元国税職員さんきゅう倉田です。好きな指数は「消費者物価指数」です。
個人事業者として人様と付き合っていると、この人は大人だな、この人の行動は真似すべきだな、と思うことがあります。数年前に気づいて自分でも実践しているのは、相手の忙しさに気遣いを見せることです。
20代の頃は、どんなアルバイトをしているの? などと聞かれることがありました。売れていない芸人がアルバイトをするのは当然です。もしかしたら特殊なアルバイトをしているかもしれない。どんな職種なのか気になるのでしょう。
アルバイトをしているということは、本業が忙しくないということです。芸人でない人から見れば、ほとんどの若手芸人は忙しくない存在。ぼくも例外ではありません。アルバイトをしているかしていないかも外部からは分からない。それでも、多くの偉大な方達が電話口で「お忙しいところすみません」と言ってくださいます。
本当に忙しいかどうかは、関係ない。貴重な時間を拝借することへの配慮なのです。あなたが忙しい中、自分のために時間を作ってくれていることは理解しています。感謝を伝えたい。そのための「お忙しいところすみません」なのです。
以前ぼくが通っていた道場の師範も「忙しいところごめんね」といつも言ってくださっていました。
唯一、相手の忙しさを全く気にしないのはテレビ業界だと思います。タレントより何日も家に帰らないディレクターさんの方が絶対に忙しい。それだけ忙しい人は「お忙しいところすみません」などと言わない。むしろ、言わなくてよいと思います。
アルバイトをしていてどんなに暇そうに見えても、「暇ですよね?」と言われることはありません。そう思っていたとしても、流石にそれは失礼だとすべての大人が分かります。プロボノで伺う小学校の6年生でもそんなことは言いません。
しかし、「暇ですよね?」の類義語を大人からぶつけられることはあります。誤解のないように言っておくと、そのような言葉をぶつけられても、ぼくは怒らないし、不快にも思わない。むしろ、どんどんぼくに向かって放ってほしいと思っています。
そういう出来事の蓄積が自分の芸人としての能力の向上につながると考えているからです。
中学校に行って校長先生が言っていたこと
全国の学校へ、税金教室や講演で伺っています。お金や税金のことで、子供たちが将来困らないように、自分にできることが何か考えてのことです。
先日、埼玉県内の中学校で講演をしました。公平・中立・簡素という税の三原則の話や若者を食い物にする詐欺について解説をする45分間です。
ぼくの話の後、校長先生が全校生徒の前でおっしゃいました。
「さんきゅう倉田さんは、公務員を辞めて、芸人になられて、お金に困っておられます」
驚きました。まさかそんな風に思っていたなんて。たしかに、学校の門をくぐって校長先生と少し話をした際、時折、敬語を使っていない部分があって違和感が持ちました。
仕事がうまくいかずにお金に困っている人間に対し、敬意なんて必要ないのかもしれません。むしろ、普段時給1,200円程度のアルバイトをしているんだから、今回の講演料は大金だろうと思っているかもしれません。
※公立の学校での税金教室は交通費のみ、私立や講演の場合は有償で行っています
ぼくも大人なので、「お金に困っておられます」と言われても、おほほとかうふふとか言って流すことをまず考えました。しかし、否定しなければ、「やっぱり芸人はたのしくても全然お金にならないんだな」と子どもたちが思ってしまう。
全然お金にならないのは芸人の一側面ではあるけれど、今目の前にいるぼくが「お金に困っている」というのは事実に反する。
ぼくは否定することにしました。
「いえ、校長先生。お金には困ってないんですよ」
校長先生はジムキャリーの『マスク』だったら目が2m飛び出るくらい驚いた様子で、「意外と稼いでおられるんですね」と言っていました。
「お金に困っておられます」は、まさに、「お忙しいところすみません」の対義語だと思います。相手が暇であることに言及しても何も良いことはありません。
相手の忙しさを気遣うことで、良好な関係が築けるし、仕事のパフォーマンスも上がります。何かを依頼したら、むやみやたらに、「お忙しいところすみません」と言ってもいいと思います。
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