元国税職員 さんきゅう倉田です。好きな所得は「事業所得」です。
芸歴12年目になりました。長い。
大学を卒業してすぐに芸人にならなくて良かった。税の知識がなかったら、芸人としての仕事はほとんどなかったと思います。国税職員としての経験と知識があったから、その後の租税法や税務判例の勉強ができました。
芸歴10年を超えてなんの結果も出ないままアルバイトを続けていたら、見切りをつけて就職していたと思います。芸人を10年やって30歳を超えて就職しても、きっと平均より低い給与しか得られないでしょう。美味しいご飯も食べられないし、自由に勉強する時間もない。生活ができるようになって良かった。仕事をくださるみなさんに感謝する日々を送っています。
芸人になって収入がなかった5年間
お恥ずかしい話、芸歴6年目くらいまで、芸人としての収入は0でした。毎月の明細ももらったことがなかったし、もちろん、支払調書ももらったことがありませんでした(「支払調書」は会社員のみんながもらう「源泉徴収票」みたいな紙のことだよ)。
でも、そんな芸人はごろごろいて、お笑い界では普通のことです。個人事業者としてはみっともないけれど、芸人としては一般的。税金の勉強を始めて、発信し、執筆の仕事などを請け負うようになって、少しずつ収入を増やしていきました。
このマイナビニュースの連載が始まった4年くらい前は、ぼくの年収は役所が発表している平均年収より少なかったと思います。マイナビニュースでの連載という信頼が、仕事を呼んだのかもしれません。事実、イベントなどに呼ばれると、「マイナビの連載見ています」と言われることがあります。
そこから収入を伸ばすことができたのは、仕事と単価の増加のためです。
仕事を増やし、単価をじりじりと上げていくのも個人事業者の業務
会社員ではないので、待っていても仕事はやってきません。自分から仕事を得られるように行動する必要があります。
今はしませんが、自分から営業をかけてウェブの連載の仕事を得たことが何度かありました。仕入れがなく価格が不明瞭な仕事の営業は、買い叩かれる可能性があるのでおすすめしませんが、アルバイトをするよりはましだと思います。今は営業をかけることはせず、認知とブランド・エクイティを上げることで新たな仕事を得ています。
ただ、3年くらい前から単価が上がらなくなってしまいました。ここ数年、ぼく自身の価値が上がっていないので当然です。芸人が劇場でネタをやった場合の報酬は、賞レースの決勝に出場するか、あるいは、優勝しない限り上がらないそうです。報酬を支払う側の企業にも、明確な基準があるんですね。
ぼくが仕事をもらう様々な企業には統一の基準がありませんが、テレビにたくさん出ているか否か、つまり"売れているかどうか"は、単価に大きく影響すると思います。だから、売れるか大きな出来事がない限り、ぼくの単価が大きく上がることはない。
個人事業者として単価の停滞は、衰退を意味します。
噛み続けられたガムみたいにいつか味がしなくなって、仕事がなくなってしまうかもしれません。単価が上がるように、仕事が増えるように、常に自己研鑽が必要だし、仕掛けていかなければいけません。
平均年収をやっと超えた芸歴9年目
とても時間がかかってしまいましたが、タレント業で平均年収を超えたのが3年前。それまでも、株式投資や保有する主任電気技術者という資格を活かした仕事で収入を得ていましたが、お笑いとは全く関係ない副業です。
個人事業者ならやはり本業で稼ぎたい。
現在は、努力が報われて電気に触らなくて良くなりました。預貯金は不要なので、株式投資は続けています。年金の受取額の少ない個人事業者は、老後のための資産形成を行う必要がある。そういう点でも、投資は重要です。
個人事業者歴をそれなりに重ねて、たくさんのことを学びました。後発の方々の参考になれば幸いです。
新刊『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』
(総合法令出版/1,404円)
さんきゅう倉田の初の著書が発売されました。ぼくの国税局時代の知識と経験、芸人になってからの自己研鑽をこの1冊に詰めました。会社員やパート・アルバイトの方のための最低限の税の情報を、たのしく得られます。購入は コチラ