本連載の第138回では「コスパの高い働き方とは」と題し、コスパの高い働き方とはどのようなものか、そのイメージを4つお伝えしました。そこで、今回はその内の1つ目、「単位時間あたりの労力は少ないが求められる成果を出している」働き方についてお話をします。

周囲はあくせく働いている中で、ゆったりとしたペースで仕事をしながらも成果をきちんと出している人はいませんか。自分はいつもバタバタしている一方、まるでその人の周りだけ時間がゆっくりと流れているように見えるほどなのに成果を出している。まるで魔法でも使っているのではないかとすら思えるような人です。

そのような人は一体、何が違うのでしょうか。「労力を減らしながらも成果を上げる」という都合の良いことがなぜ可能なのか、一緒に考えてみましょう。

その謎を解き明かす上ためのキーワードは「てこの原理」「ドミノ倒し」の2つです。

1. てこの原理を仕事に活かす

あなたが抱えている仕事の中で最も優先度の高いものは何でしょうか。ではその最優先の仕事を成功させる上で必ず押さえておくべきポイントは何でしょうか。これら2つの問いに明快な回答ができるのであれば、てこの原理を活かすことができます。

仮に自分が一か月間に抱えている仕事が100個あったとして、それら全ての優先度が全く同じということは、ホワイトカラーの職場では珍しいのではないでしょうか。100個全ての仕事を迅速に完璧にこなせればよいかもしれませんが、それではあまりにも効率が悪くなってしまい、ゆったり仕事するどころではなくなってしまいます。

そこで、多くの仕事を片っ端から闇雲に片付けようとするのではなく、まずは優先度の高い仕事を見定めて、そこにフォーカスして確実に終えることが重要です。それによって万が一、優先度の低い仕事が終わらなかったり、質がイマイチであったりしても、そもそも優先度が低いものなのでダメージを最小限に抑えられることができます。

その上で、優先度の高い仕事を成功させるために「ここだけは必ず押さえておかなければならない」というポイントを見定めます。上司から会議用の資料作成を指示されたとした際に、以前開催された会議と同じような目次をベースに資料の中身を作り始める人はよくいます。これは「それっぽい見た目の資料を作ること」が目的になっているように思えます。そもそも会議によって目的が異なるはずなので、このやり方では本来不要なはずのページまで作成してしまう可能性が高いでしょう。それではどうしたらよいのでしょうか。

会議の目的と、その目的を達成するために最低限何が必要なのかという2点を考えて、そこに集中して仕事をすればよいのです。そこを突き詰めた結果、資料は1ページで十分であったり、資料そのものが不要だったりといったことが判明するのは珍しくありません。

作業そのものではなく、仕事の目的を見据えて「最小の力で最大の成果を生む」ためのてこがどこにあるのかを突き詰める。これが第一のポイントです。

2. ドミノ倒しを仕事に活かす

多くの仕事を抱えている場合、それらの仕事の内容が相互に全く無関係ということはあまりないかと思います。例えば、Aという仕事のアウトプットがB、C、Dのインプットになったり、Eという仕事を工夫することでF、G、Hが不要になったりすることがあります。このような場合にはAやEの仕事に優先的に取り組むことで残りの仕事の負荷を下げたり、或いは行う必要すらなくしてしまったりすることができます。まさにドミノ倒しの発想です。

たとえばあなたが経理部にいたとして、他の部署からの経費精算や出張手当などの問い合わせ対応に忙殺されていたとします。毎回、同じような内容の問い合わせを受けてその度に説明していたとするならば、問い合わせの多い内容のQ&Aを作成して経費精算ツール上に表示させたり、イントラネットのポータルサイトなどから見られるようにしたりするといった対応をしてはいかがでしょうか。そこで確認してもらうことで問い合わせそのものを減らすことができるでしょう。

次に社内で多くのプロジェクトが走っている状況で考えてみます。本来、プロジェクトは何らかの課題を解決するために行われますが、往々にして課題同士は論理的な繋がりを持っているものです。そこで、課題間の構造を解き明かしていくと、根本的には少数の課題に突き当たることがあります。それが分かれば、その大元の課題に集中して対応するプロジェクトを組むことで少ない労力で多くの課題を解決できます。

このように仕事や、その背景にある課題の構造を解き明かしていくことで大元の起点になるポイントを特定し、そこに労力を集中させることでその他多くの仕事の負荷を下げたり不要にしたりする、いわばドミノ倒しのようなことが可能なのです。

てこの原理とドミノ倒しの発想を応用して、ぜひご自身の仕事を楽にしていただけたら幸いです。