通勤や移動時の列車の中、あるいは出張時の新幹線や特急列車の中で仕事をしたい、という人も多いだろう。もちろん、そんな時間まで仕事に追われていたくないという声もあるだろう。ただ、列車内をオフィスとして活用する方法をある程度知っておかないと、何か急な作業をしなくてはならないときに、困るのは確かだ。
まず座る
列車内をオフィスとして活用するために必要なことは、電源の確保でも公衆無線LANの確保でもない。そういったものは、ない列車もある。
まず、落ち着いてものごとを考え、作業に集中するためには、座ることだ。通勤電車のロングシートに座ることができれば、会社内のグループウェアにスマートフォンからアクセスして、メールや書類のチェックなどができる。簡単なものならば、そこで対応してしまってもよい。
そういった、細切れの時間を活用するために、まずは座るということを考えたい。もし、JRの普通列車グリーン車や、各社の通勤ライナーに乗ることができたら、パソコンを開く作業をしてもいい。通勤電車のロングシートでパソコンを開くと、ちょっと狭苦しい。また隣の人にのぞきこまれ、どこの会社の人かわかってしまうこともある。
もちろん、2人がけのシートでもそういったことはあるのだが、窮屈なロングシートよりも見られにくい。新幹線や有料の特急列車では、指定席を確保しよう。とくに、途中駅から乗車する場合には、座れないことも多いので、必ず座れるようにして作業にとりかかろう。
これらの列車では、テーブルが備えられていることも多い。そのテーブルを使用してノートに書き物をすることもできれば、パソコンを置いてさまざまな作業をすることができる。その際に、考えるべきは作業時間の割りふりだ。乗車時間のすべてを作業に費やすのはもったいない。例えば新大阪から東京まで2時間30分程度だとしよう。そのうちの1時間を作業に費やし、仕事を片付ける。残りの時間で車内販売のコーヒーを飲み、リラックスする。固いアイスクリームを食べてもよい。そうしてリフレッシュして、英気を養うのも大切なことだ。
電源の確保
東海道・山陽新幹線のN700系以降の車両をはじめ、車内にパソコンやスマートフォン・携帯電話の充電用のコンセントを備えているものが増えてきた。グリーン車では通路側の座席にもコンセントがあり、普通車では窓側の座席にコンセントがあることが多い。指定席の予約をするときには、なるべくならば窓側に席を確保しよう。今後は、普通車でも全席コンセントの車両が増えていくだろう。
私鉄の着席型通勤ライナーでも、コンセントがある車両が増えてきた。たとえば西武鉄道の「S-TRAIN」では、2人がけ席の窓側や、3人がけロングシートのひじかけの下にある。新しく登場する京王の着席型通勤ライナー車両5000系にも、コンセントの設置がある。
もっとも、コンセントの有無を気にせず電源を使用したいというのならば、モバイルバッテリーを持参したほうがいいかもしれない。また、パソコンの場合はバッテリーが長持ちするようになっているので、東京~新大阪間などの一般的な移動ならば、気にすることはないのかもしれない。
公衆無線LAN、データ通信の問題
東海道新幹線や、一部の私鉄有料特急、通勤ライナー車両では公衆無線LANが使用できる。たとえば先ほどと同じ西武鉄道の「S-TRAIN」では、無料で使用できる公衆無線LANが備えられている。東武特急「リバティ」にも、そういった設備がある。
なお、東海道新幹線の公衆無線LANは通信速度が遅く、かつどこかの公衆無線LAN事業者のユーザーでないと利用することができない。
公衆無線LANではなく、スマートフォンのデータ通信を使用するという手もある。この場合、とくにテザリングでパソコンとつないでいる場合には、接続時間は最小限にしたい。スマートフォンよりもはるかにデータの量が多いからだ。
新幹線では、かなりの区間でトンネル内でもデータ通信を使用することができる。都市部の地下鉄でも可能だ。こういったデータ通信と公衆無線LANを上手に活用して、クラウドサービスを使いこなすこともいまは必要となっている。
座ることを第一とし、そこで作業をスムーズに済ませることを考える。その補助的な手段として、電源や公衆無線LANがある。なくても別の手段で解決できそうなものは、そちらを使うのもよい。そのあたりを工夫して、列車の乗車時間で仕事をさくさくと片付けていこう。
著者プロフィール: 小林拓矢
1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。フリーライター。大学在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道、時事社会その他についてウェブや雑誌・ムックに執筆。単著『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に共著者として参加。
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