元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな仕入は「課税仕入」です。

コロナウィルスの影響で、3月と4月の仕事がほとんどなくなってしまいました。生き残ったのは、簡易接触すら行わずに達成できる執筆のみ。ライブもお花見のイベントも法人会での講演会もすべてなくなってしまいました。

仕事が減れば、その分の時間を他のやりたいことややらなければいけないことに使えます。それはそれで、良い面があるのですが、売上の減少には危機感があります。

ぼくは2月で35歳になりました。

流石に預貯金があるので、当面の生活には困りません。

ただ、毎月の支払いが売上を上回ると、背徳感がぼくを包みます。だから、テンパランスしなければいけません。

3月の芸人たちの過ごし方

他の芸人さんたちは、3月をどのように過ごしているのでしょうか。

概ね、何もしないか動画配信に力を入れているかのどちらかのようです。潜在的には、ネタ作りに精を出している人もいると思いますが、他人から見えるのはYou TubeとSNSでの不毛な投稿だけです。

吉本興業の劇場も閉まってしまいました。

以前、天候の悪化で、大阪市内の商店やテーマパーク、公共交通機関が一斉に営業停止になる中、なんばグランド花月だけは徒歩で来られる芸人さんを集めて、営業していました。

なんばグランド花月は、吉本興業で最も大きな劇場で、800人以上収容できます。

ふらっと来た客だけでなく、大阪の観光ツアーなどのプログラムに組み込まれていて団体の客も大勢来ます。

でも、暴風雨で団体バスは動いていません。それでも、劇場は開けて、客を受けいれる体制を整えていました。その吉本興業が、およそ1ヶ月間、全国の劇場を閉めたのです。

売上は0なのに、劇場にいる社員さんに給料を払うことになります。そういう決断を吉本がするというのは、芸人から見ると、大きな変化です。病めるときも健やかなるときも、劇場から笑いを発信していた会社が、世間と調子を合わせたのには驚きました。

ひとつミスを犯せば見えない誰かが束になって襲いかかってくる世の中なので、正しい判断だと思います。

さて、劇場に客を呼ぶことはできなくなりましたが、芸人と少数のスタッフだけで集まって、ライブを生配信するようになりました。

予定されていた公演のすべてではありませんが、人気の公演や子供向けの教育系コンテンツが無料で見られるようになっています。ぼくも子供向けの辞書を視聴者と一緒に作る企画と税金の授業を行いました。

配信が、すぐに収益に繋がることはありませんが、会社が今の環境でできることを考えた結果です。スタッフさんや芸人さんに少しでも報酬を払えるし、吉本興業のお笑いを、学校や仕事が休みになった人たちに見てもらうことができます。

対価性のあるものが無料で提供されること

お笑い以外にも、マンガや音楽のライブ、成人男性向けの動画が無料で提供されています。今まで有料だったものが、期間限定ですが、対価不要となりました。それに対し、「私達がやっていることが無料で提供されるなんておかしい」という意見を目にしました(Twitterで2件見かけただけなので、その声は大きくない)。

ぼくは、無料で提供することに賛成です。「ぼくが無料で見たいから」という軽薄な理由ではなく、そもそも価値なんてないからです。見る人は、お金を払ってまで見ようと思わない。

例えば、テレビは無料で見ることができます。その代わり、番組中にCMが入ります。客に直接料金を払ってもらうのではなく、時間を奪って、それを対価としています。

みなさんがスマホに入れているアプリの多くも無料で提供されています。でも、無料で作ったわけではないはずです。有料にするより、広告を入れて、ユーザーの時間を奪うほうが合理的だと考えているから、無料にしています。

この連載も、みなさんが読んでくれる理由の一つが、無料であること、だと思います(有料でも読んでくれる人がいたら、さんきゅう倉田先生に応援のお便りを!)。

誰もが表面上の無料の恩恵を受けています。家の前の道路だって、信号だって、使うたびにお金を支払っていません。サービスを提供する側には、こっそり対価を頂戴する工夫が必要で、我々芸人は、ネタだけでなく、そういったことも考えなければいけない時代になりました。

さんきゅう倉田

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