元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きなたとえ話は「もし世界が100人の法人だったら」です。
全3回に亘って、ネットフリックスのカルチャーガイドを紹介しています。
ミスに対するネットフリックスの考え方
ネットフリックスは、間違いを防ごうとする努力よりも自由で迅速に復旧できるほうが望ましいと考えています。創造的なビジネスに取り組んでおり、安全を最も重要視しません。恐れるべきは、イノベーションが欠如することです。だから、比較的間違いに寛容です。
ミスに対する寛容さの欠如は、合理的なビジネスを阻害するとぼくも思います。先日、収録現場に行ったら誰もいなかったことがありました。収録が中止になっていたようです。
その後、担当者から謝罪の電話がありました。ぼくが「全然大丈夫ですよ。またお願いします」と言っても、謝罪は続き、電話を切るまでに5分ほどの時間を要しました。
ミスに気づいていなければ言うべきですが、悪意のないミスを犯して謝罪をしている人に対して、非難することはできません。自分がミスをしたときに責められたくないし、なぜミスをしたか考えさせたりミスを予防する対策を採らせたりしても、意味がないと思ったからです。
担当者は、次の仕事の際に倍の報酬を提案してくれました。ミスを取り返そうと考えたのだと思います。あのとき怒っていたら、負の感情を惹起し、次の仕事をくれることすらなかったかもしれません。
他人のミスを責めることは、自分のミスを責められるリスクと表裏であり、リスクを減らすための寛容さが重要だと思います。ネットフリックスは、過大な間違いを防止する手続きが、独創的・創造的な仕事の妨げになると考え、用心しています。
ネットフリックスの意思決定
ネットフリックスは、私達は「反対意見の農園」だと言います。
反対意見を言うことは容易ではありません。一般的な社会であれば、他人の意見に反対ばかりする人はコミュニケーションが下手な粗忽者の愚か者だと認識されます。
しかし、ネットフリックスではそれを奨励しています。意思決定の規模の大きさに比例して、広範囲の反対意見や同意を集め、設定されたキャプテンが意思決定を行っています。
創業者や社長の革新的なアイデアによって、製品やサービスが驚くべきものになったという話を耳にすることがあります。偉大な経営者の存在が、イノベーションには必要だと考えている人もいるでしょう。
ネットフリックスは、スティーブ・ジョブズが行ったようなアップルのトップダウンモデルを見習いません。社員が意思決定をすることが、最も効果的かつ創造性に富むと考えているからです。むしろ、経営陣が行う意思決定が少ないことを誇りに思っています。
これは、報酬制度やドリームチームによって、特別に優秀な人材が集合するネットフリックスだから可能なことであって、一般的な企業ではトップダウン式の意思決定が最も合理的であることは否定しません。グローバルに活躍する日本の大企業の経営者が、高齢になっても勇退しない点からも、トップダウンの優位性・必要性を感じます。
高度に整列し、ゆるく結合するネットフリックス
会社が成長すると、中央集権化され柔軟性がなくなり、以下のような兆候が現れるとネットフリックスは考えています。
・経営陣が小さな意思決定に深入り
・複数部門にまたがる承認会議が非常に多く開かれる
・内部的なグループの満足が、顧客満足より優先
・間違いが少なくなるが、動きが鈍くフラストレーションがたまる
これらは、大企業でなくとも、成長によって発生する弊害であり、イノベーションを著しく阻害します。みなさんの企業も、成長の過程で同様の問題にぶつかるかもしれません。
文書の最後は、サン=テグジュペリの言葉で締められています。 「船をつくりたければ、人々に木を集めさせ、仕事を割り振り、命令するのではいけません。その代わりに、広大で無限の海にあこがれるように仕込むのです。」
素晴らしいビジョンを示して、社員や顧客、株主に影響を与えるのが良い経営者だと思います。
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