本連載の第231回では「Power Automateで面倒な反復作業を自動化する方法」という話をお伝えしました。今回は、会議が白熱してもなぜか成果を出せない原因についてお話します。
意欲の高い人たちが参加して、熱い議論を交わしたのに会議が終わってから冷静になってみると「さっきの会議は大いに盛り上がったけど、何が決まったんだっけ?」と首をかしげてしまうことはありませんか。
このような状況は、一見すると会議が成功したように見える分、粛々と議題をこなしていくような盛り上がりに欠ける会議よりも、たちが悪いです。
では、盛り上がっている会議でも結果を出せないのはなぜなのでしょうか。もちろん、会議の目的や目標、論点が明確でない、あるいは共有できていないということも多分にありますが、それ以外にも「議論が可視化されていない」ということが要因になっている場合が少なくありません。
そもそも、「議論が可視化されていない」とはどういうことでしょうか。これは、リアルタイムで参加者全員が見える形で発言内容が共有されていない状態です。「ああ、それなら自分のところでは議事録を作成して、ちゃんとシェアできているから当てはまらない」とお考えの方もいるかもしれません。しかし、会議後に議事録を共有するのは「リアルタイムで」議論の内容を共有できていないので、これに該当しません。あくまでもリアルタイムでの議論の可視化と共有がキーなのです。
では、議論が可視化されていないとなぜ、結果を出せないのでしょうか。これには3つの理由があります。それを読み解くキーワードは「情報量」と「論理構造」です。以下では一つずつ見ていきましょう。
まず、「情報量」についてです。1時間の打合せで発生する情報量はどれだけでしょうか。人が聞き取りやすい速度で1分間に話すのは300文字と言われています。1時間、ずっと話続ければ18,000文字になります。もちろん、実際には沈黙の時間もあるはずですが、白熱した議論では話す速度が速くなることを考慮すると、1時間の会議で生じる情報量は、おおむね18,000~20,000文字といったところではないでしょうか。もちろん、2時間や3時間ともなると、時間に比例して情報量が増えますね。
それだけの情報量を口頭で聞くだけで処理しきれる方が果たしてどれだけいるでしょうか。つまり、ものすごく大量の情報が発せられると同時に消えていってしまうので、どうしても強く印象に残った情報や、自分が興味関心を寄せている情報などが記憶に残り、そのほかの情報はかたっぱしから忘れ去られてしまうのではないでしょうか。
そのため、もしその場で議事録を執っている人がいたら、完成した議事録を後から共有するのではなく、プロジェクターなどに議事録を投影しながら議論を進めるのがよいでしょう。
次に、「論理構造」についてです。考え方やスキル、経験、所属などによって会議の参加者間で意見が異なるのはもちろんのことですが、その主張の論理が複雑な場合や、論理展開が長かったりすると、発言者以外の人が主張の論理を正確に理解するのは困難です。特に議論が白熱してくると、複数の人が次々に新しい論理を投入してくるので、そのすべてを過不足なく捉えるのは至難の業です。
さらに厄介なのは、そもそも参加者の発言自体があまり論理的でない場合も多分にあるということです。そのような場合には「なんとなく、言わんとしていることはわかるような気がする」というくらいの理解でそのまま意見が採用されたり、却下されたりすることになります。これでは会議で必要な成果を出すべくもありません。
この場合、もちろん発言者の話の組み立て方に問題がないとは言えませんが、それ以上に会議での発言について、その主張がどのような論理構造を持っているかが可視化されていないことに問題があるのではないでしょうか。
複雑な論理構造や長い論理展開の話を、そらで理解できるという人はよほどの情報処理能力を兼ね備えている人に限定されます。仮に自分自身が理解できたとしても、参加者全員ができなければ会議を成功に導くのは難しいでしょう。
そのため、会議で話している人が何を話しているのか、という「情報量」をカバーするのに加えて、その「論理構造」をその場で可視化・共有することで、その場にいるだれもが同じように、会議で生まれる情報を正しく理解することができるのです。次週のコラムでは、そのための効果的な方法をお伝えします。ぜひそちらもご覧ください。