本連載の第127回では「クリティカル・シンキングを鍛えるのに適した環境とは」と題し、クリティカル・シンキング(批判的思考)を実践の中で鍛えるための環境がどういうものかをお伝えしました。今回はクリティカル・シンキングの考え方を基にした「問い」を用いた会議のスリム化についてお話します。

「あの人、話しかけようとしてもなかなか自席にいないのだけど、どこにいるのかな」
「朝から晩まで会議に出ずっぱりで忙しいらしいよ」

この会話のようなやり取りがオフィスで交わされることは多々あるかと思います。次から次へと会議に出ていると、たくさん仕事をしているように感じるかもしれません。

でも、本当に会議に出ることが、そのまま仕事をしているということになるのでしょうか。

会議を開催して大人数であれやこれやと色々話した人に、「その会議の成果は何ですか」と尋ねると回答に詰まってしまうということは珍しくありません。

よく考えてみると、会議というのはそれ自体が目的にはなり得ません。会議はあくまでも何らかの目的を達成するための手段のはずです。それにもかかわらず、「とりあえず集まって話そうか」と言って明確な目的もなく開催している会議が少なくないようです。それでは成果の出しようもありません。

以上を踏まえて、部署で行われている会議のスリム化を検討してはいかがでしょうか。そのための準備として、まずは部署で行われている会議を全てリストアップしましょう。その上で、各々の会議について次の3つの問いについて考えてみてください。

Q1. その会議がなくなって困ることは何か

この問いを投げかけられて「困ることは何もない」と即答できるなら迷わず会議を廃止すればよいですが、恐らく「困るかと言われれば困るけれど、それが何かと聞かれると……」と言い淀んでしまう場合があるのではないでしょうか。

この問いには2つの意図があります。1つは「不要な会議を炙り出すこと」で、もう1つは「会議という形式に拘らなくてよいものを炙り出すこと」です。

古くからの慣習として、惰性で集まって「では、今日は何を話そうか」と始まる会議であれば「不要な会議」と認定してなくしてしまえばよいでしょう。

そうではなく、たとえば会議の目的が「各部署からの報告」で、その実態は各部署の代表者が報告資料を延々と読み上げるだけであれば、もはや大勢が一堂に会して会議を開く意味はないでしょう。メールなどで報告資料を共有して読んでもらえば済むはずです。

その上で何か不明なことや気が付いたことがあれば当事者間だけでやり取りすればよいですし、全体で集まって議論しないと埒が明かないような問題であればそこで初めて会議を開けばよいはずです。

Q2. 時間がなくて会議時間を半分にせざるを得なければどうするか

この問いに対して「時間が半分になっても特に困らない」という回答をするのであれば、これまでがただダラダラと進行していただけなのですぐに時間を短縮すればよいでしょう。

この問いには3つの意図があって、1つ目は「議題が明確に決まっているかを確認する」、2つ目は「重要でない議題が混ざっていないかを確認する」、そして3つ目は「論点が明確になっているかを確認する」ということです。

最初の「議題が明確に決まっているかを確認する」についてですが、会議時間を半分にしなければなくなったと想定すると、自ずと「そもそも何の議題を削る必要があるか」と自問自答することになるはずです。そうすると、実は議題が特に決まっておらず、なんとなく話が展開していくだけであれば、それが浮き彫りになるはずです。その場合にはまず議題を明確に決めることから始めましょう。議題が明確になるだけでも「次は何を話すべきか」と迷う時間がなくなるので会議の時間を減らせるはずです。

次の「重要でない議題が混ざっていないかを確認する」は既に議題が明確になっていることが前提です。会議が昔から続いていたり、色々な部署が参加するものだったりすると会議の都度、「これも議題にしてほしい」という要望を受けて膨れ上がっている恐れがあります。かつては重要だった議題でも環境や状況の変化とともに重要度が低下しているものが含まれているかもしれません。それを見極めて、不要な議題はばっさりと落としてしまいましょう。

そして3つ目の「論点が明確になっているかを確認する」ですが、これは少し難易度が高いものです。議題が明確になっていて、それが必要最小限に抑えられていたとしても、各々の議題に「どれだけ時間がかかるか全く読めない」という場合があります。その原因としてよくあるのが論点の不明瞭さです。その議題について話し合う際、必ず押さえておくべき論点は何かということを明確にして会議参加者と共有することで、議論がかみ合わなくなったり過度に発散することが減るので、会議時間を減らすことができます。

Q3. スペースの制約上、会議参加者を半分にせざるを得なければ誰を残すか

よくあるケースとして、会議参加者を招待する際に「一応、あの人もいれておこう」と言って参加者を過剰に増やしてしまうケースがあります。仮に常連メンバーとして呼んだつもりでなくても本人が次回から参加して、いつのまにか当たり前になって誰も違和感を覚えなくなるということもあります。

しかし、本来会議は目的達成のために必要最小限の人数で行うべきでしょう。それを超える人数で開催するというのは過剰な人件費を投入することになる上に、人数が増えることで議論の効率が下がってしまうことも懸念されます。

そのため、この問いによって「半分にするなら誰を残すか」と考えて、試しに半分の人数で会議を開催してみましょう。もしそれで問題なく目的を達成できるなら半分の人数で固定すればよいですし、必要な人が足りないことが分かったら、その人をピンポイントで再度招集すればよいでしょう。過剰な人数での会議は過剰なコストと議論の効率低下に繋がるということを念頭に取り組んでみてください。

以上、会議をスリム化するための3つの問いについてお話しました。これらの問いを自問自答し、日々開かれている会議について見直していただければ幸いです。