元国税職員さんきゅう倉田です。好きな所得は「退職所得」です。
サントリーHDの社長がセミナーで「45歳定年制にして、個人は会社に頼らない仕組みが必要だ」と述べたそうです。
早期退職と言えば、最近流行の兆しを見せるFIREが思い浮かびます。経営者としてFIREという用語は間違いなくご存知でしょうし、その思想に共感して、様々な施策を考え、自社に反映させようと考えていたとしても不思議ではありません。
各社の報道の中に発言とFIREを結びつけたものは見当たらず、ぼくもセミナーを見たわけではないのでその文脈は分かりません。
ただ、今後みなさんの周りでも話題になるかもしれない。上司が「オレもそろそろFIREしよっかな」と急に言ってくるかもしれない。その前に、FIREについて知っておきましょう。
FIREは「Financial Independence, Retire Early」=経済的独立と早期リタイアのことで、アメリカの一部の層に支持を受けています。その方法はすでに体系的にまとめられていて、本も出版されています。
まずは生活費25年分を用意するアメリカのFIRE
アメリカでは、45歳ごろのFIREが推奨されているようです。そのためには生活費を25年分用意しなければならないことも紹介されています。
現実的にそんなことをできる人がいるのでしょうか。日本で年収が1,000万円以上の人はおよそ4.6%います。しかし、年収1,000万円の人が45歳で退職したときに、25年分の生活費を用意できているとは思えません。そうすると、30歳くらいから年収1,500万円以上で毎年しっかりと預金を増やしているような層でないとFIREは難しい。配偶者や子供がいれば、それでも足りません。
アメリカは日本より高額納税者の層が厚いけれど、45歳でFIREできるのはかなり少ないでしょう。また、年功序列で年収が上がっていく日本で、高い報酬を得られる時期を前に退職すること自体が非効率的です。
FIREした場合は
FIREは早期に退職して悠々自適な生活を想像させる、おもしろい考え方です。非現実的だからこそ、労働者に夢を与えます。もしかしたら、厳しい節制を実施して40代前半でFIREする人もいるかもしれない。
FIREでは、リタイア後に25年分の試算を年利4%で運用することを目指します。つまり、預金を取り崩して生活するのではなく、資産を増やして増えた分を生活費に充てることになります。
日本版FIREは50代になってから
今後、FIREに関する特集が雑誌やテレビで組まれると思います。そのとき、荒唐無稽な40代のFIREではなく、50代のFIREがすすめられます。実際、すでに出版されている書籍では、50代でのFIREが紹介されています。それでも、妥協です。現実的には、ほとんどFIREできる人はいないでしょうし、いたとしてもその人たちは雑誌やテレビを見ないくらい働いたり遊んだりしているのではないでしょうか。
昔から、退職後に田舎に移り住み、農業をやる人がいます、この場合は、家賃を今までより低く抑えて、退職金と年金での生活を予定したものです。このように田舎に移り住むのなら、FIREも可能かもしれません。
FIREしてどうするのでしょうか。やりたいことがなければ、FIREしても意味がありません。友人はみんな働いているから遊べない。毎日家族と朝から晩まで過ごし、趣味に生きるのでしょうか。
働いているからこそ得られる刺激や充実感があります。趣味では得られない達成感があります。それらは、リスクやコストと隣り合わせで、趣味や家族サービスからは得られません。FIREするより、生涯現役で働くことができる方が幸せだと思います。
新刊『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』
(総合法令出版/1,404円)
さんきゅう倉田の初の著書が発売されました。ぼくの国税局時代の知識と経験、芸人になってからの自己研鑽をこの1冊に詰めました。会社員やパート・アルバイトの方のための最低限の税の情報を、たのしく得られます。購入は コチラ