元国税職員さんきゅう倉田です。好きな法律は「国税徴収法」です。
大学では経済学部に進もうと思っていますが、法律にも興味があります。芸人になってからはよく裁判を傍聴しに行っていたし、判例や裁判例を読むのも好きです。だから、現在は法律系の授業をいくつか履修しています。
行政法の授業では、国や自治体が行う処分の種類やその処分がどのような法に則って実行されているか学ぶことができます。
東京都の職員が風営法に基づいた警察官の立ち入り調査に随行して、ホストクラブに対して「感染症対策の実施の有無」を調査したのは越権行為ではないか考えたり、土地の開発を制限しても「国が所有者に賠償金を支払わなくていい」特別の犠牲にあたる場合はどのような場合か調べたりしています。
働くうえで種々の法律を知っておくことは重要です。当たり前かもしれませんが、法律を意識して生活していますか。倫理的によくないことを感覚に頼って守っているだけではありませんか。
去年、給付金詐欺についてテレビでコメントをしたときに、20代前半の人が詐欺の加害者に多く、その中には17歳の子もいたと聞いて、悲しくなりました。
彼らは詐欺の首謀者に唆されて給付金を不正に申請しました。ちょっと怪しいなと思っていても「大丈夫、犯罪じゃないから」と言われて安心し申請した人もいたそうです。
一般的な取引で「犯罪じゃないから」なんて言う必要はありません。そのときに、感覚で非合法であると気付けたかもしれない。しかし、できなかった。
法律の知識が多少なりともあれば防げたかもしれないし、給付金詐欺が防げなくとも別の不幸を跳ね除けられるかもしれない。
また、法律そのものだけでなく、法治国家であることを認識することも大切だと思っています。
【法治国家】国家の権力が、法にもとづいて行使されることをたてまえとする国家。※出典:GAKKEN、「キッズネット」、2023年7月4日閲覧
チェーンを切られて自転車を撤去される友人
15年くらい前。友人のひとりが自宅から自転車で渋谷に向かいました。午前11時に渋谷に到着し、少し人通りの少ない道に邪魔にならないように自転車を停め、持ってきたチェーンで自転車のフレームとガードレールをひとつなぎにして、鍵を閉めます。
ほんの8時間くらいいいだろうという気持ちだったそうです。8時間後に戻ってくると、自転車がない。自転車があった場所の道路には撤去をした旨の張り紙がありました。友人は思いました。
撤去をするのはどこの自治体でもやっていることだし、自動車のレッカー移動に似ているからおそらく法的根拠があるだろう。しかし、チェーンを切るような個人の所有物の毀損は可能なのだろうか。聞いたことがないぞ。
友人はぼくを含む複数の人間が集まる場でこの話をしていました。それを聞いた参加者はみなこう言っていて驚きました。
「自転車を停めたお前が悪いんじゃねーか」
ぼくは黙っていました。誰も法的根拠とか気にしないんだなと思うと悲しくなりました。彼らは誰かの権利を侵害するかもしれないし、されるかもしれない。自転車を止めることとチェーンを切断することは別個に考えなければいけません。
Q:放置禁止区域に自転車を置いたため、撤去されたことは理解できますが、チェーンを切断するのは横暴です。弁償してください。
A:撤去の際、チェーンなどで柵等に施錠された自転車等は、チェーンを切断して撤去します。損害については責任を負いません。
※自転車法の改正の際に、撤去に必要不可欠な場合には、チェーンを切断することは撤去を行う権限の範囲内である旨の通達が国から出されています。ガードレール等にチェーンでつないでいるものを撤去せずに残すことは不公平になります。※出典:名古屋市コールセンター名古屋おしえてダイヤル、2023年7月4日閲覧
自転車法第6条第1項にはこうあります。
市町村長は、駅前広場等の良好な環境を確保し、その機能の低下を防止するため必要があると認める場合において条例で定めるところにより放置自転車等を撤去したときは(以下略)
このように自転車法には撤去の方法には記載がなく、各自治体が条例によって定めているようです。
例えば、さいたま市自転車等放置防止条例では
(放置に対する措置)
第10条2
市長は、前項の規定により自転車等を撤去するに当たり、ワイヤー錠等の切断その他の撤去のために必要な措置を要するときは、当該措置を講ずることができる。
としています。このような条例の根拠がなくワイヤーを切断していたら、法的根拠はないかもしれません。あるいは、条例がなくとも撤去に当然必要な行為として切断が認められるかもしれません。
行政を含む他人がいつも正しい行いをするとは限りません。誰だって誤る。自分の身を守るために、日々知識を身につけることが重要だと思います。
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