元国税職員さんきゅう倉田です。好きな資産は「前払資産」です。

都内で数店舗を展開するメンズ脱毛サロンが営業を停止したため、代金を前払いした客が訴訟を起こしているという報道がありました。

少なくとも1,000人を超える人が施術や返金を受けられず、現在このサロンの運営会社は破産手続きをしています。

営業停止となったのは2023年4月ですが、4月中に契約をした人もいました。相談件数は761件、契約総額は1億4,758万円、平均契約額は21万円で、全身や顔を10回脱毛するコースの契約が最も多くなっています。※

※アディーレ法律事務所が2023年7月19日『PRTIMES』に掲載した内容を参照

ぼくは別の脱毛サロンに通っていますが、ヒゲの脱毛は10回では終わりませんでした。14回通ったところで契約期間が終了し、再契約しています。この再契約のときに迷いました。

ヒゲがなくならなかったのに、また契約するのか。自分は騙されているのではないか。他のサロンに変えるべきではないか。

4年の契約期間が満了する頃に、別のサロンを見に行くことにしました。そのサロンは2022年に開業したばかりですが、すでに大阪や東京などで5店舗を展開しています。

サロン名を大手の屋号に酷似させ、低価格を打ち出し、ホームページはアメコミのようなイラストを使っていました。ぼくはホームページのたのしそうな雰囲気と1回1,000円の体験に惹かれてしまいます。

そのサロンが入っている貸ビルは渋谷のビル街にありました。エレベーターで上がると、目の前にカウンターがあって、女性が迎えてくれます。

店内は白を基調としていて清潔感と高級感がありました。予約名を伝えると、奥の個室で15分ほどの動画を見るように指示されます。施術内容やサロンを紹介するその動画を見ていると、そのサロンの良さを強制的に刷り込まれているように感じ、警戒心が高まります。

動画が終わると、いかにも入社したばかりといった感じの女性が施術内容について説明してくれました。

ぼくが、現在通っているサロンと、その効果を比較したいと伝えると、一回では効果が現れないと言われます。それならばサロンを飛び出して一目散で帰って受験勉強をしたいところでしたが、大人しくベッドに横になることにしました。

施術時間は短く、機械の出力も弱く、いかにも"体験"といった感じでした。施術が終わると、別の部屋に移動して勧誘が始まります。今入ればこんなに割引になりますよ、ヒゲだけでなく全身のコースがいいですよ、今日契約せずに帰るともう割引は受けられませんよ、と煽ってきます。

「今日契約しないと価格が変わりますよ」と客を煽って勧誘する人間を信用してはいけない、ぼくの最も好きな言葉です。契約せずに帰り、今までと同じサロンに再び申し込みました。

それから数ケ月、今回報道されたサロン名を見て驚きました。ぼくが1,000円を支払って体験脱毛したサロンだったからです。

危ないところでした。取引先に対してひとつでもおかしいと感じたら、その後の仕事がうまくいかないことがよくあります。このサロンに対しても自分が覚えた不信感に従って行動したため、危険を回避できました。良かった。

このサロンの営業停止と集団訴訟への発展は大きく報道され、脱毛業界でも認識されています。複数のサロンが「今回被害に遭われた方のために割引プランを用意しました」と特段割り引いてもいないプランを提示した広告を打っていました。

慈善事業ではなく、金銭的な被害にあった方からまだお金を取ろうとする思考が理解できません。善意を装う姿勢に倫理観の欠如を感じます。新たにサロンと契約しても、業界全体が飽和状態ならば、そのサロンも営業停止になる可能性があります。

今回被害に遭った人たちにそのようなリスクを取らせることがよいことだとは思えません。

契約にあたって、前払いをする際はよく考えましょう。悩むならいやめてもいい。そもそもどうして客がリスクを取って前払いをしなければいけないのか。その点にも疑問を感じると良いと思います。

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