本連載の第140回では「定時までの間に成果を上げる働き方とは」と題し、そのための3つの要素をお伝えしました。今回は成果の面で他の人と差別化するための働き方についてお話します。
「仕事ができる人」というと、圧倒的なスピードで仕事をこなす人、大量の仕事をこなす人、或いは効率良く成果を上げる人などが挙げられますが、ここでは成果で差別化する人について考えてみましょう。
「成果で差別化する」とはどういうことでしょうか。また、それがどのような意味を持つのでしょうか。この疑問に答えるために、「希少性」と「模倣困難性」という2つのキーワードをベースに考察します。
1. 希少性の高い成果を上げる
「希少性の高い状態」とは、求められる量と比べて利用可能な量が少ない状態のことです。例えば鉱物のダイヤモンドや金などは人類が利用できる量が少なく、希少性が高いといえます。そして、それゆえ高価なものとして扱われています。
希少性の高い成果を上げるということは、ダイヤモンドや金のような価値を生む成果を上げるということに他なりません。
では、よりどのような働き方をすれば希少性の高い成果を上げられるのでしょうか。それにはまず、社内または部署内における自身のポジショニングを考える必要があります。そこで他の人とは全く異なるポジショニングを取ることで希少性の高い成果を上げるのです。
たとえば、かの有名なドラゴンクエストⅢというゲームでは、勇者が3人の仲間を募ってパーティーを編成することが出来ました。仲間にできる人は戦士や僧侶、魔法使いなど様々な職業があるので、通常は攻守のバランスを考えて、どの職業の人を仲間にするかを考えます。仮に戦士3人のパーティーを組んでしまうと物理攻撃が効かない敵に遭遇した際には歯が立たなくなってしまいますし、仲間が傷ついたときに回復呪文が使えずに全滅するリスクが上がってしまいます。
しかし、そこに魔法使いや僧侶が加わればどうでしょうか。物理攻撃一辺倒だったパーティーが攻撃魔法や回復魔法を使えるようになり、一気にゲームが楽になるでしょう。
希少性の高い成果を上げるには、戦士ばかりの職場で魔法使いや僧侶のような仕事が何かを探せばよいのです。同僚の多くがエクセルでの集計や分析に日々追われているのであれば、同じような仕事をするのではなく一歩進んでその作業を自動化したり、分析結果を元に部署としての新しい戦略を考えるといったことに注力するとよいかもしれません。
周囲の人がやっていない仕事は何か、その中でも価値の高い仕事は何か、それを突き止めて注力することで希少性の高い成果を上げましょう。
2. 模倣困難性が高い成果を上げる
続いて「模倣困難性が高い成果」について考えてみます。これは読んで字のごとく「他の人が真似しにくい、真似しようとしても難しい成果」です。しかしこの手の成果を上げようというのは一種の矛盾をはらんでいます。というのも、「他の人が真似するのが難しいことは、自分にとっても難しいのではないか」という論理が働くからです。
でも安心してください。この矛盾を一掃するための方法を2つお伝えします。ここでのキーワードは「強み」と「継続」です。
まずは「強み」です。たとえ同じ職場にいても、人にはそれぞれ固有の強みがあるものです。緻密さや正確性が問われる仕事が得意な人がいれば、大胆な意思決定が得意な人もいます。人との駆け引きが上手で交渉で手腕を発揮できる人がいれば、人の悩みを聞いて心を楽にするのに長けている人もいます。
このような、自分が持つ固有の強みを活かすことによって模倣困難性が高い成果を上げることができます。しかしここで一つ落とし穴があります。それは「自分の強みは見えにくい」ということです。その背後には、「自分が簡単にできることは人も同じように簡単にできるだろう」という思い込みがあります。この思い込みに自分で気が付くのは容易ではありません。
そこで、職場の同僚や上司、後輩などに「私の強みは何だと思いますか」と潔く聞いてみるとよいでしょう。場合によっては思いもよらなかった強みが発覚するかもしれません。ぜひ、その強みを発揮して模倣困難な成果を上げましょう。
そしてもう一つ、模倣困難性を上げるための方法が「継続」です。これは他の人にもできるようなことでも、ひたすら続けることによってレベルを上げて、他の誰もが追随できない成果を上げられるようにすることです。
たとえば大人数の前でのプレゼンの場合で考えてみましょう。仮にプレゼンの達人であっても、最初から上手く行ったという人は殆どいないのではないでしょうか。その多くは何十回、何百回と実践してようやく今のような華麗なプレゼンができるようになったのではないでしょうか。そうだとすると、この達人のようなプレゼンを行うには何百回ものプレゼンを実践しなければならないということになります。これが継続による模倣困難性に繋がります。
長年の継続によって得られるスキルや知識というのは、他の人には簡単には真似できません。それを逆手にとって、他の人が簡単に追随できない成果を上げるために自分が今から何を継続すべきか、ぜひ考えてみてください。
以上、「希少性」と「模倣困難性」という2つのキーワードをベースに成果で差別化するための働き方を考察しました。本稿の内容を参考に、ご自身に合った方法を探って頂ければ幸いです。