元国税局職員 さんきゅう倉田です。毎年、お歳暮に贈るものは「国債」です。
国税局は、毎年、脱税の件数や業種、手口を公表しています。その中で、国税局が特に目をつけている脱税方法を解説します。
第3位 確定申告をしない、いわゆる「無申告」
日本は、自分で申告して自分で納税するシステムになっています。会社員やパート・アルバイト以外は、基本的に確定申告が必要です。
〈昨年度の事案〉
瓦礫の処理を行っていた人が、その収入を申告せず、会社員であると仮装してウソの住民税の申告を行っていた。脱税したお金は、家の購入で費消。
第2位 海外の会社を使い、取引を仮装
海外法人に、架空の経費を支払い、所得を減らす。同時に海外の口座にお金を送金。
〈昨年度の事案〉
査察の入った会社の社長は、影武者で、実際に経営権を持っているのは、Aという男でした。Aは海外に会社を設立。査察の入った会社はそこに経費を支払っていた。
実際には取引はないのに、日本から海外へ多額の送金をしていた事案です。外国の国税局と情報交換をすることで逮捕に至りました。日本は、たくさんの国と租税条約を結んでいて、取引や銀行預金の照会が盛んになっています。
第1位 密輸入と輸出を繰り返し、消費税の還付金を受け取っていた
2月から3月にかけて、税務署に行くと確定申告ができます。あれは、所得税の確定申告です。実は、消費税にも確定申告があって、個人事業者や会社は、毎年、申告をしています。会社員の方は必要ありません。
例えば、ゲームを販売する会社があったとして、ゲームをメーカーから仕入れてお店でお客さんに販売します。お客さんに売るときは、もちろん消費税込みで売ります。
メーカーからすると、ゲームを販売する会社がお客さんです。メーカーは消費税込みでゲームを販売する会社に売ります。これはゲームを販売する会社からすると、仕入れです。つまり、仕入れにも消費税がかかっているわけです。仕入れ値の方が売値より安くなりますから、価格の8%である消費税も仕入れの方が少なくなります。仕入れのときと売るときの消費税の差額を国に納める手続きが消費税の確定申告です。
仕入れの8%と売るときの8%の差額を国に納めますが、売るときに消費税がかからなかったらどうでしょう。仕入れは8%で売るときは0%。差額がマイナスになります。こんなときは、国に消費税を納めるのではなく、消費税の還付を受けることができます。では、売るときに消費税がかからないことなどあるのでしょうか。あるんです。それが、輸出したときなんですね。
輸出と聞いて、大げさに考える必要はありません。海外の人に売るだけです。いま、ちまたにあふれている免税店も日本に来ている海外の人に売っているので輸出のように扱われて、消費税0%で買い物ができるのです。 この消費税の還付制度を悪用した業者がいました。
〈昨年度の事案〉
まず、腕時計を仕入れる。国内の会社から買ったので消費税がかかる。それを海外の会社に販売する。売るときは消費税がかからない。仕入れのときだけ消費税がかかったので、差額が国から還付される。
この業者の行為は以上でした。さて、どこかに不正があります。業者の行った不正はどちらでしょう。
A 腕時計ではなく、置き時計だった
B 国内の会社ではなく、海外の会社から密輸していた
正解は「B 国内の会社ではなく、海外の会社から密輸していた」でした。
この業者は、密輸した腕時計を日本の会社から仕入れたことにして、海外の会社に販売して消費税の還付を受けていました。密輸しているので、仕入れの消費税はかかっていないのに、8%かかったと偽装していたわけです。
しかも、密輸するときに業者が仕入れた会社と、業者が売った会社は同じ会社でした。全員グルだったのです。実際は、取引をしていないのに、取引をしたような書類を作成し、腕時計も密輸入→輸出→密輸入→輸出→……とぐるぐるさせていました。すべては、消費税の還付を受けるため。社長は逮捕されたそうです。
これらの脱税方法は、近年では厳しくチェックされています。ブームに乗っかって脱税をすることのないように注意しましょう。
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