元国税局職員 さんきゅう倉田です。 好きな保険は「年金保険」です。
第100回です。この連載は約2年続いています。これも、読者のみなさんと担当の方のおかげです。記念すべき第100回は、何か特別なことをしたいと考えていました。
連載は、新社会人向けに、大人として知っておくべきお金に関する知識を伝えるものです。ぼくはいつだって新社会人のことを考えています。
詐欺と若者
いつの時代も若者を狙った詐欺や儲からない商売はあるもので、何度かそれについて寄稿したことがあります。ただ、それらはあくまでぼくの調べたことと忖度(推測)に過ぎません。あちら側からの情報がほとんどないのです。
そこで、バイナリーオプションの人や「インスタのお仕事興味ありませんか」の人、情報商材の人にTwitterで呼びかけ、さらにInstagramでこちらから20人ほどにアプローチしたところ、ひとりだけ取材を受けてくださる方が現れました。
その方は、情報商材を販売する会社の幹部で、ご自身の業界がインターネット上で批判されていることを認識されており、過去には、勤務する会社が行政処分を受けたこともあるそうです。
そのような方から裏話を聞くことができれば、きっとここの読者からは、騙される人がいなくなります。これは第100回として相応しい内容だ、と考えていたのですが、行政処分を受けたことがある本格派だったことが仇となり、企画が中止になってしまいました。残念ですが、また、200回記念のときにチャレンジしたいと思います。
今回は、不動産屋さんと保険屋さんから聞いた火災保険の話です。
火災保険を使ったリフォーム詐欺
今、巷では「火災保険リフォーム詐欺」が増えているそうです。
持ち家でも、賃貸でも、みなさん火災保険に入っていると思います。「火災保険」といっても、火に因る災害のみが、補償の対象となるわけではありません。契約によって異なりますが、地震や台風、水害、大雪でも保険金が支払われます。
それらの災害に遭えば、保険で修繕ができますが、保険会社は被害に遭った家を見に来ないし、見に来たとしても災害に因るものなのか、子どもがボールをぶつけて壊したのか分かりません。
そこに目をつけた悪いリフォーム業者たちが「火災保険で無料リフォーム」という広告を出して客を集めているというのが、今回のお話です。あるいは、町を歩き、破損している家を見つけたら、家主にリフォームの話を持ちかけて、保険会社に連絡をさせているのだそうです。
このトラブルには被害者がいない、と言われます。家主はタダでリフォームができ、悪い人たちは保険金を受け取り、保険会社はそれが偽りであることに気づかない。だから、ほとんど明るみにならないそうです。
リフォーム業者は、家主と保険金を分け合いますが、場合によっては、リフォームすらしないそうです。それでも、保険会社はリフォーム後に直した箇所を見に来るようなことはしません。
税務調査であれば、牽制効果を期待して調査をします。すべての納税者に調査ができなくとも、調査を受けていない納税者が「いつか調査が来るかもしれない」と正しく申告するようになれば、意義があります。しかし、火災保険では牽制もしていないようです。
牽制もないので、組織的にそのようなリフォームが行われるようになります。すると、保険会社の想定より、加入者に支払う保険金が増えます。そうすると、ビジネスとして火災保険を継続するのが難しくなってしまいます。
保険会社はどうするか
保険会社の人は賢いので、このような行為が存在することは認識しています。 しかし、家に行き被害の原因となった災害について聴取するとか、リフォーム業者の実態を調べるとか、リフォーム完了後にそのリフォームが仮装でないか見に行くとか、そのような対策はしないそうです。
そうすると、トラブルは防止できません。では、どうなるか。
保険料が上がるのだそうです。みなさんが、支払う火災保険料が上がり、利益が出るように調整されます。
誰かが、嘘をついてリフォームをしてもらったがために、真面目に保険料を支払っている人たちの掛け金が上がってしまいます。
世の中には、まだまだ知らないお金の動きがたくさんあって、気づかないうちに負担をさせられ、損をするんだな、としょげつつ、もっと情報を共有する機会が必要だなと感じました。
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