元国税局職員さんきゅう倉田です。好きな主義は「期中現金主義」です。
フリーランスにとって、12月は重要な締めの月となります。12月と1月、どちらの売上なのかによって、所得税の納税時期が1年異なるからです。売上に伴う現金の入金は早いほうが良いけれど、税負担はなるべく遅いほうが良い。でも、そううまくいかないのが会計のルールです。
1月に入金されても12月の売上
会社員がフリーランスと異なるのは、1月にもらった給与が前年の収入にならないところでしょうか。会社員、パート・アルバイトなどの給与所得者は、「給与が支払われた日」が基準になります。だから、1月にもらうお給料が先月働いた分だとしても、新しい年の収入に加わります。
ぼくの経験では、アルバイトのときは働いた月の翌月に給与が支払われていましたが、国家公務員のときは働いたその月に給与が支払われていました。具体的には、入庁して働きはじめた4月の15日に最初の給与が支払われました。だから、国からもらった最後の給与は、退職した日の半月前にやってきた給料日の給与でした。
このように会社や所属する組織によって、給与の支払日というのは様々です。そういった事情や煩雑な手続きを簡略化するために、「お金をもらった日を基準にして、収入を計算する」となっているのかもしれません。
でも、フリーランスは、お金をもらった日を基準にしません。納品した日や仕事をした日に収入があったことになります。だから、1月や2月に報酬が振り込まれても、前の年にした仕事であれば、前の年の収入になります。
フリーランスの売上と確定申告
前の年の収入になるので、確定申告で収入(売上)を計算するときには、注意しなければいけません。通帳の入金履歴だけを確認するのではなく、請求書などを確認して、どこまでが前年の収入なのか判断します。
でも、毎月の収入を、請求書を見て、「どの月の仕事かな?」と考える必要はありません。ここで「期中現金主義」という考え方を用います。
年の途中は振込や現金手渡しといった決済された日で収入を計上します。これを「現金主義」といいます。フリーランスの場合は1月から12月をひとつの「期」とするので、その間が「期中」になります。期中であれば、収入を10月につけようが11月につけようが構わないわけです。
しかし、期をまたぐとなると、納税額に影響が出るので、決済された日ではなく、納品日や仕事をした日を見て、収入に加算します。期中だけ現金の入金を基準にし、期をまたぐ支払いは仕事をした日を基準にするのが、「期中現金主義」なのです。
合理的な計上方法として、多くのフリーランスや法人に採用されています。
税理士さんが現金主義で追徴課税
白色申告や一部の青色申告では、期をまたぐ収入を加味しない、入金だけを基準とした「現金主義」が認められますが、青色申告で65万円の控除を受けるならそうはいきません。
税務調査を受ければ、「これは、入金は翌年ですが、収入の計上時期は前年ですよ」と指摘され、追加で納税することになります。
このようなミスを、期がずれることから、「期ずれ」といいます。収入の計上時期は判断が難しく、チェックが面倒なので、よくあるミスとして、税務調査では注意深く見られています。
ぼくの知り合いの税理士さんが税務調査を受けたときにも、期ずれの指摘を受けていました。その税理士さんは70歳を超えていて、収入は毎年1億円以上、従業員もたくさん抱えています。でも、面倒だったらしく、ずっと現金主義で確定申告をしていたそうです。
税理士さんでもそういうことがあるんですね。
フリーランスとして仕事をするのであれば、簿記や会計の知識が必要となります。不勉強は、将来の損失のもと。少しずつ勉強して、正しい処理を学びましょう。
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