本連載の第88回では「ビジネスにおいては「答え」より「問い」が大事と心得よう」と題し、与えられた問いに対する答えを真剣に考える前に、そもそもその問い自体が適切かどうかを考えることの方が重要な理由をお伝えしました。今回も引き続き「問い」にフォーカスし、目標を達成するために活用するための方法をお話します。

上司や部下、同僚、あるいは取引先などに問いを投げかけるのはどのようなときでしょうか。部下から上司への問いであれば、仕事の進め方で分からないことがあったときや難しい顧客への対応に戸惑ったときなど「自分ではどうすべきか判断がつかない事態を打開するため」に問いを投げかけることが多いのではないでしょうか。

部下に対する問いであれば、仕事の進み具合や困ったことが起きていないかの確認など「部下に依頼した仕事がスムーズに進んでいるかどうかを聞いて、適切にアドバイスするため」に問いを活用するケースなどが考えられます。

これらのケースに加え、同僚や取引先に対する問いにおいても言えることですが、問いを投げかける目的は、抽象化すると「自分が持っていない情報を相手から聞き出す」ために活用するというのが最も一般的なのではないでしょうか。

しかし、「問い」が持つ力は相手から情報を引き出すことに留まりません。シチュエーションによって様々な力を発揮しますが、ここでは「目標達成」のための問いの使い方をご紹介します。

問いを使って目標を達成する

そもそも問いというのは自分以外の人に対してではなく、自分自身に投げかけることもあります。では、自身に問いを投げかけるのはどのような場合でしょうか。このケースにおいて私が最もよく使うのは「目標達成」を目的とするときです。

では「目標達成」に問いを活用するというのはどういうことか、具体例で考えてみましょう。仮にあなたが営業担当者だったとします。あなたはこれまで必死に努力してきたものの、このままでは売上目標の達成が難しい状況です。既に精一杯の努力はしているのでこのまま同じことを頑張っても見通しが立たないということで、ここで一度立ち止まって対策を考えることにしました。ここで最初の問いを立てます。

例えば「そもそも自分は商品購入の意思決定者にアプローチできているのだろうか」という問いを立ててみます。答えがNoなら次は「なぜ意思決定者にアプローチできていないのか」という問いを立てて考えてみます。一方、先ほどの答えがYesなら「意思決定者にアプローチできているのに成約に至らないのはなぜか」と考えてみます。こうやって問いを次々に立てて分析していくことで発生している問題の原因を深堀りして、どこに焦点を当てて対応すべきかを特定することができます。

ただし原因分析が完了してもまだ終わりではありません。今度は「では自分はどうすればよいか」という対応策を考えなければなりません。そして、対応策を考える際にも問いを活用します。

例えば先ほどの問いに答えた結果「自分はそもそも商品購入の意思決定者にアプローチできていなかった。なぜなら訪問件数の実績を増やすために、営業先では話しかけやすい入社間もない若手社員にばかりアプローチしていたからだ。」といったことが明らかになったとします。

そこで今度は「ではどうすれば意思決定者にアプローチできるのか」という問いを立てて答えます。ここでは「これまでにアプローチして関係構築した客先の若手社員から意思決定者を紹介してもらうにはどうすればよいか」という、これまでの行動の結果得た資産を活用するための問いや「そもそも意思決定者と会うためにはどういう方法が考えられるのか」といったアプローチの選択肢を一から考えるための問いなどがあります。

このように原因分析の結果を基にしつつ、対応策を考えるための問いを自ら立てて答えていくことで最終的に「目標を達成するために自分は何をすべきか」という行動を明らかにしていくのです。

なお、目標達成のために自分で問いを立てて考える際にやっておくとよいことが3つあります。1つ目は「ノートやパソコンなどを用いて、自分で立てた問いと答えを記述しながら考えること」です。それによって自分の考えを客観視できる上に、後から見直すこともできるのでお勧めです。

2つ目は上司や同僚などに、自分で出した問いと答えを説明して意見をもらうことです。それによって自分だけでは気がつかない重要なポイントの見落としや論理的な誤りを防ぐことが期待できます。

そして3つ目は結果の検証です。問いを用いて原因分析と行動策定をした結果、仮に目標達成できたとしても、その反対に残念ながら目標未達に終わったとしても、後から振り返って自分が立てた問いや答えが適切だったかを振り返って批判的に検証することは、今後の目標達成に向けた思考のプロセスを洗練することにつながります。

自分自身で問いを立てて答えを考えることは目標達成に向けて有効な手段です。ぜひご自身の目標を達成するために活用してみてはいかがでしょうか。