本連載の第103回では「ロジカルシンキングは効果的なコミュニケーションに欠かせない」と題し、ロジカルシンキングがなぜコミュニケーションに必要なのか、というお話をしました。今回はロジカルシンキングを語る上で欠かせないフレームワークについてお伝えします。
フレームワークについてよく知らなくても、一度は耳にしたことがあるという方は少なくないでしょう。英語の"framework"という単語は「枠組み」という意味を持ち、ロジカルシンキングを実践する際には「思考や分析の枠組み」という意味合いで使います。
何だか難しそうだと思われた方もいるでしょうが、誰でも日常的にフレームワークを使っています。「正社員/契約社員/派遣社員」、「新卒入社/中途入社」といった社員の分類、「新品/中古」、「原材料/仕掛品/半製品/製品」といったモノの分類などはフレームワークとして捉えることができます。
そして、このフレームワークには「軸」と「切り口」があり、ここで挙げた4つの例は全て「切り口」に該当します。
- 軸: 契約形態 切り口: 正社員/契約社員/派遣社員
- 軸: 入社経路 切り口: 新卒入社/中途入社
- 軸: 使用歴 切り口: 新品/中古
- 軸: 製造過程 切り口: 原材料/仕掛品/半製品/製品
このように、フレームワークでは定義した軸に沿って切り口が設定されています。それとは反対に、軸と切り口が関連していないものはフレームワークと呼ぶに値しません。
それではなぜ、このフレームワークがロジカルシンキングに欠かせないのでしょうか。ロジカルシンキングとは「一貫していて筋が通っている思考」ですが、この思考をする際には考える要素に漏れがあってはなりません。そして、その漏れを防ぐために使えるのがフレームワークなのです。
例えば、会社の経営戦略を考える際に「自社の得意領域」だけに焦点を当てて検討を進めたとしたらどうなるでしょうか。もし、得意領域で売上を増やすだけの余地がその市場に残されていなかったり、その市場が今後縮小する傾向にあったりすれば、十分な売上や利益を確保することは難しいと判断して、代替案を考えるのが得策でしょう。
また、市場が十分に大きかったり、拡大傾向にあったとしても競合他社が既に攻勢に出ていたり、他業種からの新規参入が相次いでいたりするのであれば、やはり自社がその領域で勝てる見込みは薄いと考え、別の手を考えるのが妥当でしょう。
この例では「自社」のことだけを見て経営戦略を立案するのではなく「市場」と「競合他社」についても考慮に入れることが不可欠だということがお分かりいただけたかと思いますが、こうした漏れをなくすために世の中には3Cというフレームワークが存在します。3CとはCustomer(市場/顧客)、Competitor(競合他社)、Company(自社)の頭文字を取ったもので、経営戦略を考える際によく使うフレームワークの1つです。
なお、3C以外にもビジネスで使えるフレーワークは数多く世に出回っています。「製品」と「市場」の2軸で経営戦略を考えるのに使える「アンゾフのマトリクス」、新製品の導入から衰退までのプロセスを考える「製品ライフサイクル」、継続的な改善のプロセスを示す「PDCA(Plan・Do・Check・Action)」などです。
そして、図を見てわかるとおり一口にフレームワークといっても様々な形をしています。3Cは要素間のつながりを示す空間軸型、アンゾフのマトリクスは2軸のマトリクス型、製品ライフサイクルは時系列の流れを示す時間軸型、PDCAは繰り返しを示す循環型です。フレームワークの特性に応じて直感的に分かるように工夫をされた結果、このような形をしていると考えられます。
なお、インターネット上で検索すればこうしたフレームワークは数多く出てきますが、その多くは「切り口」のみ提示されているものの、肝心の「軸」が示されていないことが多々あります。そのため、フレームワークを調べて使う際には、そのフレームワークに対する理解を深めるために「軸が何であるか」、「なぜこの形をしているのか」を自分の頭で考えることをお勧めします。
いずれにせよ、世の中にどのようなフレームワークがあるかを知らなければ使うことはできません。まずはご自身の業界や仕事の内容、抱えている課題などに関して、どのようなフレームワークがあるかを調べるところから始めてみてはいかがでしょうか。