ノートはその構造から、時系列を再現しやすい記憶媒体です。ページの順番に記録すればそれが時系列になります。
一方で見開きごとにテーマを決めて記入する項目を変えることもできます。この場合は、見開きの面は時系列とは無関係です。またそれを明示するためにノンブルを入れるのが推奨されます。これについては機会を改めて述べましょう。
手帳はノート+時間軸OSというスタイルでできている
手帳はノートに"時間軸OS"をインストールしたものだと考えられます。
普通のノートでも日付を記入してしまえば手帳的に使えます。手書きするのは労力を考えると非現実的です。ただし、「カスタム ダイアリー ステッカーズ」(グリーティングライフ)のような製品をノートと組み合わせれば十分に手帳として利用できるといえば理解してもらえるでしょうか。
そして世の中のあまたの手帳は基本的にはノート+時間軸OSというスタイル、すなわち、予定記入欄+ノートというスタイルでできています。
恐らく現在市販されている多くの手帳は月間ブロックページが含まれているはずです(※1)。そして手帳は煎じ詰めれば月間ブロック+ノートページまたはそのアレンジという構成でできているとみなすことができます。更にここに逆算手帳のような特定の目的をインストールし、、ガントチャートを組合わせたり、次回以降触れる予定の巫女系手帳における見えないリソースの影響を時系列に併せて記したりしてなりたっていると考えられます。
今回は上記のような仮説を「ES ダイアリー」(エイ出版社)各種を実例としてみてみましょう。
(※1 この部分がガントチャートや、また横罫のようなスタイルの手帳もある)
ES ダイアリーの構造とは
まず基本となるのは月間ブロック+ノートページのタイプです。製品名「見開き1カ月+ノート」はその名の通り、月間ブロックの予定記入欄のあとはひたすら方眼のノートページが連続しています。仕事を1カ月単位で見ることが多く、またメモページが多数必要な場合はこのタイプが向いています。そしてこのノートページをよく見ると、下端に日付記入欄があります。
つまりここに日付を入れ、時間を書き入れれば、より詳細な予定欄を持った手帳ができます。ES ダイアリーでは以下のようなアレンジになっています。ここに1ページに1日の予定記入欄をデザインすると、1日1日1ページ手帳ができます。それが、「月間ブロック+1日1ページ」(以下1日1ページと記)です。
発生の順番からいえば、この1日1ページタイプは、ほぼ日手帳(株式会社ほぼ日)が元祖です。そしてESダイアリーの場合は、月間ブロック+ノートという形で1日ページの部分から時間軸OSを抜いたものと考えることができます。その名残が日付記入欄というわけです。
ノートの部分を週間記入欄にすると、オーソドックスな月間+週間タイプの手帳になります。そして週間ページも日付が横方向にならんでいるだけで、時間軸がないものがあります。ES ダイアリーでいえば「月間ブロック+ウィークリーノート」がそれです。同じES ダイアリーの「月間ブロック+バーチカル」と比較すればその違いは一目瞭然です。
そもそも見開き1週間の予定欄のレイアウトはページをどの方向に8分割し(各曜日+メモスペースなど)、どこにメモやタスクリストのスペースをもうけるか(あるいはもうけないか)に尽きるわけですが、この「ウィークリーノート」のタイプでは、バーチカルの時間軸の部分を方眼にすることでユーザーの自由度を高めているといえます。
以上は綴じ手帳の場合です。そして手帳の種類は記入用紙のまとまり方から見ると、すべてが1冊の冊子にまとまっている綴じ手帳以外に、システム手帳(ファイロファックスがその代表。以前紹介した「PLOTTER」(デザインフィル)、「デュアルリングバインダー」(レイメイ藤井)などもこの仲間)や、モジュール型手帳(1つのカバーの内側に、複数の記入用紙や冊子がセットしてあるもの。「『超』整理手帳)(KADOKAWA)、「ジブン手帳」(コクヨ)など)にわかれます。
つまり、手帳はハードウェア面から見ればこれらの構造に分解することができ、分類できるわけです。あとはサイズやカバーのデザイン、それに予定記入欄に、六曜や月齢などの各種付加情報があるかどうかでしょう。また巻末の便覧は、少なくなる傾向にありますが、逆にその手帳のアイデンティティ表明の場としての面も出てきているような気がします。例えばESダイアリーの場合は、発行元が出版社であるからか級数表などが掲載されています。
このように、手帳を構成要素に分解して考えると、手帳選びの幅は広がるはずです。いっけん全く違って見える製品もその構造が同じだったりします。一例を挙げれば、上述の月間+ノートと「ロルバーン」(デルフォニックス)は、後者に日付記入欄がないだけで同じ構造を持っています。また、サイズが大きくなりますが、「キャンパスダイアリーノート」(コクヨ)も同じ基本構造を持ったものだといえます。「プロフェッショナルダイアリー PRD-3」(デザインフィル)も月間ページのすぐあとにノートページが見開きであり、これとは別に巻末にもノートがあるのでこのパターンのバリエーションだといえます。
このように手帳を構成している要素をよく見ると、選択の自由度が広がるはずです。また、特定の目的をインストールしてある手帳も、その考え方だけを身につけて他の手帳でやっている人もいます。「あの手帳はコンセプトはいいけれど、デザインがちょっと」という場合は、使いたい手帳の構成要素を洗い出してみましょう。
執筆者プロフィール : 舘神龍彦
手帳評論家、ふせん大王。最新刊は『iPhone手帳術』(エイ出版社)。主な著書に『ふせんの技100』(エイ出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『意外と誰も教えてくれなかった手帳の基本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『手帳カスタマイズ術』(ダイヤモンド社)など。また「マツコの知らない世界」(TBS)、「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)などテレビ出演多数。手帳の種類を問わずにユーザーが集まって活用方法をシェアするリアルイベント「手帳オフ」を2007年から開催するなど、トレンドセッターでもある。手帳活用の基本をまとめた歌「手帳音頭」を作詞作曲、YouTubeで発表するなど意外と幅広い活動をしている。
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