本連載の第135回では「あなたの強みは何ですか」と題し、「自分には強みなんてない」という人がよく話す根拠を挙げて、その妥当性を検証しました。今回は前回とは逆の「弱み」に着目し、弱みと上手に付き合う方法をお話します。

「あなたは〇〇が弱いので、頑張って克服しましょう」

上司や人事担当者との面談などで、このように言われたことがあるという方はいるのではないでしょうか。「プレゼンが苦手」「交渉が苦手」「リーダーシップが足りない」など人によって苦手なことは様々でしょう。そして、職種によっては自分の苦手なことが足を引っ張って成果を上げられないという場合もあるでしょう。

しかし、弱みを克服するというのはなかなか骨の折れることです。まして、自分の弱いところを鍛えて逆に強みにしようとするのは極めてハードルが高いです。単に経験値が低いために苦手だと自分で思い込んでいる場合は別として、本質的に自分が苦手とすることを鍛えて強みにまで昇華させるのは至難の業です。

それではどうすればよいのでしょうか。ここでは経験や練習、学習などを通して「弱みを鍛えて克服する」以外の方法を2つ紹介します。

1. 「弱み」を細分化して、仕組みでカバーする

これは、自分の抱える「弱み」を構成する要素を細かく分けた上で、仕組みでカバーできる部分を探すということです。例として、先ほど挙げた「プレゼンが苦手」という弱みについて考えてみましょう。

一口に「プレゼンが苦手」といっても、その原因は人によって異なると考えられます。「本番になると、それまで話そうとしていたことを忘れてしまう」という人もいれば、「途中で質問されるとテンパってしまう」という人もいるでしょう。また、それ以前に「人前に出ると過度に緊張してしまう」という場合もあります。

最初の「本番になると話そうとしていたことを忘れてしまう」という場合には、予め話すことのキーワードを書いた紙を手に持っておいて、もしプレゼン中に忘れてしまった時にはその紙を見て思い出すようにするのがよいでしょう。ただし、話すことを全て一字一句書き留めておくのはお勧めしません。なぜなら、目線を紙に落としたまま話してしまい、聴衆の反応を見られなくなってしまうからです。

次に「途中で質問されるとテンパってしまう」という場合です。もちろん場数を踏めば克服できる可能性は高いですが、そもそも最初に「プレゼンの最後に質疑応答の時間を設けます。プレゼンの途中で質問がある方はメモしておいて、質疑応答の時間にお願いします」と説明しておくのがよいでしょう。

なお、そもそも「質問に対してその場で臨機応変に回答するのが苦手」という場合は、「正確な回答をしたいので、その場でお答えできない質問には追って、メールで回答します」と対応すればよいでしょう。

それでは、「人前に出ると緊張してしまう」という場合にはどうでしょうか。この場合にはさらに分解して、「オンラインでも緊張するか」「リアルタイムでなくても緊張するか」という問いについて考えてみましょう。もし、対面では緊張するけれどオンラインでは大丈夫ということであればプレゼンをオンラインで開催すればよいですし、リアルタイムでなければ大丈夫なら自分のプレゼンを録画して配信すればよいでしょう。

その一方、「オンラインだろうが録画だろうが、プレゼンはどうやっても緊張する」という場合にはどうしたらよいでしょうか。それを次の項目を話します。

2. 「弱み」を他者に助けてもらう

自分が苦手なことだからといって、誰もが苦手というわけではありません。得意不得意は人によって違うのだから、いっそのこと自分の苦手なことは人に任せて各自が自分の得意なことに専念した方が組織全体としては効率的です。

そうはいっても、苦手なことを人に丸ごと押し付けるのは気が引けるという人も多いでしょう。そのような場合にも「弱み」を分解して考えることが役に立ちます。

仮に自分の苦手なことが「資料作成」だったとします。これもまた細分化してみると「資料の構成を考えるのが苦手」とか「資料のデザインが苦手」、「資料作成前のデータ集計・分析が苦手」などに分けられる場合があります。

このように細分化した上で苦手なところを人に任せたり、アドバイスをもらったりすればよいのです。仮に「デザインが苦手」なら、その部分だけを得意な人に任せて他を自分で担当するといった役割分担で乗り切れるかもしれません。「資料作成前のデータ集計・分析」も、任せるのがさすがに難しければアドバイスをもらいながら進めることでカバーすればよいでしょう。

自分が弱みと感じていることを細分化・具体化し、そのレベルで自分に得意なことは何かを探して行い、他は任せたりアドバイスをもらいながら実践したりする。もちろん、他の人が苦手なことは率先して手伝ってあげることも寛容です。

以上見てきたように、自分が「弱み」だと思っていることでも細分化・具体化して考えてみれば、真の弱みはごく一部で、他は苦手ではないということが多々あります。それを基に自分にできる範囲を見つけて行いつつ、それでも残ってしまう苦手なことは仕組み化したり他の人の力を借りたりして乗り切っていきましょう。