出張の際に、距離によっては新幹線か飛行機かを選ぶのが悩みだ、ということもあるだろう。東京からだと、福岡や札幌は飛行機となるのだが、青森や広島だとどちらを選ぶのか、難しいこととなる。大阪だと、飛行機もあるがほとんどの場合新幹線だ。新潟や仙台のように、新幹線が航空路線を駆逐してしまったところもある。

いま、その悩みでもっともホットな地域が、北陸地方だ。石川県の小松空港や、富山県の富山空港は、新幹線と飛行機のたたかいの最前線であり、時間を考えるとどちらを選んでもいいように思える。では、どちらを選ぶべきか。

アクセス時間を考えると、互角の所要時間

新幹線と飛行機、どちらを選ぶかは、新幹線での移動時間がおおよそ4時間程度かが境目となる。東京からでは、新大阪までは2時間33分、広島までが3時間58分、新青森までが列車によって違うが2時間59分程度、金沢まではやはり列車によって違うが2時間30分程度。これらの地域が、新幹線と飛行機の乗客の奪い合いが激しい地域であり、そして新幹線が勝っている地域である。

一般的に、この場合は新幹線での移動をすることが多く、会社からも新幹線での移動を指定されることが多いだろう。

新幹線の場合、都市中心部か、市内へのアクセスのよい場所に駅があり、降りてすぐに仕事にとりかかることができる。一方飛行機では、そうはいかない。

スムーズな仕事をさまたげる飛行機の「待ち時間」

飛行機の場合、たいていの空港は都心から少し離れた場所にある。とくに広島空港は、約50分かけて市内中心部までバスで移動する必要がある。アクセスが、必ずしもいいわけではないのだ。また小松空港も金沢市内までは40分かかる。

それに加えて飛行機は、搭乗前に手続きや手荷物検査を行い、遅くても出発の30分前には空港についていないといけない。さらに飛行機を降りるのにも時間がかかり、荷物の受け取りもすぐにはできない。

そのあたりを考えると、荷物を持って1分前にホームに来ても乗車することができ、ネット予約などの普及で予約変更が可能な新幹線のほうが有利なのは、しかたがないことである。

新幹線はなぜビジネスに使えるのか

新幹線、とくにネット予約が普及した現在の新幹線は、直前まで予約変更が可能ということもあり、予定の変更(とくに遅れ)が多いビジネスの場合には、使いやすい乗りものである。

筆者も出張の際には、帰りの時間がわからないことも多く、帰る直前にきっぷを買ったり、ネット予約したりすることができる新幹線を、大変便利に使用している。新幹線の場合、一般に飛行機よりも安いだけではなく、割引のパターンも非常に少ないので、あまり深く考えずに乗ることができる。もちろん、搭乗手続きなどを行う必要もない。改札を通るだけだ。

さらに新幹線は、飛行機に比べてはるかに多い座席を供給している。1,000人をはるかに超える座席数を東海道・山陽新幹線の16両編成の列車は持っており、飛行機4機以上にはなるだろうか。そういった点から考えても、おそらく座れるだろうという見通しを持ちやすいことも、新幹線のメリットである。

飛行機では、割引などを駆使し早めに座席を埋めようとするため、直前に空港に行ってもどうにかなるものではなく、空港に行って席がなかったとなったら、帰れないという事態も発生する。融通がきかないのが、飛行機の弱点であり、ビジネスには使いづらいという理由にもなっているのだ。

あえて飛行機を使う場合

しかし、飛行機を選ぶ人もいる。以前筆者が、大阪の豊中市にキャンパスのある大学の先生とTwitterでやり取りした際、その先生が東京で仕事をする際、新幹線で帰らず飛行機で帰るとつぶやき疑問に思った。聞いてみると、伊丹空港(大阪国際空港)への最終便は時間が早く、それに乗るということを示すことで懇親会などに参加しなくてもいいということだ。伊丹空港は、21時までの運用時間となっており、そのぶんだけ早い時間に最終便が羽田空港(東京国際空港)から出発する。

逆に考えると、時間の予定をかっちりと決めたい場合、あるいは遅くまで出張先にいたくないという意志を示しにくい場合、チケットの確保や時間変更の制限が厳しい飛行機を利用するという手段もある。

出張には、この文章で挙げたような場合は新幹線が便利だ。基本的には、新幹線を使おう。しかし、飛行機の不便さを逆手に取った裏技もあることも、心のどこかに置いておいてもいいだろう。

著者プロフィール: 小林拓矢
1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。フリーライター。大学在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道、時事社会その他についてウェブや雑誌・ムックに執筆。単著『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に共著者として参加。

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