本連載の第191回では「既存の資料ありきで電子化しようとしていませんか」という話をお伝えしました。今回は情報の持ち方で業務効率が大きく変わるというお話をお伝えします。
皆さんの職場では、情報は一元管理されているでしょうか。
ビジネスで扱う情報には案件情報や契約情報、顧客情報、仕入先情報など数多くの種類があります。それらの情報が営業担当者のPCの中や紙のファイル、共有フォルダ、基幹システムなど至るところに散らばっているのだとしたら、そのことによって業務効率が下がっている恐れがあります。
以下では、情報の散在によって業務効率がなぜ低下してしまうのか、その理由を説明します。
1. 記入・入力・更新の手間が増える
B to Cの顧客対応をする架空の店舗の例で考えてみましょう。
手順1. 担当者が対面やメール、電話などでの顧客との最初の接点の都度、紙の受付票に顧客の社名と担当者名、受付日、自社の担当者名、ご依頼内容を記入します。
手順2. 担当者は一日の終わりに、当日作成した受付票の情報を集めて担当者ごとの案件管理一覧のエクセルファイルに入力します。
手順3. 課長が、担当者ごとに分かれている案件管理一覧のエクセルファイルを統合して内容を確認します。
手順4. 事務員が、統合された案件管理一覧のエクセルファイルを基に案件管理システムに入力します。
手順5. 事務担当は、案件が成立したら案件管理一覧のエクセルファイルと契約書を基に顧客管理システムおよび契約管理システムに入力します。
かなり煩雑ですが、このようなケースは珍しくありません。このケースでは、例えば顧客情報だけを取ってみても「受付票」、「(担当者別)案件管理一覧のエクセルファイル」、「(統合された)案件管理一覧のエクセルファイル」、「案件管理システム」、「顧客管理システム」、「契約管理システム」への記入や転記、入力が都度発生しています。同じ情報を何度も転記することになるので、その都度手間がかかります。仮に一回の記入や入力に3分かかっていたとすると、全ての資料やファイル、システムへの記入・入力にかかる時間は3分×6回 = 18分かかります。そして1店舗あたり1営業日につき100件、月に2,000件の顧客情報を扱うとすると、それだけで18分×2,000件 = 36,000分、つまり600時間/月かかる計算になります。
しかし、最初の受付票の時点で紙ではなくシステムに直接入力するか、共有スプレッドシートなどに入力してCSVファイルなどでシステムに連携できるようになっていれば、作業量を1/6に減らすことができます。つまり500時間/月の時間が浮くことになるます。もちろん改善効果は職場の内容や環境、作業者のスキルなどによって大きく異なりますが、大きな効果があるかもしれません。
2. 情報の整合性の確認と修正の手間が増える
情報の散在によって増える手間は記入や入力・転記に留まりません。同じ情報が複数の箇所に散らばっていると、「どの媒体の情報が正しくて、かつ最新なのか」が分からなくなってしまう場合があります。
同じ情報のはずなのに各資料やシステムの間で齟齬があることを発見したら、どう対応することになるのでしょうか。単純な転記ミスであれば受付票の情報を正として修正すればよいのですが、それにしても全ての資料やシステムの中で他にも誤っている箇所がないかを確認して、齟齬があれば修正する必要があるでしょう。
しかしもっと厄介なのは「どの情報が正か分からない」状態です。仮に誰かがいつの間にか顧客情報を「契約管理システム」上だけで最新版に更新したとします。その場合、「顧客管理システム」や各種資料との間で情報に齟齬が生じます。「契約管理システム」上で情報を修正した本人が異動や転勤などでいなくなってしまった後に誰かが齟齬に気づいた場合、「どの情報が正しく、かつ最新なのか」が分からなくなる恐れがあります。この場合、最新かつ正しい情報を特定するのにかなりの手間と時間を要することになるのは避けられないでしょう。
情報が散在している状態を放置するということは、このような手間と時間が余分にかかっているかもしれないということなのです。これを機に、ご自身の職場の情報の持ち方を総点検してみてはいかがでしょうか。