本連載の第83回では「リモートワークに不可欠な「覚悟」とは何か」と題し、リモートワークの環境下で仕事を円滑に進めるために上司と部下が持つべき「覚悟」についてお伝えしました。今回はリモートワークをベースとした業務についての考察をお話します。
既にご存知のとおり、新型コロナウイルスが猛威を振るう中で緊急事態宣言が発令されました。企業もリモートワークの推進による出勤者の7割減を求められていますが、一部の企業を除いて、非現実的だと冷ややかに捉えているところが多いのではないかと推察します。
緊急事態宣言は2月7日までの期間ということになっていますが、足元の感染拡大ペースを考慮すると本当にこの短期間で収束できるかは予断を許さない状況です。また、仮に収束に向かって宣言が解除されたとしても皆が毎日オフィスに出社するコロナ前の社会に完全に戻ることはないでしょう。
そう考えるとリモートワークを一過性の感染対策として捉えるよりも、これを機にリモートワークをベースにしつつ「必要な時に必要な人が必要な時間だけ」出社するスタイルに転換することを真剣に検討した方がよいのではないでしょうか。
ではリモートワークをベースとした業務とはどのようなものでしょうか。イメージを持って頂くために筆者が前職の会社員時代にやっていたリモートワークの働き方の例をご紹介します。
【リモートワークをベースとした働き方の例】
9時〜13時
クライアント先から最寄りのサテライトオフィスにて、午後の打合せで使用する資料を作成。自宅にいるプロジェクトメンバーからメールで送られてきた資料を確認し、チャットで修正を指示。なお、サテライトオフィスはフリーアドレスになっているので好きな席で作業します。
13時〜14時
混雑する時間帯を避けて遅めのランチに出かけ、そのままメンバーと合流してクライアント先のオフィスに移動。
14時〜15時
クライアントとの打合せ。紙の資料はないのでプロジェクターで資料を投影してプレゼンし、そこからディスカッションへ。メンバーはリアルタイムで議事録を作成。
15時〜16時
クライアント先から近くのカフェに移動し、メンバーが作成した議事録の内容を確認して打合せで使用した資料と共にクライアントに送付。プロジェクトメンバーにその後の作業を指示して解散。
16時~17時半
再びサテライトオフィスに赴き、別のクライアントへの提案に関する打合せを東京の本社にいる営業担当者、千葉にいるシステム担当者と電話会議で実施。終わり次第、会議の内容を基に提案書を作成。17時半に帰路に就く。
もちろん日によって異なるものの、前職では大体このような働き方をしていました。既にお気づきかもしれませんが、この日は一度も本社に出社していません。これは特別な日だからというわけではなく、本社に用がない限りは出社しないのが普通でした。
また、サテライトオフィスにしても偶然クライアント先の近くにあり便利だったから使っただけで、自宅の方が近ければわざわざ行くことはなかったでしょう。つまり、業務を行う上で最も都合の良い場所をその都度選択して働いていたということです。
このような話をすると、「うちの会社は全社員が本社にいるから、コミュニケーションの取りやすさを考えるとやはり本社に出社した方が仕事が捗る」と主張される方もいらっしゃるでしょう。しかしよく考えてみると、その主張は「全社員が本社にいる」という前提ありきのものです。現在の緊急事態宣言下は言わずもがな、コロナ禍が去った後であっても「全員が本社に出社する」という状況に戻ることは考えにくいのではないでしょうか。
それならばいっそのこと、各々の社員がその時々に合わせて最適な場所を選んで働けるようにするのが得策と考えます。さらに、そのメリットは単に業務効率上の話に留まりません。
例えば幼い子どもがいる社員で本社への通勤時間が片道1時間以上かかるような場合には、保育園への送迎のために時短勤務を強いられているかもしれません。しかし在宅勤務を含むリモートワークをベースにしてしまえばフルタイムで働けるようになり、その社員にとってはもちろんのこと会社にとってもリソースをフル活用できるのでメリットが大きいでしょう。
また、家庭の事情などで地方にある実家の近くに移住せざるを得なくなった社員や体調面に不安があって朝晩の通勤ラッシュが耐え難いと感じている社員にとっては、リモートワークをベースとすることで離職を考え直すきっかけになるかもしれません。
確かにリモートワークは一朝一夕には上手くいかないかもしれません。その一方、どうせこの先リモートワークが社会に浸透していくのならばそのメリットを最大限に活かすことを目指してリモートワークをベースとした業務に転換することを検討してはいかがでしょうか。