本連載の第81回では「リモートワークでやってはいけない4つのこと」と題し、リモートワークを失敗に導く4つのことをお伝えしました。今回も引き続きリモートワークに焦点を当てて、上司から過度に干渉される場合に部下が取るべき対応についてお話します。
ここ最近でリモートワークを導入した企業の中には、新しい働き方に慣れていない上司がやたら頻繁に進捗を聞いてきたり、場合によってはWeb会議でカメラをオンにした状態で仕事をするよう求めてきたりケースがあると聞きます。
このように過度に干渉されるのは大変ストレスフルなのでやめて欲しいと切実に思っている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、「頻繁に仕事をしているかどうかを確認されたり、進捗を聞かれたりするのはストレスが溜まるのでやめてください」と上司に伝えても上司が一向に首を縦に振らず、事態が改善しない場合もあるでしょう。
この場合には、「上司の行動によって自分が如何にストレスに感じているのか」を必死で訴えてもあまり効果はないかもしれません。それよりは、そもそもなぜ上司がこれほどまでに干渉してくるのか、その原因を踏まえて対応する方が得策です。
ではなぜ上司はリモートワークをしている部下の様子を頻繁に確認したがるのでしょうか。それはシンプルに「不安」だからと推察します。このような上司は、部下がしっかり仕事をしているのだろうか、進捗に遅れは出ていないだろうか、何か問題が発生して困ってはいないだろうか、精神的に参ってないだろうか、といった不安を抱えていると考えられます。そのため、こうした不安を払拭するために過度に干渉してくるというわけです。
ではどのように対処すればよいでしょうか。ここでは4つの対処法をご紹介します。
1. アウトプットを見せて成果を報告しよう
リモートワークでは部下が何をしているのかが見えないので、部下がやるべき仕事を本当にやっているかどうか上司が不安になったとしても、それは当然かもしれません。そこで、サボらずに仕事をしているかどうかが心配で頻繁に連絡を取ってくるのであれば、逆にこちらから積極的にアウトプットを見せたり成果を報告したりして安心させるとよいでしょう。
資料作成が完了したら、上司から要求される前に送付して見てもらったり、顧客へのアポを取ったらすぐに報告したりといった具合に、「この資料を作りました」「〇〇社のアポが取れました」とすぐに伝えてしまうのです。上司から聞かれるまでもなく自ら情報発信してくれる部下であれば「ちゃんと仕事をしているだろうか」といった不安は解消されるでしょう。
2. スケジュールを共有しよう
上司が部下に対して「リモートワークだからといって、さすがにサボっているということはないだろう」と思っていたとしても、だからといって全く不安がないかといったらそうとは限りません。部下が仕事を如何に真面目にやっていたとしても、そのことと仕事が納期に間に合うかどうかは別問題です。そのため、特に経験が浅い部下の場合には進捗に遅れがないか心配するのも無理はありません。
そこで、部下としては予め、自分が抱えている仕事の納期に加えて月単位、週単位、日単位で何の仕事をやるのかというスケジュールを作成して上司と共有しておくことをお勧めします。そのスケジュールを見せることで上司が「このスケジュール通りに仕事をこなしていけば納期には間に合うはず」と思えば一安心ですし、その部下から共有されたスケジュールに無理があれば、その時点で修正させられるのでやはり安心できるでしょう。
さらには仕事がスケジュール通りに進んでいるのか、遅れているのかといった進捗状況を始業時と終業時、或いは2時間置きなどご自身の仕事の特性に合わせたタイミングで逐一、自分から報告すると宣言し、実践するとよいでしょう。それによって、上司としては進捗の遅延があってもいち早く把握して早めに対応することができるので安心して任せることができます。
3. 困ったときはすぐに状況を伝えよう
上司の中には「部下がトラブルの発生で困っていても相談できずに困り果てているのではないか」という心配をする方もいるでしょう。特に部下が控えめな方であればなおさらです。「部下が困っているのであればすぐに助けたい」という優しい方ほどリモートワークをしている部下のことが不安になって過干渉に至ってしまう傾向があると考えられます。
そうであれば、部下として取るべき行動は2つあります。1つは予め「困ったらすぐに状況を報告します」と宣言することで、2つ目はそれを実践することです。なお、ここで気を付けるべきことは、仕事でちょっと分からないことがあったからといって何も考えずにすぐに上司に答えを聞かないようにすることです。それはそれで今度は上司から煙たがられるでしょうし、何より自分自身の成長に繋がりません。
重要なのは「問題が発生した」という状況を迅速に伝えることです。その上で「まだ時間に余裕があるから部下にじっくり解決策を考えさせる」のか「余裕が全くないからここは上司が一旦預かるのか」といった判断は上司がすべき仕事と捉えましょう。
また、「困ったことがあったらすぐに報告します」と伝えたとしてもそれを実践に移さなければ、やはり上司からの信頼は得られません。少しでも仕事に影響を及ぼす恐れのある事象が発生したら迷わずに宣言通り、報告するようにしましょう。
4. 何らかの不調があったら率直に伝えよう
オフィスにいれば出勤時に部下と直接コミュニケーションが取れるので、その際に「部下の体調が悪そうだ」とか「元気がないように見えるけれど、何かあったのだろうか」といった不調を察するのはそう難しくはありません。
しかしリモートワークではそうはいきません。たとえWeb会議で話していたとしても対面と比べれば顔色もよく分かりませんし、そもそもWeb会議がなければ体調がすぐれなくても気が付く術がありません。
心配性な上司であれば、部下がリモートワークでも心身ともに疲弊しているのではないかと不安に感じていてもおかしくはないでしょう。このような不安が基で上司から過度に連絡を取ってくるということに心当たりがあるという方は、毎日始業時にその日の予定と共に一言、自身の体調を上司に伝えるようにするとよいでしょう。
部下から「今日もばりばり働きましょう!」とか「今日はあまり体調が良くないのでレスポンスが若干、遅いかもしれません」などと先手を打って伝えておけば、上司は部下の体調を把握することができるので多少なりとも安心できるでしょう。
以上見てきたように、部下に対して過度に干渉してくる上司がいる場合には、上司が「なぜそのような行動をするのか」を分析し、その原因に応じて適切に対処しましょう。本稿の内容がそのためのヒントになれば幸いです。