元国税局職員さんきゅう倉田です。
好きな小説の書き出しは「社長は悲しんだ。彼は彼のすみかである岩屋から外へ出てみようとしたのであるが、裏帳簿が出口につかへて外へ出ることができなかつたのである。」です。
人に人を紹介すること
「人を紹介してほしい」と言われることがあります。
「どこかにいい男いない? 公務員と合コンしたいんだけど」などといった異性からの嘆願ではなく、従業員や税理士を紹介してほしいという依頼です。芸人になってから現在に至る11年間で、幾度となく依頼をされてきました。
「わかりました」といって特になにもせず、数日経ってから「すみません、見つかりませんでした」と連絡してもいい。でも「久しく会っていないぼくにわざわざ依頼するくらいだから、とてつもなく困っているに違いない」。そう勝手に考えて、毎回熱心に探していました。
その結果、良い人が見つかって紹介できることもあれば、うまくいかないこともあります。要求そのものが厳しいので、見つからないことの方が多い。それでも、時間の許す限り、見つけるために手を尽くします。人材派遣会社を営んでいるわけではないので、基本的にはボランティア。相手には「ありがとう」しか求めません。困っている友人が、問題を解消してくれたら、それで十分だと思っています。
しかし、そういったこちらの扶助・奉仕の精神を軽んじる大人はたくさんいて、それこそ合コンで異性を紹介してもらうくらいの気持ちで、従業員を探してほしいという人がいます。
必ずやろう3つの確認
「紹介してほしい」と言われたら、ガスの元栓を閉めたかどうかと同じくらい大切な3つのことを確認するべきだと考えています。 それが、熱量、理由、条件です。
熱量
相手がどのくらいその人材を求めているのか。
明日にでも人材が必要なのか、ちょっとした思いつきで探しているのか、あるいは中長期的にみて見つかればよいのかなど、相手の熱量をしっかりと把握することが必要です。相手は軽い気持ちなのに、こちらが5人も見繕って紹介した日には、自分も紹介された知人も損をします。こちらが相手の熱量に合わせるために、必ず確認しましょう。
理由
探している理由も確認します。
個人的なことなので、追求するのは憚られるかもしれませんが、知人を紹介する以上避けては通れません。経理の人間が退職したため至急雇いたい、事業を始めたが顧問税理士がいないので契約したい、そのような差し迫った理由なら問題ないと思います。
しかし、こういう人間がいたら便利だな、今までより安く雇えたらいいな、といった軽い理由の場合もあるでしょう。自分が本当に手を貸すべきなのかは、相手の話をしっかりと聞いてから判断することが望ましいです。
条件
探している人材に求める条件をしっかりと確認しておきましょう。
熱量があって、理由に他者への敬意があれば、被紹介者の労働条件や契約条件は良くなります。逆に、ぼくの経験上では、理由がよこしまで、強い気持ちがなければ、自信を持って他人に案内できる条件ではない可能性が高い。
紹介してから知人が依頼者に直接条件を確認し、悪質な条件だったとわかれば、紹介者の面子は丸潰れです。大切な友人にババを掴ませるわけにはいきません。条件を確認し、そこから熱量がどの程度なのか、推察しましょう。
過去、ぼくにもたくさんの依頼がありました。
「頭の切れる正社員がほしい」「葬儀社で死体をくるむバイトを探している」「とにかく安い税理士を探している」「卑猥な作品の撮影で部屋を貸してくれる人を探している」……。
人材の紹介にはリスクとコストがかかり、知人の期待や信頼を裏切ってしまう可能性があることを忘れないでください。
紹介を頼まれたら、気軽に引き受けず、まずは相手に3つのことを確認しましょう。ただし、確認しすぎて「面倒だな」と思われないようにご注意ください。
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