東京都では「時差Biz」と題し、働き方改革の一環として、通勤ラッシュ回避のために通勤時間をずらす「時差通勤」を推進している。時差通勤が可能な会社なら、時差通勤で少し楽な時間帯に通勤してみるのもいいかもしれない。まずは鉄道会社の取り組みの中から役に立ちそうなものを紹介しよう。
鉄道会社が促進する時差通勤
鉄道会社としても、混雑時に一気に人が集中するのではなく、まんべんなく混雑している方がありがたい。そういう状況の中で、都のキャンペーンが行われている。
「時差Biz」の公式サイトによると、鉄道会社の取り組みの中に、実際に時差通勤の促進に役立ちそうなものと、そうではないものがある。では、通勤をする人の役に立ちそうなものを見てみよう。
例えば、西武鉄道では、平日朝ラッシュ時よりも早い時間に、特急「レッドアロー」を運行している。これにより朝から座って通勤することができる。早く起きて、ゆったりとした通勤をするというのは、特急車両を有している西武ならではのものである。東武鉄道もまた、新型特急車両「リバティ」により「スカイツリーライナー」「アーバンパークライナー」を運行している。このほか、京成電鉄も特急車両を運行している。
だが、お金がかかる特急はどうも、それよりも利用者の得になるものはないのか、という声もあるかもしれない。そんな人はこちらを参考にして頂きたい。
まず、京王電鉄では、時差Biz期間には「楽・得・通勤キャンペーン」と題し、始発列車から朝7時30分までに新宿・渋谷着か、9時から10時30分までにやはり新宿・渋谷着で着駅の専用端末にタッチすれば、ポイントをもらえるというサービスを行った(ただし、京王パスポートカードとPASMOを持っている人が対象)。
さらに、東急電鉄は田園都市線に臨時特急列車「時差Bizライナー」を運行。小田急電鉄は複々線の完成により、利便性を向上させるとしている。
鉄道会社によって時差通勤への取り組みはさまざまである。ただ、ダイヤに余裕のない鉄道会社ほど、利用者に負担にならず、それでいて利用者に還元するようなサービスをしている。
時差通勤おすすめの路線は?
どの路線の人が時差通勤をおすすめしたいか。それは、複々線もしくはそれに類するものがない路線である。
たとえば中央線だ。三鷹より東京寄りにしか複々線のない中央線は、ラッシュ時にはスピードが遅くなる。こういった路線では、早く出勤して仕事に取り組むというのも考えたくなる。
あるいは東急田園都市線だ。混雑がひどく、しかもラッシュのピーク時には「準急」となり、渋谷駅より手前では各駅停車だ。なお、「準急」がないころよりもダイヤに乱れがないという効用もある。
とくに時差通勤をおすすめしたいのは、京王線だ。ピーク時には特急や準特急の運行がなく、急行や快速でも昼間よりもはるかに時間がかかる。こういった路線では、楽に、スピーディーに通勤すべく時差通勤をするのがよい。
どんな働き方の人が時差通勤をすべきか?
といっても、すべてのビジネスパーソンが時差通勤をできるわけではない。就業時間が厳格な勤め先の人は、時差通勤への関心が低いだろう。とくに、早い時間の出社を残業代として割増で請求することのできない会社では、早く出社しようというモチベーションもないと思われる。一方で、仕事を多く抱える人で、勤め先の早朝出社が残業代としてつく会社は、ぜひ時差通勤をすべきである。
また、最近ではフレックスタイムの職場も多い。こういった職場に勤めている人は、早い時間に出社する時差通勤をおすすめしたい。もちろん早く帰る。ただし、上司や同僚が早い時間に帰ることに冷たいまなざしを向ける会社では、難しいのだが。裁量労働制が正しく運用されている会社ならば、積極的に通勤時間帯をずらしていくことが可能だろう。
時差通勤をするためには、ふだん使用している鉄道のダイヤがどのようになっているのか、時差通勤に使える列車にどんなものがあるのかを調べるのに加え、会社の働き方の制度や、それに対する上司や同僚の反応などを加味して、総合的に判断したい。
著者プロフィール: 小林拓矢
1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。フリーライター。大学在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道、時事社会その他についてウェブや雑誌・ムックに執筆。単著『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に共著者として参加。
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