本連載の第233回では「会議の内容をその場で可視化して議論を整理しよう」という話をお伝えしました。今回は、会議での議論の質にも大いに関係する「論理の飛躍」についてお話します。

ビジネスの世界では、論理的な思考が重要です。しかし、時には「論理的な飛躍」が発生し、誤った結論に陥ることがあります。特に情報過多な現代では、論理的な誤りが生じやすい傾向にあります。そこで、論理的な飛躍についての議論を整理しつつ、ビジネスパーソンが日常で遭遇するであろう、会議、資料作成、プレゼンテーションのシーンでの「論理的飛躍」について考えてみましょう。

「論理的な飛躍」を理解するための4つの問い

ビジネスシーンでの「論理的な飛躍」を深く理解するために、以下では4つの問いについて考察します。

1. 論理的な飛躍とは何か

そもそも論理的な飛躍とは何でしょうか。それは議論や推論の過程で、根拠や中間の論理的ステップが不足しているために、結論が前提から直接的に導かれない場合を指します。これにより、結論が不合理または不適切に見えることがあります。有名なことわざで、「風が吹けば桶屋が儲かる」がありますが、これは「風が吹く」ことと「桶屋が儲かる」ことの因果関係が示されない限り、論理的に飛躍していると捉えられてしまうでしょう。

2. 論理的な飛躍はなぜ発生するか

論理的な飛躍は、情報の不足、誤解、先入観、あるいは複雑な問題に対する単純化の試みなどによって発生します。また、感情や偏見に基づいて急いで結論に至ることも、論理的飛躍の原因となります。

3. 論理的な飛躍に気が付くために何が必要か

批判的思考力と論理的思考力が必要です。議論の各ステップを慎重に分析し、前提と結論の間のつながりを評価する必要があります。また、議論の根拠や証拠が何かを納得がいくまで問い続ける姿勢も重要です。さらに、論理的なつながりを図式化してみると、論理的な飛躍や破綻に気が付きやすくなるのでお勧めです。

4. 論理的な飛躍の発生を防止するために何が必要か

全ての議論や結論において根拠は何かを徹底的に追及し、十分なデータと証拠に基づいて意思決定を行う文化を育むことが重要です。また、組織の観点からは透明性と開かれたコミュニケーションを促進し、多角的な視点からの意見や考察を歓迎することも効果的です。

論理的な飛躍の具体例(会議での議論における例)

1. 会議での議論

会議では多くの意見が交わされますが参加者に論理的思考が苦手な人がいる場合には、論理的な飛躍の温床になり得ます。例えば、会議で自社商品の売上が減少している、という報告を部下から受けて即座に「市場戦略が失敗しているからだ」と断定するシーンです。よく考えてみると、売上減少の原因は市場戦略だけではないかもしれません。商品の品質や競合他社の動向、クレーム対応、物流の停滞など、考慮すべき要素は数多くあります。ここで大切なのは、一つの結論に急いで飛びつかず、多角的に問題を検証することです。

2. 資料作成

資料作成においても論理的な飛躍は起こり得ます。例えば、ある製品の売れ行きが良いからといって、それが市場全体での成功を意味するわけではありません。ここで注意すべきは、一部のデータを全体の傾向と誤解すること。特定のデータを過度に一般化することなく、十分なデータ収集とバランスの取れた分析が必要です。

3. プレゼンテーション

プレゼンテーションは、自分のアイデアや提案を伝える重要な場です。しかし、ここでも「この戦略を採用すれば売上が必ず伸びる」といった断定的な表現は論理的飛躍の典型例です。これは、成功の保証がない未来の予測に基づいています。プレゼンテーションでは、可能性としての提案に留め、リスクや条件を明確にすることが重要です。

論理的な飛躍は、しばしば不確実性や感情に基づく早急な結論から生じます。これを避けるには、事実に基づく分析、複数の視点からの検討、批判的な自己検証が必要です。特に若手ビジネスパーソンには、論理的思考を鍛えることがキャリアの成功に不可欠です。論理的な思考は、学ぶことができるスキルです。日々の業務を通じてこれを磨き、さらなる活躍を目指していただければ幸いです。