元国税職員さんきゅう倉田です。好きな小説の書き出しは「吾輩は社長である。税務調査はまだない」です。
2024年になりました。新しいNISAが始まることもあり、投資や貯蓄をメディアが扱う様子が以前より見られるようになりました。ぼくが子どもの頃のメディアといえば、主にテレビでした。テレビを見ていて、お金についての情報を得た記憶はありません。
我々の親世代が「お金の話をするなんてよくない」と考えていたように、テレビもそう考え、視聴者に求められていないと思っていたのかもしれません。
さて、8年ほど前からボランティアで子ども向けの税金教室やお金の教育をしています。依頼されれば有料で行うこともありますが、ほとんどが交通費だけで地域の小学校に出向くプロボノの活動です。
そこでは、小学生にも身近な消費税や、少し成長してから出会う所得税について解説しますが、それと同時にもっと大切なことを伝えています。
それが働くということ。
ただ働くのはなく、何のために働くのかそれを考えてもらう時間を設けています。
よりよく生きるために働く
「みんなは何のために働くの?」
このように聞くと、子どもたちは「お金のために働く」「必要なものを買うために働く」などと答えてくれます。間違っていません。では、どうしてお金が必要なのでしょうか。
お金がなくとも生きていけます。山か何かに住んで自給自足の生活をすればいい。ひとりで住居や食料、生活用品を確保できないのなら、コミュニティを作ればいい。
しかし、とてつもない苦労を伴います。いわゆる「豊かな生活」「健康で文化的な最低限度の生活」は営めない可能性も高い。だから、よりよい暮らしをするために、よりよく生きるためにお金が必要なのです。
つまり、働くのはよりよく生きるため。お金にために働いているわけではありません。
だから、あなたの人生を悪い方向に傾けるような働き方はしないでほしいと子どもたちに伝えます。自分が楽しいと思える仕事を見つけてほしい、そうでない仕事に就いたとしても仕事の中で楽しみを見つけてほしい。
可能なら楽しくない仕事は辞めて、世の中に無数にある仕事の中からあなたが楽しいと思える仕事を見つけてほしい。
そのほうが、一緒に働く人や客にとってもよい。
いま、あなたの周りには担任の先生がいます。担任の先生が「学校が楽しくないな」と思いながら、無理をして仕事をしていたらどうですか。
授業を受ける児童も嫌な気持ちになりませんか。楽しく仕事をしてくれている先生の方が、熱心な教育をして児童をより良い方向に導いてくれる気がしませんか。
楽しく給食を作ってくれる給食室の職員さんの方が、おいしく丁寧に料理を作り、調理の場を清潔に保ってくれる気がしませんか。
生活においても仕事においても勉強においても、楽しくなくてよいことなど一つもありません。それは多くの大人が感じています。それでも、楽しくない仕事をしている人が大勢いる。
もし仕事が楽しいのなら、残業も苦ではないし、土日に仕事関係の本を読んだり勉強会に参加したりすることも躊躇わない。そうやって仕事に時間を使っていると、能力が伸びる。すると、その結果が給与や賞与、昇給に反映される。すると、さらに仕事が楽しくなる。このような循環を作ることが大切です。
将来働かずに生活できたらいいなと思っている人がいたら、それは働くことの喜びを知らないからだと思います。でも、きっといつか気づく。危険や緊張の伴った真の達成感や充実感は仕事の中にしかありません。
楽しいと思える仕事と皆さんが出会えることを願っています。そして、将来の選択を増やしてくれるのが、勉強です。勉強もまた多くの人にとっての楽しみのひとつです。
小学生と一緒に大人もこの話を聞いてくれることがあります。何歳になっても、自分にとって楽しい仕事が見つかるはず。そのことを大人にも知ってほしいと思っています。
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