元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きなお弁当は「手弁当」です。

コロナですっかりご無沙汰していますが、ぼくは毎月、様々なイベントに出演しています。大きなハウスメーカーの顧客向けのお祭りで税金の話をしたり、クレジットカード会社主催のキャッシュレスのイベントに登壇したり、お花見でコード決済の良さを語ったり。ほかにも経営者の集まりで税務調査の話をしたり、労働組合で流行りの詐欺について解説したりしていました。

そういったイベントでは、控室が用意されていて、イベントが始まるまでは、そこで大人しくしているように指示されます。着替えや練習をしたりするわけですが、多くの場合、控室には、お弁当とお茶が用意されています。

1個のときもあるけれど、ひとりに対し2個、3個用意されていることもよくあります。非常にありがたいです。そのあと懇親会があれば食べませんが、「登壇者にはお弁当を用意する」という業界のルールがあるのかもしれません。ぼくは、お茶だけいただいて、お弁当に一礼しています。

お弁当の並べ方、縦か横か

ぼくは全く気になりませんが、よく知る先輩は、控室のお弁当の並べ方が気になるそうです。数種類のお弁当が用意されていて、それが縦に積んであると苛立ちを覚えると言っていま した。

「オレは、積んである弁当を動かして、中身を確認しなきゃいけないのか? 」

どうせ確認するのだから、初めから横一列にしておいてほしいんですね。

しかし食べない人にとっては、横に並べられたお弁当は邪魔な存在です。散らかすな、と叱責を受けてしまう可能性もあります。ぼく個人は共感しませんが、そう感じる人もいるのかもしれません。

それよりぼくが気になるのは、お弁当の種類です。テレビの収録で、楽屋に同じお弁当が複数個用意されているのは見たことがありませんが、外部の人間を招くことの少ない、マニュアルができていない組織で似たようなことがありました。

控室に用意された5人分の缶コーヒー

5年くらい前に、中学校の先生が受ける研修会での講師の依頼がありました。ぼく一人ではなく、芸人の先輩や塾の先生と5人で、山奥の研修所を訪れて「話し方」について講義しました。

1時間前の入りで、出演も1時間ほどの短い滞在時間だったので、お弁当はありません。皮肉ではなく、お弁当を欲しいとも思っていないし、提供を期待してもいません。しかし、流石に、飲み物はありました。

それが、ブラックの缶コーヒー5本だったのです。

缶コーヒーしかないのは珍しい。控室の飲み物としては、まず、水かお茶があって、「こちらもよろしければ」の気持ちで缶コーヒーが置いてあることがよくあります。しかし、缶コーヒーしかないのは初めてです。

もちろん腹は立たないし、不快ではないけれど、笑ってしまいました。世の中には、コーヒーが飲めない人もいます。みなさんの周りにもいると思います。飲み物が缶コーヒーしかなく、5人の中にコーヒーが飲めない人間がいたらどうするのでしょうか。想像力の欠落を感じます。もしかしたら飲めない人がいるかもしれない、と少しも考えなかったのだとしたら、配慮に欠ける教育を行っているのではないかと怖くなりました。

喧嘩になるから、同じ方が良いという意見

  • 元国税芸人さんきゅう倉田の「役に立ちそうで立たない少し役に立つ金知識」 - 第157回「控室に缶コーヒー5本しかない場合 」

控室での1時間、その話でもちきりでした。自販機でスイッチを押す担当者の行動を、何度もシミュレーションしました。そんななか、仲間のひとりが、満を持して言ったのです。

「喧嘩になるから、同じものの方が良くない? 」

大人が、飲み物のことで喧嘩することはないし、何歩か譲って喧嘩をしたとしたらそれはそれで面白い。それよりも、飲めない人がいた場合のリスクを回避することのほうが重要です。彼は、リスクに対して少しも考えていませんでした。そして、人は選択肢が一つしかない場合より複数あった場合の方が良いこともある、ということも感覚的に理解しておく必要があります。

他人に何かを贈るときは、どうすれば相手の満足度が高まるかを考え、最善を尽くすべきだとぼくは思います。そうすると、数学の「場合の数」の問題にならないような、5人に対し同じ飲み物を用意するという愚挙は、避けるべきであると言わざるをえません。

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