本連載の第203回では「若手ビジネスパーソンが知っておくべき『レジリエンス』とは?」という話をお伝えしました。今回は、今知っておきたい「クリティカルシンキング」についてお話します。

SNSの普及によって、現在は多くの情報が氾濫しています。しかし、その情報の中には悪意のあるフェイクニュースや信ぴょう性に乏しいものなど、気を付けなければならないものも含まれています。このような雑多な情報に惑わされずに生きていくには、ただ情報を集めるだけでなく、それを適切に分析し、意味のある結論を導き出すスキルが求められます。それがクリティカルシンキングです。

クリティカルシンキングは、単に情報を吸収するだけでなく、それを分析し、適切な行動を選択する力を意味します。たとえば企業のマーケティング戦略を立てる場合で考えてみると、関連する情報はきっと山ほどあるでしょう。消費者の行動、競合他社の戦略、市場の動向などです。しかし、その情報の全てが有益であるとは限りません。そのような時でもクリティカルシンキングの力があれば、目的とは無関係な情報を見極め、必要な情報だけを選び出すことができます。

これはクリティカルシンキングによる「情報の評価」です。ビジネスの世界で情報は通貨のようなものです。どの情報に価値があり、どの情報が信頼できるのかを判断する能力は、ビジネスパーソンにとって必須のものです。

また、クリティカルシンキングは複雑な問題の解決にも使えます。ビジネスの世界は複雑で、環境の変化に対応するための新しい解決策を見つける考え方は非常に有用です。たとえば新たな市場に参入する際、競合他社の動向、規制、消費者の嗜好など、多くの要素が絡み合います。それらを分解し、それぞれの要素を理解し、全体像を把握するためにはクリティカルシンキングが必要です。

さらに、自分自身の成長にもクリティカルシンキングが役に立ちます。成長のためには自分の視点や考え方、行動などに改善の予知があるかもしれないと認識し、それを再評価する必要があります。適度な自省によって自分の視野が広がり、新たなアイデアや視点を受け入れることができます。例えば、自社の製品が常に最高であるという考えに捉われていると、競合他社の製品が進化していることに気づかないかもしれません。自己の固定観念を検証し、客観的に自分と他者を比較することで、新たな戦略や改善点を見つけることができます。

それでは、クリティカルシンキングを身につけるためにはどうすればよいのでしょうか。以下にいくつかの方法を提案します。

1. 問い続ける

なぜそれが起こったのか、どうしてそれが必要なのか、どのようにしてそれが改善できるのか。常に様々なことを問い続けることで、物事をより深く理解し、新たな視点や解決策を見つけることができます。

2. 異なる視点を探求する

自分の視点だけでなく、他人の視点も理解することで、より全体的な視野を持つことができます。これはビジネスの問題解決において特に重要です。たとえば製品開発チームとマーケティングチームでは、同じ問題に対しても異なる視点を持つことがあります。その両方の視点を理解し、統合することで、より効果的な戦略を立てることができます。

3. 自省する

自分の考え方や行動、信念について定期的に考え直すことで、常に自分自身をアップデートすることができます。自分が間違っている可能性を認識し、自己の信念や前提を修正する勇気を持つことは、成長と進歩に不可欠です。

4. 思考を明確に表現する

クリティカルシンキングは、思考を効果的に伝える能力とも深く関連しています。明確で論理的な議論を構築し、それを他人に伝える能力は、ビジネス環境におけるコミュニケーションスキルを向上させます。たとえば新しいプロジェクトを提案する際、その背景、目的、実行計画、期待される結果などを明確に説明できると、他の人が理解しやすく、賛同しやすくなります。

5. 情報リテラシーの向上

情報を探し出し、評価し、適切に使用する能力は、現代の情報過多の世界で必須です。情報源の信頼性を評価し、情報を適切に解釈し、それを適切なコンテキストで使用する能力はクリティカルシンキングの一部です。例えば、新たな業界トレンドを調査する際、多くの情報がインターネット上にありますが、その全てが信頼できるわけではありません。情報の信頼性を評価し、適切な情報を選び出すことを意識しましょう。

これらの方法を用いてクリティカルシンキングのスキルを養うことで、仕事の質を向上させることができるでしょう。クリティカルシンキングは、自分自身のスキルと能力を最大限に引き出すための道具とも言えます。それはあなたが目の前の問題を解決するためだけでなく、自分自身の成長と進歩を促すための重要なスキルです。クリティカルシンキングを実践で活用していただけたら幸いです。