仕事で疲れた、と思うこともこの時期には多いはず。近くには年末があり、もうしばらくすると年度末がやってくる。帰りの電車くらいは座って、ゆっくり缶ビールでも飲みながら帰りたいと考えるのではないだろうか。

  • ビジネスパーソン必見の鉄道活用術

そんな人には、運賃にちょっとだけ上乗せすれば乗れる、JRの普通列車のグリーン車や、各社通勤ライナー、特急列車をおすすめしたい。

期待の新星、京王5000系などの座席指定列車

2018年春より、京王電鉄では新型車両・5000系による座席指定制列車の運行を開始することになった。この車両は、ふだんはロングシートで運行するものの、座席指定制列車での運行の際には進行方向向きのクロスシートに転換し、ゆったりとした乗り心地で座って帰ることができる。筆者は試乗会で乗車し、走りのなめらかさと座席の座り心地のよさ、車内の静粛性には驚かされた。この快適さが、京王八王子や橋本などへの遠距離通勤者をリラックスさせながら、家路につかせることになるのだろう。

同様の列車は、西武池袋線や東武東上線ではすでに運行されている。東京メトロ有楽町線の豊洲から西武池袋線の所沢に向かう「S-TRAIN」は、やはり京王5000系と同じく、ロングシートとクロスシートを転換させる車両となっている。東京メトロでは有楽町・飯田橋のみの乗車となっており、西武池袋線の石神井公園から人を降ろしていく。指定席料金は510円だ。ネット予約も可能だ。この列車の特徴は、都心で働くビジネスパーソンをダイレクトに座らせ、そのまま住宅地の最寄り駅へと送り届けることである。

また、東武東上線池袋駅からは「TJライナー」が小川町・森林公園へと向かう。着席整理券は310円。この列車もネット予約も可能だ。

ふだんは通勤列車に使用されているこれらの車両が、座席を進行方向に向け、仕事で疲れた人々をゆったりと乗せる。これで疲れをリフレッシュさせることもできるだろう。

他にも、優等列車にクロスシート車を投入している京急電鉄も、「京急ウィング号」を走らせている。運賃に300円をプラスすることで乗車できる。

本格派、特急による帰宅

私鉄によっては、特急で帰宅できるところもある。本格的なサービスを受けられるのが小田急の「ロマンスカー」だ。ネットで予約も可能、車内販売がある場合もあり、くつろぎながら帰ることができる。しかも本数も多い。 京成電鉄でも「イブニングライナー」を京成成田まで本線を走らせ、西武鉄道でも新宿線・池袋線で特急列車を走らせている。また遠距離客が特急のメイン客である東武鉄道でも、「アーバンパークライナー」という、東武アーバンパークライン(野田線)に乗り入れる帰宅客向け特急がある。 これらの特急は、定期券を持っている人が特急料金を別に払えば、乗ることができる。リフレッシュするか、じっくり翌日の仕事のことを考えるか……利用法はさまざまだ。

選択肢あふれるJR

JR東日本の場合、選択肢はあふれている。特急車両などを使用した「湘南ライナー」「ホームライナー」「中央ライナー」「青梅ライナー」、普通列車グリーン車、そして定期券使用可能な特急。多くの人になじみが深いのは、首都圏各地を走る普通列車グリーン車である。Suicaなどの交通系ICカードでチケットレス乗車すると、割安になる。座席にもテーブルがあり、食事をすることや、パソコンを開いて作業をすることもできる。

「ホームライナー」などの座席指定列車はライナー券510円が必要である。普通車は自由席だが、着席保証がある。

そして、定期券でも乗車できる特急もある。帰宅者を主なターゲットにした特急に、「スワローあかぎ」というのがあるくらいだ。常磐線の「ひたち」「ときわ」では、自由席定期券に自由席特急券の代金を追加すれば、自由席に座ることができる。中央線の特急「あずさ」「かいじ」でも同じだ。

一方、定期券で特急に乗る場合は、気をつけなければならないことがある。寝過ごしだ。とくに、22時45分東京発の「かいじ123号」に乗車する場合、寝過ごして甲府まで行ってしまったら大変なことになる。甲府着は、0時40分。もちろん、戻れる列車はない。

こういったことは、着席できる列車ならどんな列車でも起こりうる。降りる予定の駅までにはしっかりと目を覚まして、自宅に帰ろう。

著者プロフィール: 小林拓矢


1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。フリーライター。大学在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道、時事社会その他についてウェブや雑誌・ムックに執筆。単著『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に共著者として参加。

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