本連載の第187回では「最新のAI、ChatGPTの衝撃」という話をお伝えしました。今回も引き続きChatGPTに注目し、最新のAIチャットツールの普及を見据えて、ビジネスパーソンが今後身に着けておくべきスキルについてお話します。

"ChatGPT"とは対話型AIチャットボットで、日本語で何かを問いかけると極めて自然な日本語の文章で答えてくれる優れものです。その威力については「日本語が自然」、「構成が秀逸」、「曖昧な質問への回答が的確」という3点があります。これらについての詳細は前回のコラムをご覧ください。

さらにこの一週間の間に、ChatGPTを巡る大きなニュースがありました。「Microsoft、chatGPTのオープンAIに1.3兆円を追加投資か」というニュースです。この追加投資はまだ破談になる可能性もあるということですが、もし追加投資が決定したらChatGPTの発展と普及にとって追い風になることは間違いありません。

そうすると気になるのは、我々ビジネスパーソンの働き方や求められるスキルにどう影響するか、ということでしょう。それはAIチャットツールが今後、実際にどのような発展を遂げるのかによって変わるものではありますが、今のうちから将来を予測し、先手を打って準備しておくことは重要ではないでしょうか。

では、ChatGPTのようなAIチャットボットが普及した将来、私たちの仕事はどう変わるのかを考察してみます。

1. 知りたい情報の調べ方が変わる

皆さんは現状、何か知りたい情報があったらどうやって調べていますか。恐らくはGoogleやTwitter、Instagram、YouTubeなどで検索するケースが多いのではないでしょうか。これらのプラットフォームでは多くの人々が作成したコンテンツを検索し、ユーザーが求めていそうな情報を表示してくれます。筆者の感覚としては、求める情報そのものを過不足なく表示してくれる場合もありますが、「これは参考になるな」というレベルの情報を出してくれることが多いという印象です。

これはこれで大変役に立つのですが、調べたいことをドンピシャで教えてくれるものがあれば、その方が良いに決まっています。それを実現するのがAIチャットツールです。検索して表示された複数の類似情報を見比べて、その中から自分の求める情報をさらに探すのは手間がかかりますが、最初から的確かつ過不足のない回答を得ることができれば、それにこしたことはありません。そのため近い将来、情報を調べる際には「検索」より「問いかけ」が主流になるかもしれません。

2. 情報のコンテンツの作り方が変わる

現時点でも既に、ChatGPTに何かを問いかけるとかなり高い精度かつ自然な日本語で返答してくれますが、その精度や守備範囲の拡充が加速度的に行われることは容易に想像できます。

そうすると、「一から文章を書くという作業はAIチャットに任せる」ことが当たり前の世界になる日が来てもおかしくはありません。「そんなことはない。如何にAIチャットが優秀であろうとも、文章を書くという作業がAIチャットに取って代わられるはずはない」と反論される方が出てくるかもしれません。

しかし歴史を振り返ってみると、これまでにも技術の進歩とともに人間が行ってきた多くの行為が既にコンピューターに代替されてきました。かつて暗算や算盤でやっていた計算という作業が計算機に、そして後にExcelで代替されるようになったように、「文章を書く」という作業も計算と同じようにAIチャットに代替されることは何ら不自然ではありません。

代替される対象は、もちろん本稿のようなコラムの執筆も例外ではありません。これから先ほんの数年の内に、世の中に生み出される文章の大半が「実はAIチャットで作成されていた」という世界がやってくることはそう不思議ではないのです。

さらに、この波は当然、コラムのようなメディアに留まらず多くの職場にも波及していくでしょう。たとえば営業担当者の日報も、行動の計画と履歴のデータをインプットするだけで内容を分析し、綺麗な文章にしてくれるようになるかもしれません。人事担当者による新卒採用市場分析も元データさえ集めれば、立派な報告書を作成してくれるかもしれません。

このように「文章を書く」という作業はAIチャットに任せることが当然の世界になるとすると、「文章を書く」ことそのものより、そもそも「何を書かせるか」を考えることの重要性が増すのではないでしょうか。それはつまり「問いの質」が問われるということです。

以上見てきたように、情報の調べ方においてもコンテンツの作り方においても、AIチャットの発展・普及を見据えると、「問いを立てる」スキルこそが今後益々、重要になるのではないかと考えられます。本稿の内容が読者の皆様の将来にとって少しでもお役に立てば幸いです。