元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな映画は「納税者/最後の申告」です。
損失と利益では、損失の方が人間の行動に大きく影響することがわかっています。
例えば、若手芸人の場合、確定申告をすると所得税が還付になることがあります。それは、収入より経費の方が多くなるためなのですが、数十万円の還付金がもらえることが分かっていても、確定申告をしない芸人は大勢います。彼らは、たったの3時間で終わる確定申告を、億劫に思ってやりません。
時給1,000円のアルバイトは平気でするのに、時給数万円の確定申告をやらないのです。おそらく、期限を過ぎて還付金を得られなかったとしても、なんとも思わないでしょう。利益は、人を行動させる要因としては、損失と比べると相対的に弱いといわれています。
一方で、10万円の財布を落とした場合は、5時間でも10時間でも探します。 SNSで未知の誰かに呼びかけることもあるし、見つかるまでずっと探して、見つからなければとても悲しむでしょう。その人にとっての時間の価値は変わらないはずですが、損失の方が人間の行動に大きな影響を与えます。だから、このことを理解して自分の行動を修正する必要があります。
還付金の20万円は放棄したのに、10万円の財布を数日かけて探せば、行動に矛盾があるといえます。お金のことを 考える上では、損失と利益を同じように計量して、矛盾を解消しなければいけません。
「財布を落としました」と投稿すること
また、タレントが自己の不注意によって損失を被ったときに、SNSで発信することは推奨しません。他人に損失を知られて得られるリターンは少ないし、不注意な人間に仕事の依頼はこないからです。
だから、財布を落としたとしても、その事実を広く知らしめるような行動は控えましょう。財布を落とすような人間に、仕事を頼みたいと思う人がいるでしょうか。仕事を頼んで、報酬を渡しても、落とすかもしれない。どうせ落とすのに、お金を払いたいと考える人はいません。
同様の事例で、「ライブのチケットが売れていません。お願いします」という、若手芸人の投稿を見かけます。とてもよくない投稿で、今すぐやめたほうがいいと、芸人たちの間で話題になることがあります。
あなただったら、チケットが売れていないライブに行きたいと思うでしょうか。そのライブや出演者のことはわからないけれど、売れていないということは面白くないんだろうと思いませんか。
「売れていないということは面白いはずだ」とか「チケットが売れてないなら買ってやろう」と思うでしょうか。もしそう思うようであれば、奇人だと思います。
チケットが売れていないことより、出演者やライブの良い部分を紹介するほうが合理的です。
プレゼントの回数は多いほうが良い
コストを支払う上では、常に合理的な選択が求められます。合理的な選択の一助になる心理的作用をひとつ紹介します。
プレゼントをあげるときは、1回ではなく複数回に分けた方が、相手の効用が高まるといわれています。同様に、ボーナスは年間の合計金額が同じなら、年2回より3回の支給の方が嬉しく感じるそうです。
人は金額より回数によって、満足度が高まることが分かっています。だから、恋人に高い誕生日プレゼントをあげるより、デートの度に花をあげたり、家に行く度にケーキを買ったり、コンビニに寄ったらすべて支払ったりする方が、恋人の満足度が高まる可能性があります。
よしもと芸人は、先輩が後輩の分の食事などの支払いをすることになっていますが、ぼくは、年に1回食事に連れて行ってくれる先輩より、会うたびに缶コーヒーを振る舞ってくれる先輩のほうが、自分からの感謝の気持が強い気がします。
同じコストで最大限の効果を生む方法を考えるのは、お金の考え方として重要です。いつだって、最小のコストで最大の利益を目指し、意味のないことは避けるようにしましょう。
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