元 国税局職員、さんきゅう倉田です。お正月は「タックス・ヘイブン」で過ごしました。

新年になり、確定申告の準備を始める方もいるかと思います。会社員の方が、どんなときに確定申告が必要なのかは第27回にまとめてありますが、今回は、その中でもちょっぴり複雑な、医療費控除について解説します。

  • 中2でもわかる医療費控除

医療費控除を簡単に言うと、

医療費控除を簡単に言うと、「医療にかかったお金がたくさんあると、確定申告をすることで税金が還付になる」です。この場合の「医療」とは、病院とか歯医者さんに行って、みなさんが支払ったお金です。この場合の「税金」は、所得税です。

会社員の方であれば、年末調整によって1年間に納める所得税が決まります。会社が計算してくれているので、みなさんは何もする必要がありません。しかし、医療費控除や、会社が把握していない所得の増減があれば、確定申告をする必要があります。所得が減った場合は、確定申告をしないとみなさんが損をします。所得が増えた場合は、確定申告をしないと「脱税」ではありませんが「申告漏れ」になります。だから、年末調整の後に、所得の増減があれば、確定申告をしましょう。

医療費控除を受ける場合も、確定申告が必要です。医療費控除は、会社の年末調整では対応できません。あなた自身が、1年分の医療費をまとめて明細書を作成し、確定申告書も作成し、郵送することになります。あるいは、医療費をまとめて、税務署に並んで明細書の作成方法を習い、確定申告書の作成も習って、その場で提出することになります。

医療費控除の対象となる医療費について、国税庁は次のように言っています。

(1) 納税者が、自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費であること。
(2) その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること

つまり、医療費控除の対象となる医療費は「みなさんの分 + 一緒に生活している家族の分」で、1月1日~12月31日を一区切りとしています。

さらに、医療費控除にはほんのちょっぴり厳しい条件がありまして、上記のトータルが10万円を超えていないと、控除が受けられないのです。国税庁は次のように言っています。

医療費控除の金額=実際に支払った医療費-(A)-(b)

(A)保険金などで補填される金額
(B)10万円

※(A)の例……生命保険契約で支給される入院費給付金、健康保険で支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金

つまり、あなた自身が負担した分のみが医療費控除になります。一度、病院の窓口で支払っても、その後、国や地方自治体からお金をもらったら、その分は医療費控除から除かれるのです。例えば、出産は、出産後に「出産育児一時金」として42万円支給されます。出産にかかった費用からこの42万円を引いた残りが、医療費控除の対象になります。その残りや他の医療費を合計して、10万円を超えていれば、晴れて、医療費控除を受けることができます。

でも、そもそも3割負担の医療費が、いくら家族の分を合計したところで10万円を超えるでしょうか。容易なことではないように思います。ジャムおじさんより優しい税法は、みなさんに医療費控除を受けるチャンスを与えてくれています。実は、所得の低い人は、10万円を超えていなくとも、医療費控除を受けられるのです。

10万円を超えた部分が対象の医療費控除の金額は、「その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額」で良いとされています。読むと難しいですが、つまり、「所得の低い人は10万円に満たなくても良い」のです。

この場合も所得の低い人は、会社員やパート・アルバイトで年収311万円以下の方です。年収311万円を12で割ると、およそ月給26万円になるので、多くの方が該当するのではないでしょうか。該当すれば、医療費が10万円以上なくても、所得の5%以上なら、医療費控除を受けることができます。

みなさんの所得がいくらなのかは、会社から支給された源泉徴収票でご確認ください。源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」を参照していただければと思います。

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら