元国税職員さんきゅう倉田です。好きな 嬉しさの表現は「重畳」です。
個人事業者として活動していると、取引相手が反社会的勢力であるか否かを確認しなければいけません。いわゆる、反社チェックです。
数年前に、タレントと反社的勢力との取引が話題となったとき、テレビのコメンテーターが反社チェックの重要性を説いていました。しかし、そのコメンテーターは正しい反社チェックの方法をご存知なのでしょうか。絶対に知らないと断言できます。なぜならば、そもそも体系化されておらず、明確な基準が示されていないから。企業によって、そのチェックの内容も異なります。
今回は、最もチェックが厳しいと言われる銀行で、内部のシステム作成に携わっていた人から話を聞きました。
警察が捕まえられないような悪い人が、民間人が見分けることができるのか
知り合いの弁護士さんに、「反社会的勢力に該当するような悪い人間がいたとして、その人たちと取引をしないために反社チェックがあると。そんな警察が捕まえられないような悪い人間、あるいは、捕まえていない人間がその辺にいること自体が問題ではないでしょうか。警察がわからないのに、ぼくらがわかるわけないのでは? 」と聞きました。
弁護士さんによると、反社チェックでは、犯罪者を調べるのではなく、過去の犯罪歴や警察が犯罪の関係者としてマークしている人間かどうかを調べてはじくものであって、内偵中でまだ捕まっていないような人もひっかかるため、やはり重要なのだそうです。
ただ、反社チェックのサービスを提供している会社の多くが、インターネット上で個人名や会社名を検索するだけで、深度ある調査はしていません。それらのサービスで確実に反社会的勢力を斥けることはできないと個人的には思います。
反社チェックをして社外取締役にしたのに横領された
ある会社が、社外取締役に横領され、被害届を提出。なんと、詐欺の前科があることがわかりました。役員にするタイミングで民間のサービスを使ってチェックをしたのに、前科はわからなかった。
この事件の根底には、反社チェックの大きな不備がありました。
銀行の反社チェックは最も厳しいと言われています。銀行のシステムに携わっていた方によると、地方銀行であっても、国や大手銀行が大規模なマネーロンダリングや詐欺などの疑いのある者のリストを回してくれるので怪しい人間を把握できるそうです。また、一部の企業では、同様のリストを手に入れて自社の反社チェックに活用しています。
しかし、小悪党は検索にかけてもひっかかりません。個人名、法人名、役員の氏名などすべて調べても、過去の犯罪が報道されていなければ網にひっかからない。だから、反社チェックの重要な点は、なにかあったときに「ちゃんと反社チェックしました」と自らに不備がなかったことを主張できる点にあります。
よく、契約を交わすときに、「自分は反社会的勢力ではありません」という項目を見かけます。あれも、それを契約書に盛り込んでサインさせれば、取引相手は悪くないという理屈だと聞きました。そんなことを契約書に書くだけで、なんの効力があるのか甚だ疑問です。調べればどこかに論拠が示されているのでしょうか。結局は、努力をしたということが大事なんですね。
努力したけど、あちらの方が上手だったから発覚せず、取引をしてしまったと言いたいのでしょうか。完璧なチェックなど存在しない以上、そうするしかないのかもしれません。
みなさんもご自身で反社チェックする場合は、可能な限りの名前をインターネットで検索すれば、民間サービス並みの水準のチェックをしたことになります。銀行と同じ水準でチェックできるのなら、それが最も良いです。
外部に委託する場合は、それがどのようなチェック体制を敷いているのかよく確認してから依頼しましょう。
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