元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな番組は『ワイドナショー』です。

芸人の中では、仮想通貨が空前の大ブームです。売れていない若手から、テレビで活躍する兄さん方まで、余剰資金で仮想通貨ギャンブルを楽しんでいます。

「投資は希望を生むが、ギャンブルは絶望を生む」とぼくは考えていますが、のめり込まずにほんのちょっぴり投入するくらいならやってもいいと思います。しかし、仮想通貨について一般の方々はよく分からないはず。今回は、イチから、いや、ゼロから解説します。

仮想通貨とは何か

まず「何なの?」って感じだと思います。

仮想通貨は、インターネット上のお金です。円とかドルは、硬貨と紙幣がありますが、仮想通貨はそういった"モノ"がありません。インターネット上のデータしかありません。

そして、円は日本銀行、ドルはFRBといった団体が発行していますが、仮想通貨はその仮想通貨に参加しているみんなのネットワークで発行しています。自分で書いていても、わけが分かりません。そういうわけの分からないところで発行できるのが、仮想通貨なのです。

よく分からなければ「新しいお金」と考えてください。この新しいお金は、ビットコインという一番有名な物以外にも数百種類あって、その数はどんどん増えています。

仮想通貨の良いところ

仮想通貨の良いところはいくつかありますが、まず「手数料が安い」ことが挙げられます。クレジットカードだと、実は、お客さんの支払った料金の3~5%をお店がクレジットカード会社に支払っていますが、仮想通貨ならば1%程度と言われています。

また「送金が早い」ことも仮想通貨の魅力です。例えば、メールを送るとすぐ届くように、仮想通貨の送金も、メールのようにすぐ届きます。国内の誰かに送っても便利ですし、海外の誰かに送っても、円をドルとかユーロに替えることなく、送金できるので便利です。外国のお金に替えたり、銀行経由で海外にお金を送ったりするのは、手間も手数料もかかりますが、仮想通貨はそれを解決してくれます。

仮想通貨がなぜ流行っているか

しかし、仮想通貨が日本で流行っているのは、こういった利便性が理由ではありません。実は、値上がりを狙った利益目的の購入で騒がれています。

ふだん、ニュースを見ていると1ドル110円とか、円安とか円高とか耳にします。これは、円の価値が上がったり下がったりしているのですが、仮想通貨も上がったり下がったりします。それも、円やドルといった普通の通貨よりも、何十倍、何百倍の速度で価格が変わっています。こういう価格の変動性を「ボラティリティ(volatility)」と言います。ぼくの好きな言葉です。

仮想通貨はボラティリティが高い、つまり、短い時間ですごく高くなる可能性があり「自分も楽して儲けたい」と思った人たちが、こぞって手を出しました。

今後、ビットコインはどうなるか

ビットコインは、昨年、7万円だったものが、200万円以上になりました。その後、100万円くらいに下がって、ニュースになりました。今後はどうなるのでしょう。

靴磨きの少年の話があります。ジョン・F・ケネディ元大統領のお父さん、パパケネディは映画の事業をやったり、投資をやったりしている方でした。パパケネディは、街に出て靴磨きの少年に「景気はどう?」と聞きました。少年はいつも「変わらないよ」と答えていました。ある日、いつものようにパパケネディが靴磨きの少年に「景気はどう?」と聞くと「これからは株だよ。○○と▲▲の株を買った方が良いよ」と言ったそうです。

それを聞いたパパケネディは、持っていた株をすべて売りました。その後、1929年、ニューヨークの株式市場が大暴落し、多くの投資家が損失を出したのですが、パパケネディは損失を出さずに済んだそうです。

つまり、どういうことかと言うと、情報は川のように流れています。投資で有利なのは、川上で情報を掴むことです。靴磨きの少年は、少年なので知識も経験もありません。靴磨きをしているので、投資の専門家でもありません。つまり、川下で情報を手に入れる人の比喩なのです。そんな人が「株を買え」ということは、この後、株を買う人はもういないわけです。株を買う人がいないということは、この後、株価は下がります。それに気づいたパパケネディは、株を売ったのです。

これを、ビットコインにあてはめると、いま、若手芸人が劇場で「ビットコイン買え、ビットコイン買え」と言っています。若手芸人なんて、靴磨きの少年の更に川下、「しものしも」です。だから、若手芸人が「買え」と言っているなら、もう「終わり」なのです。

みなさんが仮想通貨を始めるときは、自分が川のどこにいるのか考えると良いのです。

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら