除
災害、盗難、横領によって損害を受けたときに受けられます。「多くの人が使えそうだけど周知されていない控除部門」第一位です。
(18)医療費控除
病院での治療や薬局で買った薬、コンビで買った薬も領収証かレシートがあれば、医療費控除の対象です。年間で10万円以上たまっていれば、確定申告で控除しましょう。
10万円は難しい、という方。数年前から、市販の薬代1万2,000円以上でも控除できるようになりました。薬は対象のものと対象でないものがあり、対象の商品は下のマークが目印です。
医療費控除とセルフメディケーション税制はどちらかしか受けられないので、医療費10万円を超えた分と薬代1万2,000円を超えた分のどちらか大きい方を利用した方が得です。
(19)寄附金控除
ふるさと納税がある場合は、寄附金控除を適用できます。国や地方自治体、政党への寄附がある場合にも控除できます。
(24)住宅借入金等特別控除
確定申告書の右側、(24)にあります。いままでの控除は所得から差し引く「所得控除」、これは「税額控除」になります。
所得税額を計算してから差し引くのが「税額控除」です。条件が細かいですが、住宅ローンの残高の1%を控除できる、すさまじい控除です。家を買ったり、建てたり、リフォームをしたりしてローンを組んだのなら、ほとんどの方が受けられます。必ず条件を調べて、控除を受けましょう。
主な控除は以上となります。知っているかいないかで、納税金額や還付金額が変わります。あなたが知識を持っているだけで、労働せずとも、円を得ることができるのです。少しでも覚えて、社会を有利にサバイバルしてください。
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