本連載の第154回では「仕事上のミスとの向き合い方を考えよう」と題し、ミスが発生した場合にどのように対処すべきかについてお伝えしました。今回は会議の議事録を会議後に時間をかけて完成させて共有するのをやめませんか、という話をします。

会議であれこれ議論したことをメモにすら残さないのは論外として、多くの職場では誰かが議事録を取り、後から参加者に送って内容を確認してもらい、必要に応じて関係者に送付しているのではないでしょうか。

このような仕事の仕方は「会議とはかくあるべし」と半ば一般常識にすらなっているような気もしますが、私はこのような進め方はやめた方がよいと考えます。その理由を「作業負荷」「意思決定の伝達スピード」「共通認識」の3つの観点から説明します。

1. 作業負荷が大きい

会議中に議事録を取ること自体は良いとして、後から送付となると「重要なポイントが抜けていないか」「誤字脱字はないか」「参加者や発言者、場所・日時などの記載に誤りはないか」などを確認する手間があります。自分が書いた文章のミスには自分では気が付きにくいため、細心の注意を払うことになり相応の手間を要します。

また、特に重要な会議の議事録であれば、他の参加者に議事録の確認を依頼することがあります。その場合には、依頼を受ける側も議事録を読んで内容を確認し、「これは私の発言と意図が少し違うから直してくれ」とか「この発言は問題になるから削除してくれ」などと要望を送ってくることがあります。複数人から要望が来てしまうと修正作業と議事録のやり取りの手間が膨らんでしまいます。もちろん確認をする側にも相応の負荷がかかることがかかることになります。

2. 意思決定の伝達スピードが遅い

会議が終わって、作成者自身によるチェックを終えてから他の参加者に内容確認を依頼する場合でも依頼を受けた全員が、すぐに対応してくれるとは限りません。作成者から議事録の確認を依頼されても、多忙であったり他の優先度の高い仕事をしていたりすれば、議事録の確認を後回しにされても仕方ありません。

そして、会議から時間が経てば経つほど記憶が曖昧になり、確認の精度も落ちてしまいます。状況次第では議事録の完成まで会議開催から数日間かかってしまうこともあるでしょう。そうすると、議事録を通じた決定事項の関係者への周知がその分だけ遅れてしまうことになります。

3. タイムリーに共通認識を得られにくい

会議の場で議論が大いに盛り上がって、それが議事録に過不足なく記録されたとしても、どうしても議事録の記載が「意図していたことと若干ニュアンスが違う」と感じることはあります。会議中、参加者間で話していることが若干食い違っていたり、認識に相違があったりして多少違和感を覚えても、そのままスルーしてしまうということは多々あります。

後から議事録を見返して文章化された情報を確認することで初めて参加者間で認識に相違があることに気が付くことがあります。しかし、既に会議が終わっており、認識の相違が重大なものなら再度参加者を招集して会議をやり直したり、個別に連絡を取って説明したりしなければならないかもしれません。

このケースにおいて、議事録は「認識の相違を発見するのに役に立った」とみなすことはできますが、せっかくなら会議中にタイムリーに気が付いた方が素早く対応できるので、その方が良いに決まっています。

以上3つの観点を踏まえると、議事録を作成し、会議後に参加者の確認を取って関係者に送付するというのは仕事の進め方としてはあまり効率的とは言えないことがおわかりいただけたのではないでしょうか。

それでは一体どうしたらよいのでしょうか。「作業負荷」「意思決定の伝達スピード」「共通認識」というこれら3つの観点を考慮すると、「会議中に議事録を記述しているところをリアルタイムで参加者に見せる」というやり方がお勧めです。

具体的には、プロジェクターや大画面モニター、Web会議の画面共有ツールなどを駆使して、自分のパソコンの画面をシェアしながら発言内容を記録していき、議事録を作っていきます。そうすると誰が何を話したかがその場で可視化・蓄積されるので、口頭での議論だけの場合よりもはるかに共通認識を醸成し易くなります。また、議論を遡る必要があるときには議事録で少し前に戻れば確認ができるのもメリットです。

会議の最後に結論や意思決定、参加者によるアクションなどを確認してその場で議事録に書き込めば、議事録は完成です。参加者は既に議事録を見ているので、後から確認して「ここが違う」とか「抜けているところがある」などと指摘する必要もありません。会議の中で議事録の作成完了を見届けているから、後はそれを受け取って終わりです。

議事録の作成者も会議終了直後に「今の会議の議事録を送ります」と一言添えて参加者に送れば、冗長なメール本文を考える手間もなくなりますし、何より情報共有のスピードが段違いに上がります。ぜひ一度、ご自身の職場でも試していただければと思います。