本連載の第170回では「管理業務の負荷はこうやって減らす」という話をお伝えしました。今回は管理業務とも関連する、資料作成に関する負荷についてお話します。

経理や総務、人事などの事務系の職種の業務負荷の中で、特に重いのが資料に関連する負荷です。伝票や帳票、備品管理、勤怠管理、定例会議の資料、日報、月報などなど、作成する資料が何百もある職場も珍しくはないでしょう。

これらの資料は作成そのものに時間と労力がかかるだけではなく、一度作成してからも共有や更新、追記、保管、バージョン管理、さらには廃棄に至るまで様々な負荷が継続的にかかります。このような作成後にかかる負荷まで考慮すると、なんでもかんでも資料を作ってしまわないように歯止めをかけることが重要だということになります。

そのためにも新しく資料を作成する際には、それに伴って新たに発生するであろう負荷についても考えるべきではないかと思います。では新しい資料を作成すべきか否かはどのように判断すべきでしょうか。その判断をする上で押さえておきたいポイントについてご説明します。

1. その資料は何のためのものか

資料作成の作業をしていると、なんとなく仕事をしている気になってしまうのですが、本来は資料作成そのものに価値があるというわけではないはずです。作成した資料が何らかの目的を果たして初めて「価値を生んだ=仕事をした」と捉えることができるのではないでしょうか。

しかし、多くの職場には一体何のために作成されたのか分からない資料が存在していることが少なくありません。資料の作成者に尋ねても「上司から作成するよう指示があったから」とか「前任者から引き継いだから」というだけのものが結構な割合を占めていたりします。

そこで、新しく資料を作成する際には「それは何のための資料か」という目的を明確にするようにしましょう。その上で、明らかにした目的を達成する上で「その資料が不可欠かどうか」をさらに突き詰めるとよいでしょう。というのも、わざわざ手間をかけて資料を用意しなくても目的を達成できる場合が思いのほか、存在するからです。

該当する例として、よくあるのが会議で使用する資料です。それほど込み入った情報でなければ資料化せずに口答だけで済む場合もありますし、多少込み入った内容でもその場でホワイトボードに図を描きながら説明すれば十分に伝わるということもあります。口頭やホワイトボードでは情報を伝えるのが困難な場合や、既にある手元のデータを基に説明する場合に限って資料を作成するようにしてはいかがでしょうか。

2. その資料は既存のもので代替できないか

事務系の仕事では、多くの人が各自で様々な資料を作っています。そのため、多少切り口が違っていても似たような資料を別の人が作っているということが往々にしてあります。真面目な方ほど「自分で資料を用意しないと楽をしていると思われないだろうか」と不安になるかもしれませんが、たとえば5時間かけて資料を作っても、楽をして5分で資料を作っても、同じように目的を達成できるのであれば後者の方がよいに決まっています。

後者を選ぶことは自分個人にとってだけではなく所属部署、ひいては会社全体にとっての効率化に繋がります。そこで、達成したい目的のために資料が必要だった場合でも、すぐに資料作成に取り掛かるのではなく、他の人が作成した資料で使えそうなものがないかを上司や同僚などに聞いてみるとよいでしょう。

さらによいのは、各自が作成した資料は個人フォルダではなく共有フォルダなどに保存して「アクセス権限のある人に限っては自由に使ってよい」というルールで運用できると、毎度必要な資料を持っているかどうかを尋ねる手間が減るのでお勧めです。

3. 必要最低限の内容に絞る

「やはり自分で一から資料を作成するしかない」と判断した場合であっても、まだやるべきことがあります。それは「資料に盛り込む情報を必要最低限に絞り込むこと」です。資料を作成していると、どうしても「あ、この情報も入れた方が親切かな」「多分要らないけれど念のため、あの情報も入れておいた方が無難かな」といって、あれこれ詰め込んでしまうということがあります。

しかし、資料に必要以上の情報が詰め込まれてしまうと作成する側の負荷が増えるのは当然ですが、さらに情報量に比例して、それを見る側の負荷まで増えてしまいます。特に、資料の冒頭部分などで本筋とは全く関係のない挨拶文が並んでいたり、丁寧過ぎて回りくどい言い回しなどをしていたりするような資料では、言いたいことが伝わりにくくなってしまい、一体何のための資料なのかが分からなくなってしまいます。

また、色とりどりの資料や、なくても伝わるアニメーションの多用などにも留意が必要です。そのような装飾は一旦、全てゼロにしてシンプルな資料を作成し、それではどうしても伝わらない部分に限って色などの要素を最低限、つけ足すのがよいでしょう。そうすることで、より分かりやすい資料ができるというのに加えて、資料作成の負荷も減る効果が見込めます。

以上、資料の作成にかかる負荷の減らし方を「作成する資料の厳選」「他資料の使いまわし」「資料の内容の絞り込み」という3つの観点から説明しました。ぜひ、ご自身の職場の資料についても見直してみてください。