元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな会計基準は「IFRS」です。

5年くらい前に、友人の結婚式の2次会幹事を頼まれたことがあります。会場が渋谷駅からほんの少し歩いたレストラン、ということだけが決まっており、スケジュールや催し物はぼくに任せられていました。

ただ、会場での機材確認や、使用時間の打ち合わせなどについては、代理店がレストランの担当者とやりとりすることになっていました。

担当者の男性は、年齢は25歳、ギラギラした目つきで、不動産の営業マンのような風貌。第1回の打ち合わせは、新郎新婦と一緒です。

「うちは、スタッフも機材も、最高のものをご用意しています。当日は、音楽や照明の操作に慣れた一流のスタッフがサポートしますのでご安心ください」と、最低でも3回は言っていました。

音響も照明も、操作に慣れたスタッフがやってくれるのであれば、安心です。さらに、ビンゴ大会やその景品が必要であれば、用意してくれるとのことでした。

ぼくは、ビンゴ大会のような運だけに由来する遊びを好みません。自分がつくる企画では、努力や才能の結果で景品を手に入れてほしいと考えていました。そこで、自作の謎解きを解いてもらい、正解にたどり着いた人にディズニーペアチケットを渡すことにしました。

不安な2次会準備

景品をディズニーペアチケットにしたのは、2次会の運営に携わった友人から、「2次会の景品でもっとも多いのは、ディズニーペアチケットだ。どこの2次会でも1番、あるいは、2番の景品として用意されている。誰がもらっても嬉しいし、荷物にもならない。必要なければ、簡単に譲ることもできる最高の景品。これを超える2次会の景品が発明されたら、ノーベル経済学賞を取るかもしれない」という意見が出たからでした。

収支を予測するのはぼくの役目です。参加人数と料理の量から景品の予算を計算、ディズニーペアチケットを10組用意しました。そしてそのことを、ビンゴを強くすすめてくる代理店に話しました(なお、代理店は、ビンゴの使用料を徴収できる)。

「ビンゴをしないことはわかりました。でも、ディズニーペアチケットなんて喜ばないですよ。みんな、景品が欲しくて2次会にくるわけじゃないんだから、景品なんてなくていいんですよ」

ぼくと立ち会った友人は、それに対してなにも言いませんでしたが、どうして担当者がそんなことを言うかはわかりませんでした。なぜ、参加者の気持ちがわかるのだろうか。2次会のたびに参加者に聞いたのだろうか。ぼくらより若いのに、そんなにたくさんの2次会に参加したのだろうか。

この担当者は、危ないかもしれない。ぼくは、2次会当日に不安を抱えたまま臨むことになりました。

そして訪れた2次会当日

謎解きの道具やスライドは事前に用意し、いよいよ当日を迎えました。2次会は16時から、客の入りはその30分前、ぼくらスタッフの入りはさらに30分前と担当者から言われていました。

ただ、会場の準備を30分で済ませるのは容易ではありません。機材の確認、リハーサル、店内の装飾を時間内に終わらせるために、予定より30分早く会場入りしました。しかし、お店からは「入れません」と言われてしまいます。アイドルタイムで、従業員が寝る時間だったようです。

ここで諦めずに、粘り強く交渉すればよかった。外で30分待機して、再び店内に入ると、音響の機材は壊れていて音が鳴らず、セッティングに時間がかかり、参加者を外で30分も待たせてしまいました。

さらに、「一流のスタッフがサポートします」と言っていた担当者は来ず、スタッフとして手伝ってくれたのはそのお店のキッチンの男の子ひとり。それも照明をパチパチするだけでした。

代理店の担当者に連絡しても「スタッフは一流のその子だけです。機材が壊れていても、責任は取りません」と言うのみ。楽しい結婚式の2次会を、お祝いする気持ちのない第三者に台無しにされるところでした。

ぼくに必要だったのは、代理店の収益構造を考え、発言が自分のためなのか、客のためなのかを見極めることでした。

さんきゅう倉田

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