元国税職員さんきゅう倉田です。好きな質問は「どんなベンチャー企業を始めたらいいですか」です。

そういう質問をすること自体が、ベンチャースピリットにそぐわないと高明な方が言っておられました。社会に対してイノベーションを起こしたいと考えた人が起こすのがベンチャー企業であって、他人に言われてなにか始めてもそれはベンチャーではないんですね。

さて、ベンチャー企業で自社商品のプレゼンを担当していた方から話を聞く機会がありました。どのようなプレゼンによって投資家から資金を集めるのか。

あまり公になることのないその手法を聞きました。

話の7割は盛っていた

投資家は、将来何十倍何百倍になることを期待して、ベンチャーに投資をします。だから、ベンチャー側は期待値を示さなければいけません。数年後の収益の予測や何年後に上場するか、上場後の株価などを示して、リターンで株主を誘惑します。

ただ、実際に将来のことがわかるわけではありません。適当な数字を並べプレゼンします。それでも、自信を持ってプレゼンすれば、投資家はお金を出します。

「インターネット回線のベストエフォートと一緒で、理論値は示すけれど、実際にそのスピードが出るわけじゃないです」

その速度が実際に出るわけがないとわかっているのに、その数字が最も高いところと契約したいとみんな考えます。ぼくだってそうするし、みんなそうする。ベンチャーでも同じことが起こっています。根拠のない数字を根拠があるように見せることが大事なようです。

プレゼン担当の方は言いました。

「ちゃんと考えればわかるのに……」

お金を集めるためにやっていたこと

自社製品が良い、プレゼンが上手いだけでは、お金を集めることはできません。中身も大事ですが、外見も大事です。そして、その外見を見てくれる人も必要です。

例えば、こんなことをしていたそうです。

・著名人を社外取締役にして、信用を得る(著名人は実際になにかをするわけでなく、名義貸し)
・自社と子会社で循環取引を繰り返し、売上がたくさんあるように見せる(うちはすでにこれほど取引をしていて実績のある会社なんですよ)
・派手な遊び方をする代表取締役が、プレゼンを聞いてくれる人をどこからか集めてくる(おそらく、席料の高い飲食店で経営者や金持ちと知り合い「いい話がある」と言って招いている)

ぼくが話を聞いた人は1名なので、ベンチャーがみな同じことをしているとは思いませんが、そういう可能性があるということは認識していただきたいです。結局、話をしてくれた人の会社は、製品が完成せず潰れてしまいました。もちろん、投資した人のお金は水泡に帰します。

プレゼンでお金を出すのはこんな人

話の後半で「騙されるのはどんな人ですか? 」と聞きました。「お金を出す人はどんな人ですか」と聞いたわけではありません。

プレゼンする側も騙している意識があったし、それを話の流れでわかっていたからそう聞きました。お金を出す人の共通点は、"自分でお金を稼いでいない人"でした。

例えば、海外のギャンブルで大金を得た人や多額の遺産を相続したような人。努力や才能などの複合的な理由でお金を得た人は、ほとんど出資しないそうです。

苦労をすることが良いことだとは思いませんが、苦労をしてお金を得れば、プレゼンの内容に論拠がないことがすぐにわかるはずです。

バカラで2億円を稼いだ人は、プレゼンもろくに聞かずに2,000万円の出資を決め、プレゼンする側が改めてリスクを説明し慎重になるよう促しても「でも、儲かるんでしょ? 」と言って去っていきました。

預金が増え、運用を考えたとき、西麻布や銀座で知り合ったよくわからない人間に、年利15%で勧誘されることがあるかもしれません。でも、そんなものあるわけない。

「宝くじを買った方がいいのになあ」とプレゼンしながらいつも思っていたそうです。

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