元国税職員さんきゅう倉田です。好きな事業者は「課税事業者」です。

前回までで個人事業者の消費税について理解したら、いよいよインボイスです。

今まで免税事業者だったあなたは、インボイスに登録して課税事業者になるか、インボイスに登録せずに今まで通り免税事業者のまま生きていくかを選ばなければいけません。

免税事業者のインボイス登録手続

インボイスに登録を決めたあなた。まず、適格請求書発行事業者の登録手続きをする必要があります。

適格請求書」と出てきたら、インボイスのことです。登録すると、"登録番号"がもらえます。

今まで取引先に送っていた請求書にその登録番号を記載すると、請求書は「適格請求書」になります(厳密には、消費税の区分なども記載する必要があるよ)。

登録は、管轄の税務署への書類提出か、スマホでの申請になります。

制度は令和5年10月1日から始まり、国税庁は令和5年3月31日までにインボイスの登録申請書を提出しましょうと案内しています。

おそらく、この年の2月3月に確定申告をするために税務署に行けば、インボイスの案内を見かけるでしょう。

なお、インボイスの登録をした個人事業者は、登録日から消費税の課税事業者になり、登録日から12月31日までの期間の消費税の申告が必要となります(消費税の確定申告するタイミングは、毎年行っている所得税の確定申告と同じで大丈夫です)。

参照 : 国税庁:適格請求書とは

インボイスは絶対登録しなければいけないのか?

登録するかしないかは、あなたが自分で選ぶことができます。でも、インボイスに登録しないと、取引先に送る請求書に、インボイスの登録番号を記入することができません。

そうすると、取引先は仕入税額控除ができません。また、知らない言葉が出てきました。

仕入税額控除(しいれぜいがくこうじょ)とは。

例えば、コンビニは客に物を売ったときに消費税を受け取ります。一方で、仕入れのときには、仕入業者に消費税を支払っています。このように、取引をしていると「受け取る消費税」と「支払う消費税」が発生します。

確定申告をして納める消費税は、この受け取る消費税と支払う消費税の差額です。そして「支払う消費税」を控除するのが仕入税額控除です。

仕入税額控除が多ければ、企業は納める消費税が少なくなりますが、インボイスに登録していない個人事業者と取引をした場合は、消費税が少なくならないルールとなっています。

つまり、企業はインボイスに登録している人と取引をした方が、納める消費税が少なくなる。制度が始まれば登録をしていない人は仕事が減ってしまうかもしれません。

参照 : 国税庁:仕入税額控除

インボイスの登録をする人は、必ず知っておこう簡易課税制度

インボイスに登録をすることを決めたあなた。これからは消費税の確定申告をすることになりますが、申告には一般課税と簡易課税があることを知っておかなければなりません。

簡易課税は、売上が5,000万円以下の人が選ぶことができ、選ぶと消費税の確定申告における計算が楽になります。

あなたの行っている事業の区分によって「みなし仕入率(しいれりつ)」が決まります。このみなし仕入れ率と売上によって納める消費税が変わりますが、難しいので割愛します。

要するに、インボイスに登録するときは、簡易課税に登録するか否かも検討してください。よく分からなければ税務署か税理士さんに相談すると良いと思います。税務署は無料、税理士さんは有料です。

ちなみに、ぼくが免税事業者なら簡易課税を選択します。理由は、経費がそんなにないからです。

※簡易課税にする場合は「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出してね。

2年後の10月から始めるインボイス。個人事業者は一度は資料に目を通して、登録するかしないかを判断しましょう。知らない人が損をする、それが日本の制度です。

参照 : 国税庁:適格請求書等保存方式(いわゆる「インボイス制度」)

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