本連載の第181回では「DAO(分散型自律組織)で求められる振る舞いとは」という話をお伝えしました。今回はDAOから一旦離れつつも、これからの時代では今まで以上に「何が得意か」を求められるようになる理由についてお話します。
「あなたは何が得意ですか?」
ビジネスシーンで誰かに尋ねられた時に、あなたはどのように返答しますか。もし、「特にありません」とか「まあ大体何でもできますね」という返答をするようでしたら、これからの時代では活躍するのが難しくなるかもしれません。
円安に人手不足、サプライチェーンの混乱、資源高、自然災害、新型コロナウイルスなどなど、ビジネスを取り巻く環境の変化は激しくなる一方です。このような変化に対して多くの企業では素早く対応しようと奮闘していますが、変化を見誤ったり判断が遅れたりして危機的状況に陥る企業はこれから増えていくと予想されます。特に小回りの利かない大企業の中には変化に取り残されるところも少なからず現れるでしょう。
このような猛烈な変化に対応していくには、それに適した柔軟な体制が必要です。その極致にいるのがフリーランスです。なにせ自分一人しかいないので意思決定や行動のスピードにおいて他の組織より優位にあるのは当然です。
では皆がフリーランスとして個別に戦っていけばいいかというと、必ずしもそうとは言えません。個人で出来ることには限界があるので、何か大きなことをやろうとすればどうしても仲間との協力が必要になります。そのため、従来の株式会社のような組織を想定すると「物事を成し遂げるスピード」と「成し遂げようとすることの規模」がトレードオフの状態になると考えられます。
但し、そのトレードオフを打破できる可能性を秘めているのがフリーランス同士の緩い繋がりです。企業と社員の間での雇用契約などの厳格な契約などに縛られることなく、「成し遂げようとすること」を共有できる仲間を見つけて適宜協力していく緩い繋がりが今後の世界では重要性が増していくのではないでしょうか。
そのような状況を想定した場合、最初の一歩として志を同じくした仲間、即ち同志を集めなければなりません。そのためには自分が適任者を見つけて仲間になってもらうよう交渉するか、相手に自分を見つけてもらわなければなりません。そこで問われるのが冒頭に挙げた「あなたは何が得意ですか?」という問いに対する明確な答えです。
たとえば、あるプロジェクトを遂行する際に必要な人を見つけたとします。その対象としてキャラクターの絵を描くのが得意なクリエイターやブロックチェーンのテクノロジーに強いエンジニア、デジタルコンテンツの販売強化に長けたマーケターを見つけたとします。そして「仲間になって欲しい」と交渉しようとしても、「ではあなたは何が得意なのでしょうか?」と問われた際に「特にありません」とか「まあ大体何でもできますね」という返答をしてしまえば、相手は「この人は何をしてくれるのかな」と不安になってしまいます。
前者の回答は論外として、特に注意が必要なのが後者の「まあ大体何でもできますね」という返答です。「何でもできる」というのは相手からすると「何をしてくれるのかさっぱり分からない」と捉えられてしまっても致し方ありません。
仮にあなたが本当に、なんでも卒なくこなせるのだとしても「これが得意だ」というのを1つに絞って全面に押し出してアピールした方が、相手は「それならこの人の誘いに乗ってみるか」と思ってもらえる可能性が上がるでしょう。
そして、これは自分から積極的に仲間を探す場合と同様に、相手から自分を見つけてもらう場合にも同様です。先ほどの例では「キャラクターの絵を描くのが得意なクリエイター」や「ブロックチェーンのテクノロジーに強いエンジニア」、「デジタルコンテンツの販売強化に長けたマーケター」などと、「得意なこと」を指定して人を探しました。これと同様に、他の誰かが仲間を探す際にも当然、同じような方法を取るはずです。
その際に「得意なこと」が明らかになっていない人は見つけてもらえる可能性が下がってしまいます。もちろん、「なんでも得意」というアピールも相手のアンテナには引っかからないでしょう。
能動的に仲間探しをするにしても、受動的に自分を見つけてもらうにしても「自分は何が得意か」を明確にして、それをアピールし続けることが必要です。その際には得意なことについて、ある程度具体的に示すことと、その得意なことを裏付ける情報もセットにするとより効果的です。
個々人が協力して変化の荒波に立ち向かっていけるよう、ご自身の「得意なこと」を積極的にアピールしていきましょう。