元国税局職員さんきゅう倉田です。好きな小説の書き出しは「『では調査官は、そういうふうに社長の個人的な支払いだと言われたり、売上の除外だと言われたりしていた、このぼんやりとした入出金がほんとうは何かご承知ですか』社長は、黒板につるした大きな黒い帳簿を指しながら、調査官に問いをかけました。」です。

昔、国家公務員だった時、住民税を引かれるようになった2年目の手取りの給与は18万円でした。少ない。公務員の給与は少ないです。とくに、国家公務員は優秀な人材が集まっています。他の官公庁は知りませんが、国税局に限れば間違いなくそうでした。

合理的な判断、幅広い知識、強い志、速やかな事務処理、どれをとっても素晴らしかったと思います。

でも、18万円です。みなさん、偏差値の高い大学を卒業しています。大学の同級生と比べると、給与は圧倒的に低いと思います。一度、50歳の税務署の副署長が年収を教えてくれたことがありましたが、およそ1,000万円でした。 50歳で、かなり早いスピードで出世しても1,000万円程度なんです。公務員全体の給与水準は低い。現在の大卒の平均程度とするルールでは、不足していると思います。

しかし、給与が少ないことを嘆いていたぼくに、当時の先輩は言っていました。

「上ばっかり見ていたらキリがないよ」

とても優しい先輩です。いつもぼくを導いてくれた先輩でした。

先輩と滅多に会うことがなくなった今、ぼくは再び上ばかり見ています。今回は、そんな上の話です。

知り合ったとてつもなく美しい女性は数世代に渡って大金持ちだった

最近知り合った経営者の女性に、お金持ちに関する取材をしました。お金持ちはお金持ちと知り合うことのほうが多いし、その方が扱う小売の商品が高所得者向けのものだったので、面白い話が聞けると思いました。でも、そもそもご実家が、地元の名士だったのです。

「父が通っているお店は、わたしも全部ツケ払いで食事に行っていました。地元の海で夏にだけ営業している海の家も、名前を言えばお金はいらなかったので、海岸にお財布やお金を持っていって砂や海水で汚れるようなことはありませんでした」

これくらいのことは、地方の有力者ならよくあることなのかもしれません。有力者ではありませんが、ぼくも昔は広島県宮島の厳島神社に、名前を言って無料で入れてもらっていました。大叔父さんが宮司をやっていたからなんですが、親戚ならそれくらいはあるのかもしれません。

「地元のどのお店に行っても、ほとんどお金を使うことがなかったので、わたしは社会に出て自分でお金を稼ぐようになるまで、支払いをしたことがなく、お金は空気と同じだと思っていました」

学校の帰りにカラオケに行ったり、31日にアイスクリームを食べたりするようなこともないのでしょうか。もしかしたら、車で送り迎えをしてもらっていたのかもしれません。

「お金は空気と同じだと思っていました」に、育ちの良さを感じます。あって当然のもの、減ることのないもの、コストを掛けずに得ることができるもの、それがお金なんですね。

「父方の親族はみんなこうだったので、私の金銭感覚には一般社会とズレがあるかもしれません。祖父の会社に税務調査が行われたこともありました。私はまだ子供でしたが、よく覚えています。追い詰められた祖父は、家の近くの川まで走っていき、ボストンバッグいっぱいに入った札束を川へ流していました笑

それ以来、祖父は腹巻の中に100万円の束をいつも忍ばせていました。ほら、敵に銃で打たれないために、ダイナマイトを腰に巻くみたいに」

世の中には、裕福な人がたくさんいます。上をも見ていてもキリがないけれど、下を見るともっとキリがない。ぼくは、個人事業者です。頑張れば頑張るほど収入が増えるので、たのしく上を目指したいと思います。

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