元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな通貨は『ペリカ』です。
2017年は、仮想通貨バブルでした。会社員も、公務員も、社長も、芸人も、俳優も、地下アイドルも、買い物かごを持った主婦もこぞって仮想通貨を購入しました。
しかし、そこに乗り遅れたみなさんは、いまだに、仮想通貨が何なのか分からないと思います。今回は、今更聞けない仮想通貨の基礎から、税法上の取り扱いまで解説します。
仮想通貨とは?
仮想通貨とは、インターネット上の通貨です。百円玉とか千円札みたいに実物は存在しません。円とかドルみたいに種類があって、一番有名なのが「ビットコイン」です。日本の法律だと、次のように定義されます。ここは、飛ばしても良いです。
物品を購入し、または役務の提供を受ける場合に使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値で、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
インターネット上の通貨なので、使う場合にはスマホとかパソコンが必要です。日本国内でも使える場所は増えていて、ビックカメラでも使えますね。
でも「1ドル○○円」みたいに、お金の価値は日々変わります。ビットコインの価値は、その何十倍、何百倍も価値が変わりやすい。こういうのを「ボラティリティ」って言うんですが、1日で価値が大きく変動するお金を使うのは勇気がいります。今日使わずに、1カ月持っていたら、倍になっているかもしれませんから。
価値が大きく動くということは、短期間に利益を出す人が現れます。2017年、国税庁は、仮想通貨の取り扱いを公表してくれました。
仮想通貨は、何所得になるか?
所得は、全部で10種類あります。
そのどれに該当するかで、所得税が変わりますので、運転時に踏切の前で一時停止するくらい重要です。国税庁は仮想通貨を「雑所得」に区分するとしています。
(国税庁 タックスアンサー No.1524 ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係[平成29年4月1日現在法令等])
雑所得というのは、他の9種類の所得のどれにも当てはまらないもの。赤字になっても、他の所得と相殺(損益通算)できません。
所得の計算方法
みなさんが、持っている仮想通貨を日本円に換金する、いわゆる「売却」ですが、売却金額と仮想通貨を買ったときの金額の差が所得となります。10万円で買ったビットコインが1億円になったら、9,990万円の雑所得があったことになります。たくさん納税しなければいけません。
では、仮想通貨を売らずに、ビックカメラで買い物に使ったらどうなるでしょう。円に替えていないので、所得にならない。つまり、所得税がかからない、と思っていませんか。 商品を購入するときに、仮想通貨で支払うと、そのときの仮想通貨の価値と、仮想通貨を買ったときの価値の差額を基に、所得を計算します。簡単に言うと、ビットコインを売って円に替えてから買い物をしたのと同じことになります。
では、円に替えても、仮想通貨のまま買い物をしても、所得税はかかるなら、仮想通貨を別の仮想通貨に替えればいいんじゃないか、と考える方がいるかもしれません。「仮想通貨と仮想通貨の交換」ですね。しかし、世の中そんなに甘くないです。保有する仮想通貨Aを仮想通貨B購入のための支払いに使うことができますが、その場合は、Bの価格とAを買ったときの価格の差を基に、所得を計算することになります。
ここまでで「どんな場合でも、仮想通貨を動かせば、所得になる。その所得は、雑所得だ」ということが分かりました。しかし、所得区分には例外があります。事業所得者が、事業用資産としてビットコインを保有し、決済手段として使用している場合は事業所得となります。ちょっと難しいですが「仕事でビットコインを持っていて使ったのなら、事業所得」みたいなことを言っています。
これ以外にも、仮想通貨の取引が事業として行われていると認められる場合も、事業所得となります。これには、仮想通貨の取引だけで生活している、投資家などが該当する可能性があります。あとは、タレント業に付随する仮想通貨の購入、例えば、仮想通貨の番組内で自腹で購入したような場合も、事業所得に該当する可能性があります。
ビットコインで利益が出たら、確定申告が必要です。会社員の方は、仮想通貨による所得が年間20万円以下なら、確定申告が不要になることもありますので、個別にお調べください。
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